18 / 29
17
しおりを挟む
「あのメリダという侍女には酷く嫌われているのだが・・・果たして、私の話を素直に聞いてくれるかどうか。それに、バートンは、メリダに『力』を自覚させれば大丈夫だとも言っていたが・・・そう上手くいくとは思えない」
『エレーヌという将を射とめるためには、まずはメリダの心を掴むべきだ』そうバートンに言いくるめられたカノンは、しぶしぶ彼の提案に乗ることにしたものの、実際思惑通りに事が運ぶのか不安しかなかった。
◇
「メリダ・・・と言ったな」
屋敷の廊下を歩くメリダをカノンは呼び止めた。
振り返ったメリダは、敵意を隠しもせず無愛想に言った。
「あなた様が、エレーヌ様の侍女の私にどのような用でしょうか?」
「少しの間だけでいい、私の話を聞いてくれないだろうか・・・」
いつもの若い令嬢らしい口調とは異なり、低く落ち着いた調子で話すカノンに、メリダは怪訝そうな顔で返す。
「何のつもりですか?私には何も媚びる必要などないから、猫を被るのはやめたのですか?」
「どう取ってくれても構わない。だが、どうか・・・頼む、エレーヌにも関わることだ」
「信用するわけではありませんが・・・お嬢様の話・・・ということでしたら聞かない訳にはいきませんね」
カノンは警戒するメリダを自室へと招き入れた。
◇
「お前には、誤解されているようだが・・・私はエレーヌに決して害をもたらそうとしている訳ではないのだと解ってほしい。その為には、まず私の本当の姿を明かそう・・・」
カノンはそう言うと、身体に掛けていた魔術を解き、小柄な令嬢からすらりとした長躯の美男へと瞬く間に姿を変えた。
それを見たメリダは一瞬言葉を失ったが、すぐに気丈に言葉を繋いだ。
「・・・以前から普通の娘ではないとは思っていましたが・・・まさか化生の者だったとは・・・!旦那様や皆の様子がおかしかったのも・・・」
「それについては、後々詳しく釈明させてもらうとしてだな・・・メリダよ、お前の家に聖女の話は伝わっていないか?」
『エレーヌという将を射とめるためには、まずはメリダの心を掴むべきだ』そうバートンに言いくるめられたカノンは、しぶしぶ彼の提案に乗ることにしたものの、実際思惑通りに事が運ぶのか不安しかなかった。
◇
「メリダ・・・と言ったな」
屋敷の廊下を歩くメリダをカノンは呼び止めた。
振り返ったメリダは、敵意を隠しもせず無愛想に言った。
「あなた様が、エレーヌ様の侍女の私にどのような用でしょうか?」
「少しの間だけでいい、私の話を聞いてくれないだろうか・・・」
いつもの若い令嬢らしい口調とは異なり、低く落ち着いた調子で話すカノンに、メリダは怪訝そうな顔で返す。
「何のつもりですか?私には何も媚びる必要などないから、猫を被るのはやめたのですか?」
「どう取ってくれても構わない。だが、どうか・・・頼む、エレーヌにも関わることだ」
「信用するわけではありませんが・・・お嬢様の話・・・ということでしたら聞かない訳にはいきませんね」
カノンは警戒するメリダを自室へと招き入れた。
◇
「お前には、誤解されているようだが・・・私はエレーヌに決して害をもたらそうとしている訳ではないのだと解ってほしい。その為には、まず私の本当の姿を明かそう・・・」
カノンはそう言うと、身体に掛けていた魔術を解き、小柄な令嬢からすらりとした長躯の美男へと瞬く間に姿を変えた。
それを見たメリダは一瞬言葉を失ったが、すぐに気丈に言葉を繋いだ。
「・・・以前から普通の娘ではないとは思っていましたが・・・まさか化生の者だったとは・・・!旦那様や皆の様子がおかしかったのも・・・」
「それについては、後々詳しく釈明させてもらうとしてだな・・・メリダよ、お前の家に聖女の話は伝わっていないか?」
1
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
あなたが残した世界で
天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。
八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
嫌われ聖女は魔獣が跋扈する辺境伯領に押し付けられる
kae
恋愛
魔獣の森と国境の境目の辺境領地の領主、シリウス・レングナーの元に、ある日結婚を断ったはずの聖女サラが、隣の領からやってきた。
これまでの縁談で紹介されたのは、魔獣から国家を守る事でもらえる報奨金だけが目当ての女ばかりだった。
ましてや長年仲が悪いザカリアス伯爵が紹介する女なんて、スパイに決まっている。
しかし豪華な馬車でやってきたのだろうという予想を裏切り、聖女サラは魔物の跋扈する領地を、ただ一人で歩いてきた様子。
「チッ。お前のようなヤツは、嫌いだ。見ていてイライラする」
追い出そうとするシリウスに、サラは必死になって頭を下げる「私をレングナー伯爵様のところで、兵士として雇っていただけないでしょうか!?」
ザカリアス領に戻れないと言うサラを仕方なく雇って一月ほどしたある日、シリウスは休暇のはずのサラが、たった一人で、肩で息をしながら魔獣の浄化をしている姿を見てしまう。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】みそっかす転生王女の婚活
佐倉えび
恋愛
私は幼い頃の言動から変わり者と蔑まれ、他国からも自国からも結婚の申し込みのない、みそっかす王女と呼ばれている。旨味のない小国の第二王女であり、見目もイマイチな上にすでに十九歳という王女としては行き遅れ。残り物感が半端ない。自分のことながらペットショップで売れ残っている仔犬という名の成犬を見たときのような気分になる。
兄はそんな私を厄介払いとばかりに嫁がせようと、今日も婚活パーティーを主催する(適当に)
もう、この国での婚活なんて無理じゃないのかと思い始めたとき、私の目の前に現れたのは――
※小説家になろう様でも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢は反省しない!
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。
性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
聖女は寿命を削って王子を救ったのに、もう用なしと追い出されて幸せを掴む!
naturalsoft
恋愛
読者の方からの要望で、こんな小説が読みたいと言われて書きました。
サラッと読める短編小説です。
人々に癒しの奇跡を与える事のできる者を聖女と呼んだ。
しかし、聖女の力は諸刃の剣だった。
それは、自分の寿命を削って他者を癒す力だったのだ。
故に、聖女は力を使うのを拒み続けたが、国の王子が難病に掛かった事によって事態は急変するのだった。
【完結】偽物伯爵令嬢婚約保留中!
那月 結音
恋愛
現代ではない、日本でもない、どこかの世界のどこかの王国。
大学病院で看護師として働いていた主人公は、目が覚めると伯爵令嬢になりかわっていた。
贅沢三昧の我が儘三昧。癖の強いこのお嬢様は、なんと王太子の婚約者。
中身の異なる別人ゆえに、婚約解消を王太子に求めるも、彼から提案されたのは婚約の【保留】で——。
継続か。解消か。【保留】となった婚約の行方は……?
彼に真実を話せる日は、はたして訪れるのだろうか。
※2023年完結作品
※本編全9話+番外編全2話
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ゲームと現実の区別が出来ないヒドインがざまぁされるのはお約束である(仮)
白雪の雫
恋愛
「このエピソードが、あたしが妖魔の王達に溺愛される全ての始まりなのよね~」
ゲームの画面を目にしているピンク色の髪の少女が呟く。
少女の名前は篠原 真莉愛(16)
【ローズマリア~妖魔の王は月の下で愛を請う~】という乙女ゲームのヒロインだ。
そのゲームのヒロインとして転生した、前世はゲームに課金していた元社会人な女は狂喜乱舞した。
何故ならトリップした異世界でチートを得た真莉愛は聖女と呼ばれ、神かかったイケメンの妖魔の王達に溺愛されるからだ。
「複雑な家庭環境と育児放棄が原因で、ファザコンとマザコンを拗らせたアーデルヴェルトもいいけどさ、あたしの推しは隠しキャラにして彼の父親であるグレンヴァルトなのよね~。けどさ~、アラブのシークっぽい感じなラクシャーサ族の王であるブラッドフォードに、何かポセイドンっぽい感じな水妖族の王であるヴェルナーも捨て難いし~・・・」
そうよ!
だったら逆ハーをすればいいじゃない!
逆ハーは達成が難しい。だが遣り甲斐と達成感は半端ない。
その後にあるのは彼等による溺愛ルートだからだ。
これは乙女ゲームに似た現実の異世界にトリップしてしまった一人の女がゲームと現実の区別がつかない事で痛い目に遭う話である。
思い付きで書いたのでガバガバ設定+設定に矛盾がある+ご都合主義です。
いいタイトルが浮かばなかったので(仮)をつけています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる