41 / 41
41.エピローグ
しおりを挟む翌朝、キースは朝一番にシャーロットとの婚姻届けを提出した。
後から報告を聞かされたアルバートとアドリアーナは、我が事のように二人を祝福した。
◇
王宮の廊下を歩くキースを、向かい側からやってきた元上司のレオナルドが呼び止める。
「あれから随分色々あったみたいだけど、結局、王太子付きに納まったんだな。まぁ、俺は元々お前にはそういう仕事が一番相応しいと思っていたよ」
「全く、あなたという人は・・・こちらも忙しいので、下らない無駄話のためにいちいち呼び止めないでください。それと、もう招待状が届いているかと思いますが、結婚式には必ず来てくださいよ?」
「当たり前だ。いつも格好つけているお前が、どれだけ締まりのない顔をするのかと思うと、今から楽しみで仕方がないよ。それにしても、お前のお姫様がシャーロットだったとはな・・・」
◇
レティシアは姉であるシャーロットの結婚式の為に、短い休暇をとった。
これから式を控え、既に身支度を済ませたキースは、レティシアと雑談をしてシャーロットの準備を待っていた。
「この間まで、全部お忘れになっていたと聞きましたのに・・・。かと思えば、順番を飛ばして、瞬く間にお姉様を手に入れてしまうなんて。薄情な意気地無しだと思っていたら、案外大胆なところもあったのですね?」
「耳が痛いな。色々、申し開きが出来ないことも多過ぎるけれど・・・。あんまりのんびりして、またシャーロットが僕から逃げ出してしまうと困るからね」
キースは悪戯っぽく笑った。
「いくらキース様でも、これ以上お姉様を泣かせたら私が許しませんから・・・。大切にすると約束してくださいませ」
「約束する」
レティシアの真剣な言葉に、キースも茶化さずに答えた。
そうこうしている間に、キースが見立てた純白に青い刺繍のアクセントが入った、煌びやかな婚礼衣装に身を包んだシャーロットが姿を見せた。
キースは息を飲んだ。
彼はまた無言になりかけたが、どうにかこらえて言葉を口にした。
「・・・美しいです。あなたにとても良く似合っています」
彼は耳まで熱くしながらも、彼女の目を見て、最後まではっきりと言い切った。
キースはいくら恥ずかしいと思ったとしても、もう自分の気持ちを表すのを躊躇う事はやめたのだった。
幸せは、それを保つ努力もせずに、ただ享受するばかりでは、すぐに消えてしまう儚いものだと知ったから。
そうならない為には、いつでも悔いのないように思いを伝えるべきだと感じたから。
「行きましょうか」
「はい」
キースは、優しくシャーロットの手を取った。
微笑みを交し合った二人は、皆が待っている扉の方へゆっくりと歩き出した。
fin.
=============================
<あとがき>
これにて、完結となります。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
0
お気に入りに追加
151
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
実在しないのかもしれない
真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・?
※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。
※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。
※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。
あなたのそばにいられるなら、卒業試験に落ちても構いません! そう思っていたのに、いきなり永久就職決定からの溺愛って、そんなのありですか?
石河 翠
恋愛
騎士を養成する騎士訓練校の卒業試験で、不合格になり続けている少女カレン。彼女が卒業試験でわざと失敗するのには、理由があった。 彼女は、教官である美貌の騎士フィリップに恋をしているのだ。
本当は料理が得意な彼女だが、「料理音痴」と笑われてもフィリップのそばにいたいと願っている。
ところがカレンはフィリップから、次の卒業試験で不合格になったら、騎士になる資格を永久に失うと告げられる。このままでは見知らぬ男に嫁がされてしまうと慌てる彼女。
本来の実力を発揮したカレンはだが、卒業試験当日、思いもよらない事実を知らされることになる。毛嫌いしていた見知らぬ婚約者の正体は実は……。
大好きなひとのために突き進むちょっと思い込みの激しい主人公と、なぜか主人公に思いが伝わらないまま外堀を必死で埋め続けるヒーロー。両片想いですれ違うふたりの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】異形の令嬢は花嫁に選ばれる
白雨 音
恋愛
男爵令嬢ブランシュは、十四歳の時に病を患い、右頬から胸に掛けて病痕が残ってしまう。
家族はブランシュの醜い姿に耐えられず、彼女を離れに隔離した。
月日は流れ、ブランシュは二十歳になっていた。
資産家ジェルマンから縁談の打診があり、結婚を諦めていたブランシュは喜ぶが、
そこには落とし穴があった。
結婚後、彼の態度は一変し、ブランシュは離れの古い塔に追いやられてしまう。
「もう、何も期待なんてしない…」無気力にただ日々を過ごすブランシュだったが、
ある不思議な出会いから、彼女は光を取り戻していく…
異世界恋愛☆ 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
婚約破棄のためなら逃走します〜魔力が強い私は魔王か聖女か〜
佐原香奈
恋愛
イシュトハン家シリーズ1作目
女伯爵としての未来が決まっているクロエは、暫く会話もしていなかった幼馴染でもあるフリードリヒ殿下との婚約を突然知らされる。
婚約を拒んでいたのだが、あれよあれよと言う間に婚約は発表されてしまう。
3年前にフリードリヒ殿下が、社交性がないなどと言って、クロエを婚約者候補を外したことを知っているクロエは、突然の婚約に「絶対結婚しない」と掲げて婚約破棄を目論んでいるが、卒業式のプロムはもうすぐそこ。
それなのにプロムに誘われないクロエは、王子の監視を続ける。
殿下がクロエの友人のサリーにプロムのドレスを贈ることを知ったクロエは、自分との結婚を隠蓑にして友人といちゃつく計画なのだと確信する。
結婚はしたくないがプロムには出たい。
一生に一度の夢の舞台のプロム。
クロエは無事に参加できるのか。
果たしてその舞台で微笑むのは誰なのか…
その出会い、運命につき。
あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】離縁など、とんでもない?じゃあこれ食べてみて。
BBやっこ
恋愛
サリー・シュチュワートは良縁にめぐまれ、結婚した。婚家でも温かく迎えられ、幸せな生活を送ると思えたが。
何のこれ?「旦那様からの指示です」「奥様からこのメニューをこなすように、と。」「大旦那様が苦言を」
何なの?文句が多すぎる!けど慣れ様としたのよ…。でも。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
towaka様
誤字のご指摘とご感想ありがとうございました!
今の時点では、少し残念なことになってしまっているのですが、これからまたお話が動きますので、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。
ババナ様
こんばんは。
いつもありがとうございます。
個人的には「いざない」という読み方のほうが好みですが、今回のタイトルに関しては、まだそこまで二人の関係が深まっていないので、単純に「さそい」というイメージの方が近いかもしれません。
作者的にはそんな感じですが、どちらでもお好きな方で読んでいただければと思います。
フムフム……。 あっ
天海月さま こんにちは。
入手困難な茶葉、これは
抹茶に竹の花を混ぜたイメージでしょうか…
希少ですねぇ
ババナ様
こんばんは、いつもありがとうございます。
抹茶に竹の花、エキゾチックで素敵ですね!
作中の茶葉や花は特定のものを意図してはいないのですが、敢えていうと北欧紅茶のセーデルブレンドのような風味のイメージで書いています。