今宵、薔薇の園で

天海月

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33.交差する思考

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その晩、アルバートはキースを自室に呼び出した。


「何ですか・・・」

仏頂面のキースは素っ気なく兄に言った。


シャーロットの覚悟を知ったアルバートは、この二人が関係を続けられるかどうかは、キースがどれだけ揺れずにいられるかに掛かっていると思った。

彼女の真意を伝えることが出来れば、彼を安定させておくのは容易いことだろう。

けれど、それを伝えることは彼女自身から止められている。

だからこそキースに、こう言った。

「しっかり、シャーロットを捉まえておけよ」

それを聞いて、昼間の光景を思い出したキースは、吐き捨てるように返した。

「兄さん・・・あなたがそれを言うんですか?」

弟の苛立った様子に心当たりの無いアルバートは、不思議そうに訊く。

「随分気が立っているようだが、何か気に入らない事でもあったのか?」

「親切ぶって人の気持ちを弄んで・・・僕を馬鹿にするのも好い加減にしてください!」

キースは、勢いよく扉を閉めると出て行ってしまった。


取り残されたアルバートは訳も分からず唖然とするしかなかった。

「何があったんだ・・・キース」





正直、兄の気持ちは分からない。

妻帯者の身の上で今更どうしようというのかも知ったことではなかった。


けれど、キースは初めから自分などいない方が、良かったのだと思った。

その方が、全て丸く収まったのだろう・・・。

自分はただの邪魔者だった。

そして、シャーロットにとっても、煩わしいだけの存在でしかなった・・・。

その夜、キースは殆ど眠れなかった。





一晩悩み抜いて、ようやく結論を決めたキースは、明け方になってシャーロットに手紙を書き始めた。

初めにシャーロットが言ったように、婚約者候補としての関係を解消したいという事と、散々自分が邪魔をしてしまったが、シャーロットには幸せになってほしいという事。
そして、長いあいだ自分勝手に振り回してしまったことへの謝罪を書いた。


本来ならば、会って直接伝えるべきことだろうが、彼女の顔を見たら辛くなって、何も言えそうにないからこれで良いのだ・・・。

これ以上、自分のために彼女の時間を無駄には出来ない。



それに、彼女が隣に居ないなら、今までの努力もこれからの人生も、自分にとっては何の意味もない。

どうでも良いのなら、有効活用した挙句、早急に終わらせてしまっても問題ないだろう・・・。

むしろ、それもまた一興かもしれない。

そうしたら、彼女は自分が居なくなったことを少しは悲しんでくれたりするのだろうか・・・。

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