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23.迎え
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約束の日がやってきた。
最後なんだから笑っていなくては駄目よ・・・。
侍女に支度を整えてもらった後、部屋に一人になったシャーロットは、鏡に映っている自分に向かって、窘めるように呟いた。
◇
しばらくして、キースが夜会の迎えにやってきた。
だが、盛装したシャーロットを一目見た彼は、下を向いて赤面し、そのまま無言で固まってしまった。
彼がどんな表情をしているのかは、シャーロットからは見えない。
彼女には、彼が彼女を見た瞬間に下を向いたということしか分からなかった。
「・・・」
「キース・・・」
やっぱり似合っていないのね・・・。
これだけ着飾ったというのに、あの優しいキースが何のお世辞も言えない程に、酷い有様なのだと思うと自分の素材の悪さが悲しくなる・・・。
シャーロットはそんなことを思った。
そんな沈黙を破るように、二人の見送りのためにレティシアが廊下の奥からやってきた。
着飾ったシャーロットを見た彼女は目を輝かせた。
「お姉様、綺麗!!」
あなたが着た方が綺麗なのに・・・と口にしたくなるのをシャーロットは堪えた。
レティシアは固まったままのキースの方に近づいていくと、彼にだけ聞こえる小さな声で囁いた。
「お姉様が素敵すぎて固まってしまったのでしょう?キース様、みっともないからしっかりなさって!」
そして、キースを小突いた。
それを受けたキースは、さらに赤面しながらも、やっと口を開いた。
「シャ、シャーロット、とてもよく似合っています・・・」
きっと彼は妹に窘められたから、今の言葉を無理に口にしたのだろう。
決して本心からの言葉ではない。
彼に無理を強いるのも今夜が最後だから、どうか許してほしいと思いながらシャーロットは笑顔を作って言った。
「ありがとうございます、キース」
「!!」
それを見たキースは、また身悶えながら下を向いてしまった。
「未来のお義兄様は、本当にどうしようもない方だわ・・・」
レティシアは、ため息をつきながら独り言を呟いた。
最後なんだから笑っていなくては駄目よ・・・。
侍女に支度を整えてもらった後、部屋に一人になったシャーロットは、鏡に映っている自分に向かって、窘めるように呟いた。
◇
しばらくして、キースが夜会の迎えにやってきた。
だが、盛装したシャーロットを一目見た彼は、下を向いて赤面し、そのまま無言で固まってしまった。
彼がどんな表情をしているのかは、シャーロットからは見えない。
彼女には、彼が彼女を見た瞬間に下を向いたということしか分からなかった。
「・・・」
「キース・・・」
やっぱり似合っていないのね・・・。
これだけ着飾ったというのに、あの優しいキースが何のお世辞も言えない程に、酷い有様なのだと思うと自分の素材の悪さが悲しくなる・・・。
シャーロットはそんなことを思った。
そんな沈黙を破るように、二人の見送りのためにレティシアが廊下の奥からやってきた。
着飾ったシャーロットを見た彼女は目を輝かせた。
「お姉様、綺麗!!」
あなたが着た方が綺麗なのに・・・と口にしたくなるのをシャーロットは堪えた。
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「お姉様が素敵すぎて固まってしまったのでしょう?キース様、みっともないからしっかりなさって!」
そして、キースを小突いた。
それを受けたキースは、さらに赤面しながらも、やっと口を開いた。
「シャ、シャーロット、とてもよく似合っています・・・」
きっと彼は妹に窘められたから、今の言葉を無理に口にしたのだろう。
決して本心からの言葉ではない。
彼に無理を強いるのも今夜が最後だから、どうか許してほしいと思いながらシャーロットは笑顔を作って言った。
「ありがとうございます、キース」
「!!」
それを見たキースは、また身悶えながら下を向いてしまった。
「未来のお義兄様は、本当にどうしようもない方だわ・・・」
レティシアは、ため息をつきながら独り言を呟いた。
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