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16.あなたを飾りたいⅠ
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「キース、今日はどこへ行くのですか?」
シャーロットは公爵家の馬車に乗っていた。
今朝がた、キースが伯爵家まで彼女を迎えにやって来たのだ。
◇
「ね・・・いや、シャーロットが夜会で着るドレスを一緒に見に行きたいと思って」
「キースはお忙しいのでしょう?こんなことに時間を割くなんて勿体ないです。それに、いつもあまり眠っていない様ですし、休日は良く休んだ方が・・・」
シャーロットが弟に言い聞かせるように話しだしたのを、キースが遮る。
「こんなことなんて言わないでください。僕にとっては大切な事なんです。寧ろ今日みたいな日の為に、僕は仕事をしていると言っても過言ではないのですから・・・」
「キース・・・」
「ともかく、もうすぐ店に着きますから」
わざわざ店に足を運ばずとも、職人を屋敷に呼びつければ済むことだったが、キースは彼女と二人で出掛ける口実を作りたくて店まで出向くことにしたのだった。
◇
店に着くと、さっそく店主が二人を出迎えた。
「お待ちしておりましたよ、キース坊ちゃま」
キースは真っ赤な顔で、今すぐ坊ちゃまと呼ぶのは止めるようにと店主に言った。
こんな店に来たのは久方ぶりだったシャーロットは、少し緊張していたが、それは目の前のやり取りですぐに解れた。
店主はゴホンとわざとらしく咳をして、仕切りなおす。
「では、あらためましてキース様。こちらの方は?」
店主は会話の流れ上、そう訊いてはみたものの、キースの返答を聞く前にシャーロットの頭に留められた群青色の髪飾りを見つけ、目を細めた。
「シャーロット・ロセッティ伯爵令嬢。色々事情があって細かく説明するのは難しいけれど、僕にとっては婚約者だよ」
「この方が・・・承知しました」
そんなやりとりをしている間に、職人が店の奥からデザイン画の束を持ってきた。
「気に入ったものがあれば、仰ってください。基本のタイプは幾つか仕立ててあるものがありますから、試着もしていただけますよ?」
シャーロットは公爵家の馬車に乗っていた。
今朝がた、キースが伯爵家まで彼女を迎えにやって来たのだ。
◇
「ね・・・いや、シャーロットが夜会で着るドレスを一緒に見に行きたいと思って」
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「キース・・・」
「ともかく、もうすぐ店に着きますから」
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◇
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そんなやりとりをしている間に、職人が店の奥からデザイン画の束を持ってきた。
「気に入ったものがあれば、仰ってください。基本のタイプは幾つか仕立ててあるものがありますから、試着もしていただけますよ?」
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