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13. side キース
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『キース・・・』
姉様から名前で呼んでもらえた・・・。
常に、大人らしく平常心を保たなくては、彼女から子供じみている事を理由に愛想を尽かされてしまうかもしれない。
そんなことを考えているキースは、努めて真顔になろうとするが、シャーロットのことを思い出す度に顔がだらしなく緩んでしまうのを止められなかった。
今までも名前で呼んでもらっていたではないか、と思わなくもないが、やはり『様』が付いている以上どこか距離感があった。
シャーロットとは気安い仲とはいえ、彼女にとっての自分は、兄の付属物でしかないのだという印象が長年拭えなかった。
いつでも、『アルバートの弟』という枕詞がついて回るのが悔しかった。
彼女から対等な存在として扱われたいとずっと思ってきた。
だからこそ、何をするにも過剰なほどの努力をしてきた。
ただ、彼女の隣に立つに相応しい資格を得たいという、それだけのために。
◇
今日は彼女と長い時間話すことができて嬉しかった。
急ぎで取り寄せた紅茶と菓子も喜んでくれたようだった。
ただ、彼女の好みを兄に教えてもらったというのが癪ではあったが・・・。
自分は知りえない事だったのだから、兄を頼る他に方法がなかった。
こういう自力ではどうにもならない部分にあたると、自分が年若いことが歯痒くて仕方がない。
そんなことを考えるのは馬鹿馬鹿しいと解ってはいるのに、兄は自分の知らない彼女を知っている、たったそれだけの事で心がひどく掻き乱されて、つまらない嫉妬心で狂いそうになる。
年のことはどうにもならないし、そもそも兄は妻と円満なのだから、シャーロットとは切り離して考えるべきなのだろうが・・・。
姉様から名前で呼んでもらえた・・・。
常に、大人らしく平常心を保たなくては、彼女から子供じみている事を理由に愛想を尽かされてしまうかもしれない。
そんなことを考えているキースは、努めて真顔になろうとするが、シャーロットのことを思い出す度に顔がだらしなく緩んでしまうのを止められなかった。
今までも名前で呼んでもらっていたではないか、と思わなくもないが、やはり『様』が付いている以上どこか距離感があった。
シャーロットとは気安い仲とはいえ、彼女にとっての自分は、兄の付属物でしかないのだという印象が長年拭えなかった。
いつでも、『アルバートの弟』という枕詞がついて回るのが悔しかった。
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◇
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こういう自力ではどうにもならない部分にあたると、自分が年若いことが歯痒くて仕方がない。
そんなことを考えるのは馬鹿馬鹿しいと解ってはいるのに、兄は自分の知らない彼女を知っている、たったそれだけの事で心がひどく掻き乱されて、つまらない嫉妬心で狂いそうになる。
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