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10.援護
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「お話は終わったのですか?」
暫くして部屋に入ってきたアドリアーナは、夫に訊いた。
「あぁ」
アルバートは頬を緩める。
「キース様はシャーロット様と上手く行きそうですか?」
彼女が尋ねると、彼は一度弛緩した顔を顰めた。
「多少アドバイスはしたが・・・何とも言えないな。キースはお世辞にも女性の扱いに長けているとは言い難いし、彼女は彼女で、自分に対する好意にかなり鈍感だ。上手く行くにしても、そうとう時間が掛かるだろうな」
「あれだけ、ずっとシャーロット様の事だけを気に掛けているのに、キース様が何だか少し気の毒に思えてきますね」
「まぁ、良くも悪くも、あいつは一途すぎるからな。自分の気持ちに拘り過ぎて、相手がどう思うか考える余裕が不足しているかもしれない」
「お二人が上手く行くように、私も何か協力できれば良いのですが・・・」
「うむ・・・」
「そういえば、私達が結婚して以来、シャーロット様はこちらにお越しになった事は一度も無かったと記憶していますけれど、以前はよく遊びにいらしていたのでしょう?
以前、シャーロット様と何度かお話した時、自分の事よりも周囲を気に掛ける方だという印象を受けました。もしかしたら、何か遠慮なさっているのかも・・・」
「そう言われれば、そうだな?」
「そういう事であれば、シャーロット様をこちらにお呼びして、キース様とお茶会でもしていただくのはどうでしょうか。
こちらから、お誘いするのであれば、シャーロット様も気兼ねせずに済むのでは?
それに、いきなり外で二人きりで会うよりも、慣れた場所の方がキース様も落ち着いてお話が出来るかと思いますし」
「そうだな」
アルバートとアドリアーナの夫婦は、もう少しで上手く行きそうなのに、なかなか進展しない二人を見ていると、何かと世話を焼いてやりたくて仕方がなかった。
それは弟に対する純粋な情と親切心からだった。
だが、シャーロットを鈍感だと言い、キースを評して相手の気持ちを考える余裕が無いと言った、アルバートもまた、ある意味においては他人の気持ちには疎かったのかもしれない・・・。
或いは無自覚な傲慢か・・・。
暫くして部屋に入ってきたアドリアーナは、夫に訊いた。
「あぁ」
アルバートは頬を緩める。
「キース様はシャーロット様と上手く行きそうですか?」
彼女が尋ねると、彼は一度弛緩した顔を顰めた。
「多少アドバイスはしたが・・・何とも言えないな。キースはお世辞にも女性の扱いに長けているとは言い難いし、彼女は彼女で、自分に対する好意にかなり鈍感だ。上手く行くにしても、そうとう時間が掛かるだろうな」
「あれだけ、ずっとシャーロット様の事だけを気に掛けているのに、キース様が何だか少し気の毒に思えてきますね」
「まぁ、良くも悪くも、あいつは一途すぎるからな。自分の気持ちに拘り過ぎて、相手がどう思うか考える余裕が不足しているかもしれない」
「お二人が上手く行くように、私も何か協力できれば良いのですが・・・」
「うむ・・・」
「そういえば、私達が結婚して以来、シャーロット様はこちらにお越しになった事は一度も無かったと記憶していますけれど、以前はよく遊びにいらしていたのでしょう?
以前、シャーロット様と何度かお話した時、自分の事よりも周囲を気に掛ける方だという印象を受けました。もしかしたら、何か遠慮なさっているのかも・・・」
「そう言われれば、そうだな?」
「そういう事であれば、シャーロット様をこちらにお呼びして、キース様とお茶会でもしていただくのはどうでしょうか。
こちらから、お誘いするのであれば、シャーロット様も気兼ねせずに済むのでは?
それに、いきなり外で二人きりで会うよりも、慣れた場所の方がキース様も落ち着いてお話が出来るかと思いますし」
「そうだな」
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それは弟に対する純粋な情と親切心からだった。
だが、シャーロットを鈍感だと言い、キースを評して相手の気持ちを考える余裕が無いと言った、アルバートもまた、ある意味においては他人の気持ちには疎かったのかもしれない・・・。
或いは無自覚な傲慢か・・・。
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