14 / 37
13(side ナーヴェ)
しおりを挟む
エルランド国王である兄セルヴィスの弟である私は、跡目争いの煩わしさから逃れるため、兄の即位と同時に臣下となり公爵位を賜った。
私はこの国の外交を任されており、一年の半分以上は他国で過ごすような日々を送っている。
兄上が婚姻を結んでからというもの、周囲から聞こえてくる『早く身を固めろ』という声が、いよいよ煩わしくなってきたが、私には間に合わせの相手など必要ない。
元より、『唯一の望み』が叶わないのであれば、生涯独りで過ごすという覚悟も決めている。
家を継ぐものが必要だというのならば、養子でも構わないと私自身が思っているのだから、放っておいてほしいと思う。
◇
兄上が番であるはずの義姉上と、何故か距離をとろうとする理由が、以前から理解できなかった。
二人の周りの者たちは、彼らを「仲睦まじい」と評したが、私の眼には全くそうは見えなかった。
彼女の縋るような視線に対して、どこも見ていない兄上。
二人の感情の温度差に、見ているこちらの方が胸が詰まるような気さえしていた。
兄上はまさか、まだあの女に未練があるというのだろうか・・・。
◇
義姉上の異変に気付いたのは、条約に関する長期会議が終わり隣国から帰ってきて、すぐのことだった。
枯れ木のようにやせ細った身体に、笑顔の仮面を貼り付けて気丈に振る舞う彼女を見た。
笑っているにも関わらず、今にも泣き出しそうな顔に見えた。
どうして誰もおかしい事に気が付かないのだろうか?
どう見たって異常だ。
兄上は何をしている?
余りの事態に、私から義姉上に直接声を掛けようかと思ったが、立場上憚られた。
義姉上に妙な噂が立つような事はできない。
私は兄上と早急に話をしなくてはならないと感じた。
すぐにでも会って話をと思い、今から時間を取ることができないか打診した。
しかし、今晩は重要な神事に関する打合せがあるらしく、どうしても時間が取れないとの事だった。
私もまた明日の朝一番に、別の外交案件のためにエルランドを出立しなくてはならない。
時間が経つほど、事態が悪化していくような不吉な予感めいたものを感じ、落ち着かなかったが、今はどうすることもできない。
次に帰ってきたら、話をする為の時間を取ってほしいという趣旨の手紙を書き、兄上に届けさせた。
私はこの国の外交を任されており、一年の半分以上は他国で過ごすような日々を送っている。
兄上が婚姻を結んでからというもの、周囲から聞こえてくる『早く身を固めろ』という声が、いよいよ煩わしくなってきたが、私には間に合わせの相手など必要ない。
元より、『唯一の望み』が叶わないのであれば、生涯独りで過ごすという覚悟も決めている。
家を継ぐものが必要だというのならば、養子でも構わないと私自身が思っているのだから、放っておいてほしいと思う。
◇
兄上が番であるはずの義姉上と、何故か距離をとろうとする理由が、以前から理解できなかった。
二人の周りの者たちは、彼らを「仲睦まじい」と評したが、私の眼には全くそうは見えなかった。
彼女の縋るような視線に対して、どこも見ていない兄上。
二人の感情の温度差に、見ているこちらの方が胸が詰まるような気さえしていた。
兄上はまさか、まだあの女に未練があるというのだろうか・・・。
◇
義姉上の異変に気付いたのは、条約に関する長期会議が終わり隣国から帰ってきて、すぐのことだった。
枯れ木のようにやせ細った身体に、笑顔の仮面を貼り付けて気丈に振る舞う彼女を見た。
笑っているにも関わらず、今にも泣き出しそうな顔に見えた。
どうして誰もおかしい事に気が付かないのだろうか?
どう見たって異常だ。
兄上は何をしている?
余りの事態に、私から義姉上に直接声を掛けようかと思ったが、立場上憚られた。
義姉上に妙な噂が立つような事はできない。
私は兄上と早急に話をしなくてはならないと感じた。
すぐにでも会って話をと思い、今から時間を取ることができないか打診した。
しかし、今晩は重要な神事に関する打合せがあるらしく、どうしても時間が取れないとの事だった。
私もまた明日の朝一番に、別の外交案件のためにエルランドを出立しなくてはならない。
時間が経つほど、事態が悪化していくような不吉な予感めいたものを感じ、落ち着かなかったが、今はどうすることもできない。
次に帰ってきたら、話をする為の時間を取ってほしいという趣旨の手紙を書き、兄上に届けさせた。
0
お気に入りに追加
168
あなたにおすすめの小説
あなたの事は記憶に御座いません
cyaru
恋愛
この婚約に意味ってあるんだろうか。
ロペ公爵家のグラシアナはいつも考えていた。
婚約者の王太子クリスティアンは幼馴染のオルタ侯爵家の令嬢イメルダを側に侍らせどちらが婚約者なのかよく判らない状況。
そんなある日、グラシアナはイメルダのちょっとした悪戯で負傷してしまう。
グラシアナは「このチャンス!貰った!」と・・・記憶喪失を装い逃げ切りを図る事にした。
のだが…王太子クリスティアンの様子がおかしい。
目覚め、記憶がないグラシアナに「こうなったのも全て私の責任だ。君の生涯、どんな時も私が隣で君を支え、いかなる声にも盾になると誓う」なんて言い出す。
そりゃ、元をただせば貴方がちゃんとしないからですけどね??
記憶喪失を貫き、距離を取って逃げ切りを図ろうとするのだが何故かクリスティアンが今までに見せた事のない態度で纏わりついてくるのだった・・・。
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★ニャンの日present♡ 5月18日投稿開始、完結は5月22日22時22分
★今回久しぶりの5日間という長丁場の為、ご理解お願いします(なんの?)
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
[完結]間違えた国王〜のお陰で幸せライフ送れます。
キャロル
恋愛
国の駒として隣国の王と婚姻する事にになったマリアンヌ王女、王族に生まれたからにはいつかはこんな日が来ると覚悟はしていたが、その相手は獣人……番至上主義の…あの獣人……待てよ、これは逆にラッキーかもしれない。
離宮でスローライフ送れるのでは?うまく行けば…離縁、
窮屈な身分から解放され自由な生活目指して突き進む、美貌と能力だけチートなトンデモ王女の物語
すべては、あなたの為にした事です。
cyaru
恋愛
父に道具のように扱われ、成り上がるために侯爵家に嫁がされたルシェル。
夫となるレスピナ侯爵家のオレリアンにはブリジットという恋人がいた。
婚約が決まった時から学園では【運命の2人を引き裂く恥知らず】と虐められ、初夜では屈辱を味わう。
翌朝、夫となったオレリアンの母はルシェルに部屋を移れと言う。
与えられた部屋は使用人の部屋。帰ってこない夫。
ルシェルは離縁に向けて動き出す。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
10月1日。番外編含め完結致しました。多くの方に読んで頂き感謝いたします。
返信不要とありましたので、こちらでお礼を。「早々たる→錚々たる」訂正を致しました。
教えて頂きありがとうございました。
お名前をここに記すことは出来ませんが、感謝いたします。(*^-^*)
【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる
田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。
お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。
「あの、どちら様でしょうか?」
「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」
「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」
溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。
ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる