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第三章 春愁
風邪
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朝起きたら全身がだるくて、頭がくらくらしていた。
これは熱だなぁ…って思った。
お店に急いでお休みの連絡を入れて、温度計で熱を測る。
38.4と表示されたのを見て、ため息を一つついた。
冷蔵庫までふらふら歩いて、冷えピタを一枚取って頭に貼る。
朝ごはん…冷蔵庫の中を見回しても、特に食べられそうなものはない。
っていうか食欲もそれほどないし…
冷蔵庫からベッドに戻り、布団の中に入った。
布団の中でも寒気がすごかった。暖房はついてるはずだけど、、
「ごほっ…ごほっ…」
なんでこんな時に限って風邪なんかひいちゃうんだろ…。
額に貼った冷えピタがちょっとだけ冷たい。
今日シフト入ってるのに…店長たちにも迷惑かけちゃったな…。
先輩にも…返事聞きたかったのに
ーーー
目が覚めると、時計は午後2時を指していた。
こんなに寝てたんだ…。
熱は…まだありそうだな…。
冷蔵庫で冷えピタ交換しないと…。あと何か食べないと、、、
お粥…かな、、お米あったっけ…
クラクラする頭を起こして、キッチンの方をみると、
「はえ…?」
僕よりも一回り大きい背中が、キッチンで何かをしていた。
泥棒…?強盗…?、、にしてもなんでキッチンで物色してるんだろ…
物音立てちゃ何かされるかも…
体の寒気が一気にひどくなった。
どうしよう…警察…?
いや、今警察に電話すると気づかれて何をされるかわからない…
じゃあこのまま寝たふりでやり過ごす…
考えているうちに、僕より一回り大きい人影はこちらの方を振り返った。
「うわぁあああっ…」
「お、起きたか」
「あああ…あ……え?」
そこにいたのは…先輩だった。
ーーー
「はいこれ。お粥」
「ありがとうございます…」
状況がよくわからないまま僕に出されたのは、お盆に置かれた白い湯気を立てる白米がゆと、きゅうりの浅漬けだった。
用意されたお箸とスプーンを使って、お粥と漬物を食べてみる。
「美味しい…」
「そりゃよかった。熱いからゆっくり食べろよ」
「はい…」
先輩はベッドの隣に椅子を置いて、こっちの方を見てる。
僕は黙々とお粥を食べる。
「で、なんで先輩がここにいるんですか」
「まあ聞くよね」
「聞かないわけないじゃないですか…。今日フルでシフト入ってましたよね」
「それがね~。お昼過ぎたらお客さんあんまり来なくなっちゃって。それでりょうやの様子見に来たの」
「はあ…っていうかどうやって入ったんですか???鍵…閉めてたはず…」
「店長から合鍵渡されたの。お前ん家の」
「え…」
「お前店長のこと案外信頼してるんだな。合鍵持たせてるとか。」
「僕店長に鍵渡したことないんですけど…」
「…まじ?」
お粥を食べて温まったはずの僕の背中に再び寒気が走った。
後で知ったことだけど、どうやら僕の合鍵を勝手に作っていたらしい…。
そろそろ通報したほうがいいのかな…?
「ごちそうさまでした…。」
「ちょっとは具合良くなったか?」
「はい…。ありがとうございます。」
先輩はお盆を片付けると、そのまま洗い物を始めた。
「せ…先輩、、」
「なに~?」
「その…」
言いたいことはあった。
けど、ここで言っちゃったら、だめな気がした。
「…やっぱりなんでもないです」
「…そっか。」
洗い物の水の音が聞こえてくる。
やっぱり少し寒いので、布団の中にもう一度もぐる。
先輩の背中を見ながら、少しずつ、また眠気に襲われる。
「やっぱり…好きなんだな」
心の中でそう思って、僕は目を閉じた。
続く
これは熱だなぁ…って思った。
お店に急いでお休みの連絡を入れて、温度計で熱を測る。
38.4と表示されたのを見て、ため息を一つついた。
冷蔵庫までふらふら歩いて、冷えピタを一枚取って頭に貼る。
朝ごはん…冷蔵庫の中を見回しても、特に食べられそうなものはない。
っていうか食欲もそれほどないし…
冷蔵庫からベッドに戻り、布団の中に入った。
布団の中でも寒気がすごかった。暖房はついてるはずだけど、、
「ごほっ…ごほっ…」
なんでこんな時に限って風邪なんかひいちゃうんだろ…。
額に貼った冷えピタがちょっとだけ冷たい。
今日シフト入ってるのに…店長たちにも迷惑かけちゃったな…。
先輩にも…返事聞きたかったのに
ーーー
目が覚めると、時計は午後2時を指していた。
こんなに寝てたんだ…。
熱は…まだありそうだな…。
冷蔵庫で冷えピタ交換しないと…。あと何か食べないと、、、
お粥…かな、、お米あったっけ…
クラクラする頭を起こして、キッチンの方をみると、
「はえ…?」
僕よりも一回り大きい背中が、キッチンで何かをしていた。
泥棒…?強盗…?、、にしてもなんでキッチンで物色してるんだろ…
物音立てちゃ何かされるかも…
体の寒気が一気にひどくなった。
どうしよう…警察…?
いや、今警察に電話すると気づかれて何をされるかわからない…
じゃあこのまま寝たふりでやり過ごす…
考えているうちに、僕より一回り大きい人影はこちらの方を振り返った。
「うわぁあああっ…」
「お、起きたか」
「あああ…あ……え?」
そこにいたのは…先輩だった。
ーーー
「はいこれ。お粥」
「ありがとうございます…」
状況がよくわからないまま僕に出されたのは、お盆に置かれた白い湯気を立てる白米がゆと、きゅうりの浅漬けだった。
用意されたお箸とスプーンを使って、お粥と漬物を食べてみる。
「美味しい…」
「そりゃよかった。熱いからゆっくり食べろよ」
「はい…」
先輩はベッドの隣に椅子を置いて、こっちの方を見てる。
僕は黙々とお粥を食べる。
「で、なんで先輩がここにいるんですか」
「まあ聞くよね」
「聞かないわけないじゃないですか…。今日フルでシフト入ってましたよね」
「それがね~。お昼過ぎたらお客さんあんまり来なくなっちゃって。それでりょうやの様子見に来たの」
「はあ…っていうかどうやって入ったんですか???鍵…閉めてたはず…」
「店長から合鍵渡されたの。お前ん家の」
「え…」
「お前店長のこと案外信頼してるんだな。合鍵持たせてるとか。」
「僕店長に鍵渡したことないんですけど…」
「…まじ?」
お粥を食べて温まったはずの僕の背中に再び寒気が走った。
後で知ったことだけど、どうやら僕の合鍵を勝手に作っていたらしい…。
そろそろ通報したほうがいいのかな…?
「ごちそうさまでした…。」
「ちょっとは具合良くなったか?」
「はい…。ありがとうございます。」
先輩はお盆を片付けると、そのまま洗い物を始めた。
「せ…先輩、、」
「なに~?」
「その…」
言いたいことはあった。
けど、ここで言っちゃったら、だめな気がした。
「…やっぱりなんでもないです」
「…そっか。」
洗い物の水の音が聞こえてくる。
やっぱり少し寒いので、布団の中にもう一度もぐる。
先輩の背中を見ながら、少しずつ、また眠気に襲われる。
「やっぱり…好きなんだな」
心の中でそう思って、僕は目を閉じた。
続く
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