4 / 32
第一章 澄清
新作デザートコンテスト
しおりを挟む
結局、この騒動は店長の釈明と、りょうやの身分証明証を見せただけで解決したが、女性客は「偽造だ」などを言っていた気がする。
そんなはずはないのだが。
とまあ、迷惑なお客様のおかげで、当店はレジの横にりょうやの顔と「18歳以上です」という文字と免許証のコピーを展示した「りょうや博覧会」を開催せざるをえなかった。
本人には反対されたが、こうでもしないと根本的な問題解決には至らないだろうと満場一致したからである。
悪い噂が改善され、りょうやは一般スタッフとして普通の道を歩む…あと思われたが、「ショタ店員」として今度は一時期話題になった。
おっぱいの大きいお姉さん二人に囲まれたりょうやを見ると、羨ま…じゃなくて…、、いや普通に羨ましい。俺も巨乳お姉さんに挟まれて生きてみたい人生だった。
あらかじめ断っておくが俺に特殊性癖なるものは存在しないし、一般的なCカップ以上の女性を好んでおかずにしている一般男性だ。
まあこのままぽっくり死ぬのもなんだし、もう少し物語に付き合おう。
外はすでに11月下旬の冷たい空気がビュービューと吹いていた。
出勤時に秋風が体に吹き付けてとても寒かった記憶がある。
それとは反対に、カフェくすのきの店内は暖房が効いていてとても暖かい。
店内には数人のお客さんが、コーヒーを啜ったり、パソコンで仕事をしている姿が見える。
さて、一方の俺はというと、12月のクリスマスシーズンに向けての新作デザートを思案中だ。
レジ前の椅子に座り、メモを片手に頭を悩ませている。
クリスマスのサンタを信じるか信じないかという話は、もう飽きるほどに聞いてきた。
そんなものがいるはずないことは、5歳のプレゼントであるパンのヒーローのおもちゃについていた値札を見つけた時からわかっていたことである。
空飛ぶトナカイに乗って、シャンシャンとベルを鳴らして、一日だけで世界中の子供達へ煙突からプレゼントを届ける。
例え場所を分担していたとしても、サンタクロースは労働基準法違反で労基に訴えるべきだろう。
時給は何円だろうか。バイトの募集があればぜひ応募してみたいものだ。
さて、どうして新作デザートを一人寂しく思案しているのかというと、それは今朝の店長の発言にまで遡る。
「今年も恒例のクリスマスデザートコンテストやりま~す!!」
「今年もやるんすか店長…」
「まあまあ悲しいこと言わないの。りょうやくんは初めてなんだし」
「デザートコンテストですか!?なんだか面白そうですね…」
りょうやが興味を持ってしまった…
すなわちコンテストの開催は確実になったということである。
来週までにデザイン案を考えて試食会を開くようだ。
ふふ…(りょうやが来る前までは)厨房を任せきりだった俺の手際良さを舐めるでない。
俺は大の甘党。デザートも今までたくさん食べてきた…と思う。
クリスマスのデザートがなんぼのもんじゃい。去年は鈴音に大敗を喫してしまったが、今年は絶対に負けないデザインを考えてきてやる。
自分で言うのもなんだが、威勢は…威勢だけは良かった気がする。
ただその威勢は、1週間後の試食会であっさり打ち砕かれるのだがな。
りょうやのデザイン案は、それこそ五つ星ホテルのメインシェフが考案したと言ってもいいほどのクオリティだろう。
パティシエを目指してるのか?お前は。
「ありがとうございます…えへへ」
店長や鈴音からの大絶賛を受け、今年のクリスマスデザートはこれで行くことに決定した。
なお俺の案は今年も鈴音に負けまさかの最下位。
粉雪が漂う雪国の地面を意識し、ふっくら焼き上げたスポンジにクリームを塗っただけの真っ白なケーキ。
具はない。
何事もシンプルイズベストなはずだが、何がいけなかったのだろうか。
一方でりょうやの案は、いちごをふんだんに使い、サンタカラーをイメージしたとのこと。
チョコレートや他の果物も使い、プレゼントまで再現している。
サンタクロースも大変だな。こんなところにまで出張とは。
しかし…、サンタクロースを意識したケーキとは。
りょうやはまさかサンタを信じている…と考えるのも無理はない。
ショタはいつまでもサンタを信じる生き物と店長は語る。
「あのピュアな心は、大人のようにどす黒くて汚い現実を想像しているのではなく、明るくて希望のある未来なんだよ。」
やかましい以外の何者でもないが、気になった俺はりょうやに聞いてみることにした。
「サンタクロース?そんなのいるわけないじゃないですか。」
「えっ」
「小学校3年生ぐらいまでは信じてましたけどね。」
「…」
清々しい笑顔で言われると、こちらまで気分がせいぜいする。
少しだけ期待していた俺が恥ずかしい。
続く
そんなはずはないのだが。
とまあ、迷惑なお客様のおかげで、当店はレジの横にりょうやの顔と「18歳以上です」という文字と免許証のコピーを展示した「りょうや博覧会」を開催せざるをえなかった。
本人には反対されたが、こうでもしないと根本的な問題解決には至らないだろうと満場一致したからである。
悪い噂が改善され、りょうやは一般スタッフとして普通の道を歩む…あと思われたが、「ショタ店員」として今度は一時期話題になった。
おっぱいの大きいお姉さん二人に囲まれたりょうやを見ると、羨ま…じゃなくて…、、いや普通に羨ましい。俺も巨乳お姉さんに挟まれて生きてみたい人生だった。
あらかじめ断っておくが俺に特殊性癖なるものは存在しないし、一般的なCカップ以上の女性を好んでおかずにしている一般男性だ。
まあこのままぽっくり死ぬのもなんだし、もう少し物語に付き合おう。
外はすでに11月下旬の冷たい空気がビュービューと吹いていた。
出勤時に秋風が体に吹き付けてとても寒かった記憶がある。
それとは反対に、カフェくすのきの店内は暖房が効いていてとても暖かい。
店内には数人のお客さんが、コーヒーを啜ったり、パソコンで仕事をしている姿が見える。
さて、一方の俺はというと、12月のクリスマスシーズンに向けての新作デザートを思案中だ。
レジ前の椅子に座り、メモを片手に頭を悩ませている。
クリスマスのサンタを信じるか信じないかという話は、もう飽きるほどに聞いてきた。
そんなものがいるはずないことは、5歳のプレゼントであるパンのヒーローのおもちゃについていた値札を見つけた時からわかっていたことである。
空飛ぶトナカイに乗って、シャンシャンとベルを鳴らして、一日だけで世界中の子供達へ煙突からプレゼントを届ける。
例え場所を分担していたとしても、サンタクロースは労働基準法違反で労基に訴えるべきだろう。
時給は何円だろうか。バイトの募集があればぜひ応募してみたいものだ。
さて、どうして新作デザートを一人寂しく思案しているのかというと、それは今朝の店長の発言にまで遡る。
「今年も恒例のクリスマスデザートコンテストやりま~す!!」
「今年もやるんすか店長…」
「まあまあ悲しいこと言わないの。りょうやくんは初めてなんだし」
「デザートコンテストですか!?なんだか面白そうですね…」
りょうやが興味を持ってしまった…
すなわちコンテストの開催は確実になったということである。
来週までにデザイン案を考えて試食会を開くようだ。
ふふ…(りょうやが来る前までは)厨房を任せきりだった俺の手際良さを舐めるでない。
俺は大の甘党。デザートも今までたくさん食べてきた…と思う。
クリスマスのデザートがなんぼのもんじゃい。去年は鈴音に大敗を喫してしまったが、今年は絶対に負けないデザインを考えてきてやる。
自分で言うのもなんだが、威勢は…威勢だけは良かった気がする。
ただその威勢は、1週間後の試食会であっさり打ち砕かれるのだがな。
りょうやのデザイン案は、それこそ五つ星ホテルのメインシェフが考案したと言ってもいいほどのクオリティだろう。
パティシエを目指してるのか?お前は。
「ありがとうございます…えへへ」
店長や鈴音からの大絶賛を受け、今年のクリスマスデザートはこれで行くことに決定した。
なお俺の案は今年も鈴音に負けまさかの最下位。
粉雪が漂う雪国の地面を意識し、ふっくら焼き上げたスポンジにクリームを塗っただけの真っ白なケーキ。
具はない。
何事もシンプルイズベストなはずだが、何がいけなかったのだろうか。
一方でりょうやの案は、いちごをふんだんに使い、サンタカラーをイメージしたとのこと。
チョコレートや他の果物も使い、プレゼントまで再現している。
サンタクロースも大変だな。こんなところにまで出張とは。
しかし…、サンタクロースを意識したケーキとは。
りょうやはまさかサンタを信じている…と考えるのも無理はない。
ショタはいつまでもサンタを信じる生き物と店長は語る。
「あのピュアな心は、大人のようにどす黒くて汚い現実を想像しているのではなく、明るくて希望のある未来なんだよ。」
やかましい以外の何者でもないが、気になった俺はりょうやに聞いてみることにした。
「サンタクロース?そんなのいるわけないじゃないですか。」
「えっ」
「小学校3年生ぐらいまでは信じてましたけどね。」
「…」
清々しい笑顔で言われると、こちらまで気分がせいぜいする。
少しだけ期待していた俺が恥ずかしい。
続く
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

率先して自宅警備員してたら宅配業者に両思い判定されてた話
西を向いたらね
BL
[配達員×実家暮らしニート]
・高梨悠斗 (受け)
実家住みのニート。常に家にいるため、荷物の受け取りはお手の物。
・水嶋涼 (攻め)
宅急便の配達員。いつ荷物を届けても必ず出てくれる受けに対して、「もしかして俺のこと好きなのでは…?」となり、そのままズルズル受けの事が好きになる。
反応がよければ攻め視点も書きます。

ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる