バイトの後輩があまりにもショタで困る

のりたまご飯

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第一章 澄清

新作デザートコンテスト

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結局、この騒動は店長の釈明と、りょうやの身分証明証を見せただけで解決したが、女性客は「偽造だ」などを言っていた気がする。
そんなはずはないのだが。

とまあ、迷惑なお客様のおかげで、当店はレジの横にりょうやの顔と「18歳以上です」という文字と免許証のコピーを展示した「りょうや博覧会」を開催せざるをえなかった。
本人には反対されたが、こうでもしないと根本的な問題解決には至らないだろうと満場一致したからである。

悪い噂が改善され、りょうやは一般スタッフとして普通の道を歩む…あと思われたが、「ショタ店員」として今度は一時期話題になった。
おっぱいの大きいお姉さん二人に囲まれたりょうやを見ると、羨ま…じゃなくて…、、いや普通に羨ましい。俺も巨乳お姉さんに挟まれて生きてみたい人生だった。
あらかじめ断っておくが俺に特殊性癖なるものは存在しないし、一般的なCカップ以上の女性を好んでおかずにしている一般男性だ。
まあこのままぽっくり死ぬのもなんだし、もう少し物語に付き合おう。

外はすでに11月下旬の冷たい空気がビュービューと吹いていた。
出勤時に秋風が体に吹き付けてとても寒かった記憶がある。
それとは反対に、カフェくすのきの店内は暖房が効いていてとても暖かい。
店内には数人のお客さんが、コーヒーを啜ったり、パソコンで仕事をしている姿が見える。

さて、一方の俺はというと、12月のクリスマスシーズンに向けての新作デザートを思案中だ。
レジ前の椅子に座り、メモを片手に頭を悩ませている。

クリスマスのサンタを信じるか信じないかという話は、もう飽きるほどに聞いてきた。
そんなものがいるはずないことは、5歳のプレゼントであるパンのヒーローのおもちゃについていた値札を見つけた時からわかっていたことである。

空飛ぶトナカイに乗って、シャンシャンとベルを鳴らして、一日だけで世界中の子供達へ煙突からプレゼントを届ける。
例え場所を分担していたとしても、サンタクロースは労働基準法違反で労基に訴えるべきだろう。
時給は何円だろうか。バイトの募集があればぜひ応募してみたいものだ。

さて、どうして新作デザートを一人寂しく思案しているのかというと、それは今朝の店長の発言にまで遡る。

「今年も恒例のクリスマスデザートコンテストやりま~す!!」

「今年もやるんすか店長…」

「まあまあ悲しいこと言わないの。りょうやくんは初めてなんだし」

「デザートコンテストですか!?なんだか面白そうですね…」

りょうやが興味を持ってしまった…
すなわちコンテストの開催は確実になったということである。
来週までにデザイン案を考えて試食会を開くようだ。

ふふ…(りょうやが来る前までは)厨房を任せきりだった俺の手際良さを舐めるでない。
俺は大の甘党。デザートも今までたくさん食べてきた…と思う。
クリスマスのデザートがなんぼのもんじゃい。去年は鈴音に大敗を喫してしまったが、今年は絶対に負けないデザインを考えてきてやる。


自分で言うのもなんだが、威勢は…威勢だけは良かった気がする。
ただその威勢は、1週間後の試食会であっさり打ち砕かれるのだがな。

りょうやのデザイン案は、それこそ五つ星ホテルのメインシェフが考案したと言ってもいいほどのクオリティだろう。
パティシエを目指してるのか?お前は。

「ありがとうございます…えへへ」

店長や鈴音からの大絶賛を受け、今年のクリスマスデザートはこれで行くことに決定した。
なお俺の案は今年も鈴音に負けまさかの最下位。
粉雪が漂う雪国の地面を意識し、ふっくら焼き上げたスポンジにクリームを塗っただけの真っ白なケーキ。
具はない。
何事もシンプルイズベストなはずだが、何がいけなかったのだろうか。
一方でりょうやの案は、いちごをふんだんに使い、サンタカラーをイメージしたとのこと。
チョコレートや他の果物も使い、プレゼントまで再現している。
サンタクロースも大変だな。こんなところにまで出張とは。

しかし…、サンタクロースを意識したケーキとは。
りょうやはまさかサンタを信じている…と考えるのも無理はない。
ショタはいつまでもサンタを信じる生き物と店長は語る。

「あのピュアな心は、大人のようにどす黒くて汚い現実を想像しているのではなく、明るくて希望のある未来なんだよ。」

やかましい以外の何者でもないが、気になった俺はりょうやに聞いてみることにした。

「サンタクロース?そんなのいるわけないじゃないですか。」

「えっ」

「小学校3年生ぐらいまでは信じてましたけどね。」

「…」

清々しい笑顔で言われると、こちらまで気分がせいぜいする。
少しだけ期待していた俺が恥ずかしい。

続く
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