1週間梅雨日記

のりたまご飯

文字の大きさ
上 下
5 / 5

金曜日

しおりを挟む
金曜日。
今日も雨だ。学校の最後の日だというのに、雨だ。
本当いい加減にしてほしい。

今日は紺色の傘を持ってきていない。
何を考えたのか、僕は神野の話を信じてしまったのだ。
本当にどうしてこうなってしまったのだろう。

今日の朝、外はそれほど大きな雨ではなかったので、
傘を忘れても全然登校はできた。
だけど、どうしてあいつなんかの言いなりに…

あいつは告白だかなんだか言っていたが、絶対にそれはできない。
そんなの無理だ。

第一木野だって、傘を持ってきているわけ…



バリバリ持ってた。

「あっ…」

「…ごめん…傘忘れたから入れて」


今日も雨は降っていた。
水曜日みたいに大きくもなく、昨日みたいに小さくもない、普通の雨。

そんな雨の中、僕たちはゆっくりと歩いていた。
正直気まずい。めっちゃ気まずい。

僕からも声をかけられないし、ましてや木野から声をかけられることなんてない。
そう思っていると、

「ごめん」

「えっ、」

「水曜日のこと。ごめん」

謝った。木野が謝った。
僕は目が点になったような気がした。

「えっとえっと…僕も、ごめん!」

「…うん、ごめん。」

木野がニコッと笑うと、僕も釣られて、笑顔になった。

「じゃ、これで仲直りだな。」

「…うん。」

とまあこんな感じで、僕らは仲直りをした。
なんとも内容の薄い、ペラペラとした内容だった。
もっと感情的な仲直りを期待した皆様、ごめんなさい。


普通仲直りをしたんだから、ここは晴れて虹が出るようにしてくれよ、
と神様に言いたかったのだが、雨は強くなる一方だ。
それとともに、冷たい風も吹いてきた。

「さむっ…」

そう言えば今日は体育の授業で、そのままの体育着だった。
半袖半ズボンだと、冷たい風が肌に直に吹き付ける。

「大丈夫か?」

「う、うん…、、」

強がって大丈夫、なんて言ってしまったが、正直大丈夫じゃない。
肩をさする手を下ろして、痩せ我慢をしながら歩く。

10歩ぐらい歩いたところで、木野が立ち止まった。
それに釣られて僕も立ち止まった。

木野は黒い鞄を下ろし、きていたジャージのファスナーをおろすと、そのまま僕の体にかけてくれた。

「えっ、、、」

「寒いんだろ…?」

「…」

僕は返事ができなかった。
木野の匂いがぶわっと香り、僕の心臓はどくどくと、明らかに早く鼓動しているのが自分でもわかった。
その同時に、冷たい風なんてどうでも良くなるほどの温かみが、僕の体を包んだ。

「ほら、これで大丈夫」

「で、でも木野が…」

「オレは大丈夫。河合があったくなればいいの。」

「…ありがと」

「ん。ほら行くぞ」

「うん」

雨なんてどうでも良い。
梅雨なんてなんてもない。

やっぱり僕は、こいつが好きなんだと、改めて思った。


「あのさ…」

「ん?」

木野が僕を家の前まで送ってくれた時に、僕は声をかけた。

「めっちゃおかしいかもしれないけど…」

「?」


「…ずっと好きでした!付き合ってください!」


と、声に出してしまった。
その瞬間、降り続いていた雨がまるで止まったみたいな感覚が僕を襲った。
告白、一人がもう一人に、想いを伝えるために言う一言。

それはただの一言でも、大事な一言であり、勇気を出して、気持ちを込めないといけない一言。
そんな一言を、僕は声に出してしまった。

「…」

木野の顔は見えない。僕はただ、木野の差してくれる傘の下で頭を下げていた。
なんて言われるだろうか、断られるだろうか、迷惑だろうか…

いろんな思いが頭の中を駆け巡る。
ただ、そんな思いもすぐに吹っ飛んでいった。

「えっとさ…オレ、男から…告白されたことって…ないんだけど…さ、」

顔をちょっとだけ上げると、そこには顔を赤くした木野が立っていた。

「河合なら、全然いい気がする。」

「…それって、、」

「なんていうか…よろこん…で?」

「…ほんと!?」

曇っていた心が一気に晴れた。
ただ、雨は一向に降り止まない。

まあ、たまには雨もいいか。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

蜜葉

夏蜜
BL
非日常的な彼等の日常。

逃げられない罠のように捕まえたい

アキナヌカ
BL
僕は岩崎裕介(いわさき ゆうすけ)には親友がいる、ちょっと特殊な遊びもする親友で西村鈴(にしむら りん)という名前だ。僕はまた鈴が頬を赤く腫らせているので、いつものことだなと思って、そんな鈴から誘われて僕は二人だけで楽しい遊びをする。 ★★★このお話はBLです 裕介×鈴です ノンケ攻め 襲い受け リバなし 不定期更新です★★★ 小説家になろう、pixiv、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、fujossyにも掲載しています。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

処理中です...