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第1章 移住
1学期最終日
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それからはというものの、引越しに向けての話は早かった。
転校の準備や引越し業者の手配。
休日は荷物をまとめるのに忙しすぎてもはや鉄道どころじゃなかった。
夏休みまであと2日。ほとんどのものがなくなった部屋には、プラスチックの小さな机と布団が残されていた。
父さんの仕事はかなり急のようで、急いで準備をしないと仕事に間に合わないみたい。
今日出された算数の宿題を終わらせると、リビングにでて窓から駅を見下ろした。
時刻は既に8時を回っており、暗闇に包まれた空の下でも、夜の街は忙しそうに灯を灯している。
もちろん駅からも、車窓から光を漏らした電車が発車していくところである。
そんな街を眺めていると、ここから離れることになることを実感してしまい、少し寂しい気持ちになる。
もちろん新しい街に期待がないわけでもないが、寂しさがより上回っている。
「晴翔~、ご飯食べるよ~」
母さんに呼ばれ、簡易な食卓に向かうと、買ってきたスーパーの弁当を黙々と食べ始めた。
そして次の日になると、今の学校の最後の登校日。
いつものようにランドセルを背負って、エレベーターに乗って下に降りていく。
玄関から出ると、むっとした暑い空気にふれる。
「あっつ…」
と思いながらも、今日が最後だからと、通学路をもう一度見ておこうと思った。
友達と遊んだ近くの公園や、帰り道にたまによるコンビニ。
これまでの記憶が蘇ってくると、思わず涙が込み上げてくる。
学校に着くと、クラスのみんなから別れの言葉などを言われた。
泣いていたやつもいた。もちろん僕も。
「晴翔とのお別れ会」っていうサプライズもあって、最後の日を充実して送れたような気がする。
帰り道はいつもの友達のメンバーで長い間しゃべったりしていた。
6時ぐらいになると、流石に空も暗くなってきたので、お別れの言葉とかを言って解散。
そのまま家に帰るのもよかったけど、どうせなら駅によってから。
「ピ~ンポ~ン」
と音が鳴る改札機に80円の入場券を通し、コンコースからホームに降りる。
相変わらず慌ただしそうな人々が行き交う大きな駅だが、いつも見ていた風景の一つでもある。
「1番線に、普通、~~行きの電車がまいります…」
と、アナウンスが流れ、少しすると真ん中にオレンジ色の線が入った電車が勢いよく入線してきた。
風を切り裂き入線してきた電車は、いつもと違って少し寂しく感じられた。
ドアが開くと、人々が波のように中へと入り、満員列車になる。
「~~~♪」
聴き慣れた発車メロディーがなると、ドアが閉まる。
インバータがういいいいんと、音を立てると、電車がゆっくり発車して行った。
今までの思いと、そして、新たな地への希望が、そこに詰まっていたような気がした。
続く
=専門用語解説=
・入場券
駅に入るだけで何も乗らない、という場合には、入場券が必要である。
それを改札に通すと、電車には乗れないが駅の中を撮影したり、立ち食いそばを食べに行ったりなどができる。
・発車メロディー
文字の通り、発車する時に流れるメロディーである。
場所によって違う音楽が流れ、駅によってはご当地メロディーが流れることがある。
なお、メロディーがなり終わってからの駆け込み乗車は危険のため、しないようにしていただきたい。
(これの後に電車がない!などの場合は迷惑をかけずに!!)
転校の準備や引越し業者の手配。
休日は荷物をまとめるのに忙しすぎてもはや鉄道どころじゃなかった。
夏休みまであと2日。ほとんどのものがなくなった部屋には、プラスチックの小さな机と布団が残されていた。
父さんの仕事はかなり急のようで、急いで準備をしないと仕事に間に合わないみたい。
今日出された算数の宿題を終わらせると、リビングにでて窓から駅を見下ろした。
時刻は既に8時を回っており、暗闇に包まれた空の下でも、夜の街は忙しそうに灯を灯している。
もちろん駅からも、車窓から光を漏らした電車が発車していくところである。
そんな街を眺めていると、ここから離れることになることを実感してしまい、少し寂しい気持ちになる。
もちろん新しい街に期待がないわけでもないが、寂しさがより上回っている。
「晴翔~、ご飯食べるよ~」
母さんに呼ばれ、簡易な食卓に向かうと、買ってきたスーパーの弁当を黙々と食べ始めた。
そして次の日になると、今の学校の最後の登校日。
いつものようにランドセルを背負って、エレベーターに乗って下に降りていく。
玄関から出ると、むっとした暑い空気にふれる。
「あっつ…」
と思いながらも、今日が最後だからと、通学路をもう一度見ておこうと思った。
友達と遊んだ近くの公園や、帰り道にたまによるコンビニ。
これまでの記憶が蘇ってくると、思わず涙が込み上げてくる。
学校に着くと、クラスのみんなから別れの言葉などを言われた。
泣いていたやつもいた。もちろん僕も。
「晴翔とのお別れ会」っていうサプライズもあって、最後の日を充実して送れたような気がする。
帰り道はいつもの友達のメンバーで長い間しゃべったりしていた。
6時ぐらいになると、流石に空も暗くなってきたので、お別れの言葉とかを言って解散。
そのまま家に帰るのもよかったけど、どうせなら駅によってから。
「ピ~ンポ~ン」
と音が鳴る改札機に80円の入場券を通し、コンコースからホームに降りる。
相変わらず慌ただしそうな人々が行き交う大きな駅だが、いつも見ていた風景の一つでもある。
「1番線に、普通、~~行きの電車がまいります…」
と、アナウンスが流れ、少しすると真ん中にオレンジ色の線が入った電車が勢いよく入線してきた。
風を切り裂き入線してきた電車は、いつもと違って少し寂しく感じられた。
ドアが開くと、人々が波のように中へと入り、満員列車になる。
「~~~♪」
聴き慣れた発車メロディーがなると、ドアが閉まる。
インバータがういいいいんと、音を立てると、電車がゆっくり発車して行った。
今までの思いと、そして、新たな地への希望が、そこに詰まっていたような気がした。
続く
=専門用語解説=
・入場券
駅に入るだけで何も乗らない、という場合には、入場券が必要である。
それを改札に通すと、電車には乗れないが駅の中を撮影したり、立ち食いそばを食べに行ったりなどができる。
・発車メロディー
文字の通り、発車する時に流れるメロディーである。
場所によって違う音楽が流れ、駅によってはご当地メロディーが流れることがある。
なお、メロディーがなり終わってからの駆け込み乗車は危険のため、しないようにしていただきたい。
(これの後に電車がない!などの場合は迷惑をかけずに!!)
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