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第四章 生まれた子どもたちの行方~その二
両親の離婚⑸
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【両親の離婚⑸】
「何これ、うちの静岡の実家みたいじゃない!」
夜9時頃に帰ってきたB子は驚いていた。E郎が用意したメニューはご飯に豚汁、卵焼きに鱈を焼いたものだった。
「ご飯は残りがあったし、あとは適当に。」
E郎は照れ笑いをしている。
「いただきます……うそ、美味しい!」
B子は貪るように食べている。夜遅くまで仕事をしてお腹が空いていたというのもあったが、何よりもE郎の作った料理が予想外に美味だったのだ。
「これ、どうやって作った?!」
「どう、って、ネットに落ちてるレシピ通りだよ。」
B子は解せないという顔をした。
「ママもレシピ通りに作ってるんだけど、何が違うのかな?」
E郎は、「絶対生イワシカレーのレシピは落ちてない」と思いつつ、こう言った。
「このくらいなら毎日できるし、豚汁もまだ残ってるから明日の朝食べられるからさ、僕にご飯は任せてくれる?」
「E郎料理長、お願いします!」
B子は両手を合わせた。
それからのE郎の生活は快適至極だった。確かに、「夕飯を作る」というミッションは追加されたが、B子は平日日中は仕事でいないので気が楽だったし、夜帰ってきても「今日は学校どうだった?」と尋ねる程度で、A雄や祖母のような不必要な詮索はしないのだった。
ある休みの日、E郎はα秀を自宅に招いてB子に会わせた。
「これが親友のα秀。僕の相談に乗ってくれて、ここに来ることも後押ししてくれたんだ。」
「初めまして! いやー、お母さん、綺麗っすね。」
α秀はなぜかB子をおだてたが、B子にはあまり響かなかったようだ。
「α秀くん、うちのE郎はちょっと父親似で弱いところがあると思ってたけど、しっかりしてきたのはα秀くんのおかげかな? これからもよろしくね!」
B子はα秀と握手した。α秀はデレデレしていた。
「E郎、ママ将軍、美人じゃないか!」
月曜日の朝、学校でα秀はB子を褒めちぎった。
「綺麗で性格が男前で、仕事ができてお金がある。最高だな、おい。」
E郎は付け足した。
「しかし、料理はダメ。ってか、そんなに綺麗か? 普通のおばさんじゃないか??」
「E郎は家族だしお子ちゃまだからママ将軍の魅力が分からないんだ。俺もあんなキツめの美熟女に飼われてみたい!」
「変態、黙れ。」
E郎は、結局、学校の授業とネットラーンニングのみで受験勉強を突破し、長崎大学の水産学部に行くことになった。途中、B子が予備校に行かせてあげようかと言ったが断った。
「そこまでガチガチに勉強していい大学に行こうとは思わないんだ。地方の大学でのんびりしたい。」
「まあ、それもE郎らしくていいわね。」
B子は笑った。
ちなみにα秀は鉱山学が勉強したいと親に言って秋田大学を受験したが、不合格となり浪人することになった。
「なんで別の大学も受けなかったんだ?」
「絶対に出会いたいんだよ、秋田美人に!」
「お前は本当に……。」
E郎は苦笑いした。
E郎が長崎に立つ日、羽田までB子とα秀が着いてきた。
「E郎、長い休みのときには戻ってきて、またご飯作ってね。」
「うん。」
α秀はE郎に小声で言った。
「ちょくちょく戻らないと、俺、ママ将軍とどうにかなってるかもしれんぞ。」
「バカか! α秀は勉強しろよ。」
「まあそれは冗談だが、時々はママ将軍に電話しろよ。絶対内心寂しがってるぞ。」
「分かってる。」
「彼女ができても、だぞ。」
「分かってる。」
長崎空港へ向かう便は、出発時刻が迫っていた。
「じゃあ、みんな元気でね。」
E郎は二人に手を振った。α秀は大きく手を振り返したし、B子は顔の横で軽く手を振った。出発ゲートを通過したとき、α秀は言った。
「頑張れ、不撓不屈の精神だ!」
ちなみに、E郎がα秀から四文字熟語を聞いたのはこれが最後だった。α秀はその年、事故で亡くなった。
「何これ、うちの静岡の実家みたいじゃない!」
夜9時頃に帰ってきたB子は驚いていた。E郎が用意したメニューはご飯に豚汁、卵焼きに鱈を焼いたものだった。
「ご飯は残りがあったし、あとは適当に。」
E郎は照れ笑いをしている。
「いただきます……うそ、美味しい!」
B子は貪るように食べている。夜遅くまで仕事をしてお腹が空いていたというのもあったが、何よりもE郎の作った料理が予想外に美味だったのだ。
「これ、どうやって作った?!」
「どう、って、ネットに落ちてるレシピ通りだよ。」
B子は解せないという顔をした。
「ママもレシピ通りに作ってるんだけど、何が違うのかな?」
E郎は、「絶対生イワシカレーのレシピは落ちてない」と思いつつ、こう言った。
「このくらいなら毎日できるし、豚汁もまだ残ってるから明日の朝食べられるからさ、僕にご飯は任せてくれる?」
「E郎料理長、お願いします!」
B子は両手を合わせた。
それからのE郎の生活は快適至極だった。確かに、「夕飯を作る」というミッションは追加されたが、B子は平日日中は仕事でいないので気が楽だったし、夜帰ってきても「今日は学校どうだった?」と尋ねる程度で、A雄や祖母のような不必要な詮索はしないのだった。
ある休みの日、E郎はα秀を自宅に招いてB子に会わせた。
「これが親友のα秀。僕の相談に乗ってくれて、ここに来ることも後押ししてくれたんだ。」
「初めまして! いやー、お母さん、綺麗っすね。」
α秀はなぜかB子をおだてたが、B子にはあまり響かなかったようだ。
「α秀くん、うちのE郎はちょっと父親似で弱いところがあると思ってたけど、しっかりしてきたのはα秀くんのおかげかな? これからもよろしくね!」
B子はα秀と握手した。α秀はデレデレしていた。
「E郎、ママ将軍、美人じゃないか!」
月曜日の朝、学校でα秀はB子を褒めちぎった。
「綺麗で性格が男前で、仕事ができてお金がある。最高だな、おい。」
E郎は付け足した。
「しかし、料理はダメ。ってか、そんなに綺麗か? 普通のおばさんじゃないか??」
「E郎は家族だしお子ちゃまだからママ将軍の魅力が分からないんだ。俺もあんなキツめの美熟女に飼われてみたい!」
「変態、黙れ。」
E郎は、結局、学校の授業とネットラーンニングのみで受験勉強を突破し、長崎大学の水産学部に行くことになった。途中、B子が予備校に行かせてあげようかと言ったが断った。
「そこまでガチガチに勉強していい大学に行こうとは思わないんだ。地方の大学でのんびりしたい。」
「まあ、それもE郎らしくていいわね。」
B子は笑った。
ちなみにα秀は鉱山学が勉強したいと親に言って秋田大学を受験したが、不合格となり浪人することになった。
「なんで別の大学も受けなかったんだ?」
「絶対に出会いたいんだよ、秋田美人に!」
「お前は本当に……。」
E郎は苦笑いした。
E郎が長崎に立つ日、羽田までB子とα秀が着いてきた。
「E郎、長い休みのときには戻ってきて、またご飯作ってね。」
「うん。」
α秀はE郎に小声で言った。
「ちょくちょく戻らないと、俺、ママ将軍とどうにかなってるかもしれんぞ。」
「バカか! α秀は勉強しろよ。」
「まあそれは冗談だが、時々はママ将軍に電話しろよ。絶対内心寂しがってるぞ。」
「分かってる。」
「彼女ができても、だぞ。」
「分かってる。」
長崎空港へ向かう便は、出発時刻が迫っていた。
「じゃあ、みんな元気でね。」
E郎は二人に手を振った。α秀は大きく手を振り返したし、B子は顔の横で軽く手を振った。出発ゲートを通過したとき、α秀は言った。
「頑張れ、不撓不屈の精神だ!」
ちなみに、E郎がα秀から四文字熟語を聞いたのはこれが最後だった。α秀はその年、事故で亡くなった。
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