男の妊娠。

ユンボイナ

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第二章 人生色々、妊娠色々

男子高校生の妊娠・中絶

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 「H介くん、ついに妊娠したんだってさ。」
朝、G子が登校すると、クラスメイトのI美にそう告げられた。
「母親は誰だか分からないんだって。」
「え、H介くんってそんなにもてたっけ?」
G子が疑問に思っていると、I美は笑った。
「知らないの、H介くんったら、年上の女の人からお金もらってそういうことをしてたんだよ。」
今でいう「ママ活」である。
 男女平等が進んだ24世紀の日本では、男子高校生による売春が社会問題化していた。もちろん、男子高校生側にも妊娠のリスクがあることから、通常は避妊をしっかりと行うのであるが、たまに避妊が万全でなかったり、避妊の知識が足りなかったりして、妊娠する者もいた。
「せっかくお金もらっても中絶費用で消えるよね。しかも、学校にバレたら退学。リスキーだわ。」
I美が鼻で笑っている。G子は空いたH介の席を見つめた。そういえば、H介は昨日から学校に来ていない。

 夕方、学校が終わり、G子がスカイカーならぬスカイスクーターで帰宅していると、産婦人科病院からH介が出て来るところを見た。G子は地上に降りてH介に声を掛けた。
「H介くん! 妊娠したって本当?」
H介は暗い顔をしていた。
「ああ、もう噂になってるんだな。ちょっとした小遣い稼ぎのつもりだったが、痛い目に遭ったよ。昨日手術して今日退院した。」
 男性が出産する場合、産み落とす穴がないため、必然的に帝王切開になるのは前に説明した通りだ。では、中絶手術はどうするかというと、やはりお腹に穴をあけて胎児を取り出すことになる。
 もちろん、胎児があまり育っていないうちなら、あける穴も小さくて済む。しかし、比較的育ってしまうと帝王切開とほぼ同レベルの手術になったしまうのだった。
「ほら、男は女と違って生理がないだろ? だから妊娠に気づくのが遅れるケースが多いんだって医者が言ってた。俺は幸いつわりで気がついたんだけど、もうそのときには妊娠3か月になってたんだな。」
「そっか。」
「3か月もするとさ、人の形になって胎児に顔ができてるんだよ。俺、手術のときに絶対に胎児を見ないようにしようと思ってたんだけど、見えちゃったんだ。今、俺、罪悪感の塊。」
H介は近くに落ちていた小石を蹴っ飛ばした。
「仕方ないよ、誰が母親か分からないんじゃ育てられないでしょ?」
何となくG子は姉のC子のことを思い出していた。
「そうなんだけどさ、中絶したことがある奴じゃないと分からないよ、この気持ちは。」
「そっか。」
「俺、退学になるからもう会わないと思うけど、バイバイ。」
H介は小さく手を振った。
「元気でね。」
G子はH介が歩き出すのを見ると、スカイスクーターのスイッチを入れて浮上した。

 G子が帰宅すると、牛舎ではC子が夕方の餌やりをしていた。
「ただいま。」
「おかえりなさい! どうしたの、沈んだ顔をして。」
G子はこの話をC子にすべきかどうか悩んだが、思い切って話すことにした。
「同級生の男の子が妊娠して中絶手術したの。」
「あらら。大変ね。」
「たまたまさっきその子に会ってね、すっごく落ち込んでた。私、中絶したことないから、気持ちが分からなくて慰めようがないし。」
C子は腕組みをしていた。
「中絶はしないに越したことはないのよ。」
「そうなんだけどさ。」
G子は、「中絶するとどんな気持ちになるの?」と言いそうになったが、さすがにそんなことは実の姉でも聞けなかった。
「私の言うことじゃないけど、あんたも気をつけなさいよ。男だけが妊娠するんじゃないんだから!」
「はーい。」
G子は返事をすると牛舎を離れて自宅に入った。自室でパソコンを開くと、3か月の胎児がどのようものかを調べた。確かに人の形をしていて、顔のようなものもできている。
「確かに、これは凹むわ。」
G子はパソコンの画面を消して、ベッドに寝転んだ。好きな男の子がいないわけでもないのだが、お腹が大きくなった彼の姿はあまり想像したくない。
「やっぱり、セックスはしたくないや。」
G子は布団を被った。そして、母親に夕飯に呼ばれるまで仮眠した。
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