80 / 80
師匠のおうちは
しおりを挟む
「じゃあ、家の形は?」
「形状に特徴を持たせるっていうざっくりした風習があるらしいね。もちろん厳密なルールではないようだけど、全体的に丸っこいとか、高いとか、鱗模様とか、貝が埋め込んであるとか、何かしら特徴があるだろう?」
「あー、なるほどな! のっぽの赤い家! とか一目でわかるようにってことか」
アルマさんの説明に、コーチが納得! と頷く。
「本当に実用的な理由なのね。靄がかかってもわかりやすいっていうのが全ての基準なのに、結果的にオシャレな街並みになるだなんて、なんだか面白いわね」
「ということは俺が目指すのは、あの真っ青な、縦にひょろ長い建物だな!」
リーナさんがまだまだ楽しそうに建物たちを眺めているのに、コーチときたらもう飽きたらしい。
まあ、あの青い建物、剣のマークついてるもんね。多分武器屋さんだから、そりゃあ早く行きたいよね……。
「はいはい」
アルマさんも苦笑しつつ、ポシェットからお財布を取り出している。
「はい、この予算内ならお好きにどうぞ」
「うおおおおおお! アルマ、ふとっぱら!」
「活躍してくれたからね」
そう、コーチがいなかったら、あたしだって今頃ここにいることさえできなかったんだもんね……。その結果、剣までなくしちゃったんだから、ぜひともスッゴイ剣を手に入れて欲しい。
「無駄遣いしちゃダメよ」
「子供か。分かってるっつうの」
アルマさんから手渡されたコインと紙幣を見て、リーナさんが注意すれば、コーチは唇を尖らせて反論する。その反抗的な態度がすでに子供っぽいと思うんだけど。
ただ、残念なことにでっかくて筋肉もりもりだから子供のように可愛らしくはない。
「トマは武器だけは時間かけて選ぶからねぇ、僕はその間に師匠のところに行ってくるよ」
「おー、行ってこい! スラ吉のこと、色々聞くんだろ?」
「ああ、師匠なら有効な話が聞けると思うんだ」
「剣買ったら俺も行くからよ、どの家目指せばいい?」
そう言われた途端、アルマさんの顔が微妙に気まずそうに歪んだ。
「……あの、異彩を放ってる、真っ黒な」
「おーあれか! あの、ガーゴイルみたいなおどろおどろしい屋根飾りの!」
「プチ魔王城みたい」
本当だ。遠くからでもよくわかる。だって、真っ黒い建物なんて他にないし、でっかい歪んだ樹もあるし、建物もちっちゃなお城みたいな形。
確かに、他の建物とは路線が違う。
「ファンシーな町の中で、圧倒的な違和感ね」
「こりゃー師匠ってのは変わりモンなんだろうなぁ! 会うのが楽しみだ」
「形状に特徴を持たせるっていうざっくりした風習があるらしいね。もちろん厳密なルールではないようだけど、全体的に丸っこいとか、高いとか、鱗模様とか、貝が埋め込んであるとか、何かしら特徴があるだろう?」
「あー、なるほどな! のっぽの赤い家! とか一目でわかるようにってことか」
アルマさんの説明に、コーチが納得! と頷く。
「本当に実用的な理由なのね。靄がかかってもわかりやすいっていうのが全ての基準なのに、結果的にオシャレな街並みになるだなんて、なんだか面白いわね」
「ということは俺が目指すのは、あの真っ青な、縦にひょろ長い建物だな!」
リーナさんがまだまだ楽しそうに建物たちを眺めているのに、コーチときたらもう飽きたらしい。
まあ、あの青い建物、剣のマークついてるもんね。多分武器屋さんだから、そりゃあ早く行きたいよね……。
「はいはい」
アルマさんも苦笑しつつ、ポシェットからお財布を取り出している。
「はい、この予算内ならお好きにどうぞ」
「うおおおおおお! アルマ、ふとっぱら!」
「活躍してくれたからね」
そう、コーチがいなかったら、あたしだって今頃ここにいることさえできなかったんだもんね……。その結果、剣までなくしちゃったんだから、ぜひともスッゴイ剣を手に入れて欲しい。
「無駄遣いしちゃダメよ」
「子供か。分かってるっつうの」
アルマさんから手渡されたコインと紙幣を見て、リーナさんが注意すれば、コーチは唇を尖らせて反論する。その反抗的な態度がすでに子供っぽいと思うんだけど。
ただ、残念なことにでっかくて筋肉もりもりだから子供のように可愛らしくはない。
「トマは武器だけは時間かけて選ぶからねぇ、僕はその間に師匠のところに行ってくるよ」
「おー、行ってこい! スラ吉のこと、色々聞くんだろ?」
「ああ、師匠なら有効な話が聞けると思うんだ」
「剣買ったら俺も行くからよ、どの家目指せばいい?」
そう言われた途端、アルマさんの顔が微妙に気まずそうに歪んだ。
「……あの、異彩を放ってる、真っ黒な」
「おーあれか! あの、ガーゴイルみたいなおどろおどろしい屋根飾りの!」
「プチ魔王城みたい」
本当だ。遠くからでもよくわかる。だって、真っ黒い建物なんて他にないし、でっかい歪んだ樹もあるし、建物もちっちゃなお城みたいな形。
確かに、他の建物とは路線が違う。
「ファンシーな町の中で、圧倒的な違和感ね」
「こりゃー師匠ってのは変わりモンなんだろうなぁ! 会うのが楽しみだ」
0
お気に入りに追加
191
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(10件)
あなたにおすすめの小説
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~
すなる
ファンタジー
ゼネコン勤務のサラリーマンが祖父の遺品を整理している中で突如異世界に転移してしまう。
若き日の祖父が言い残した言葉に導かれ、未知の世界で奮闘する物語。
魔法が存在する異世界で常識にとらわれず想像力を武器に無双する。
人間はもちろん、獣人や亜人、エルフ、神、魔族など10以上の種族と魔物も存在する世界で
出会った仲間達とともにどんな種族でも平和に暮らせる街づくりを目指し奮闘する。
その中で図らずも世界の真実を解き明かしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
なんかスライム増えて、チビ達に個々に名前まで付けてもらえて羨まし……
アルマさん、スラちゃんにも名前つけてあげて下さい。(切実)
スラちゃんは、それがお名前なのです…!
テイム?されたスライム目線の育成物語!
健気にガンバるスライムがとってもかわいい!!
「あたしスライム。強くなります!」
って感じがとても好き。
スラちゃん頑張って!!
ありがとうございますー!
スラちゃん、頑張ります!!!
可愛いスライムのファンになりました。更新楽しみにしてます。
最近の癒やし。読んでると心がほっこりします。か、可愛い!!
書いてる私もスラちゃんには癒されるのです…!
スライムかわいい