上 下
74 / 80

やってやる!!!!

しおりを挟む
リーナさんの叫びに、アルマさんの手元の炎が一瞬で搔き消える。

悔しそうな、焦燥感に満ちたアルマさんの顔が見えた途端、あたしの核がキュウっと震えた。

アルマさんが、アルマさんが、死んじゃいそうな顔してるじゃないの!

……あたしが、あんな顔させてるんだ。

みんなに心配かけてる場合じゃないでしょ、あたし。


やってやる!!!!

やってやるよ、こんちくしょー!!!


あたしの中で、いきなりかつてないほどの闘志が芽生える。核が、燃えるように熱かった。


海の魔物のデッカイお口がグングンと迫ってくるのに、不思議、もう怖くはない。凶暴そうな乱ぐい歯が、夜の森みたいに黒い喉の奥が間近に迫ってくるのを、あたしは不退転の決意で待ち受ける。

海の魔物がひときわ大きく口を開く。吸い込まれるような感覚に、あたしは身を任せた。


「スラちゃん!」


みんなの絶叫が聞こえる。

大丈夫、あたし、きっと生きて帰るから。

吸い込まれ、ついに乱ぐい歯を越して海の魔物の口内に入った瞬間。あたしは歯の一本に一生懸命巻き付いた。

これなら、足場ができる。

そう、あたしはそれを狙っていた。だって空じゃ踏ん張れない。足場にしっかり力点を置いて、あたしは思いっきり振りかぶる。


どおおおおぉおおぉぉりゃあああぁぁぁぁ!!!!! くらえ!!!!!


トゲトゲナックルを、全力で海の魔物の喉めがけて叩きつける。

深々と、ナックルのトゲが肉にめり込む。その感触がいやに生々しい。今あたしにできる最高のパンチが、その巨大な喉に突き刺さっていた。

一瞬動きがとまった巨体が、次の瞬間めちゃくちゃにのたうち始める。


や、やめて……!


体がぐるんぐるんに振り回されて、目が回る……! 一瞬でも気を抜くと、真っ暗な喉の奥に落っこちてしまいそう。

あたしは必死ででっかい歯にしがみつく。生臭い巨大なベロまでもが何度も体をかすめて、あたしはもう生きた心地がしなかった。

グオオオオオ…………! という地響きみたいな呻きが喉の奥から響いてきて、天地がまわるようなめちゃくちゃな動きがやっとおさまる。

ほっと息をついて辺りをみまわせば、明るい方に真っ青なお空が見えた。


今だ!

あたしは思いっきり振りかぶって、もう一回喉の奥に強烈なパンチをお見舞いしてからその反動をつかって魔物の口から飛び出す。

攻撃をくらった魔物が痛みに動きを止めるのは本当に一瞬だ。この瞬間を利用しない手はない。

あたしは魔物の硬い鱗を足場に、力の限りジャンプする。


少しでも早く、アルマさん達の元へ戻りたかった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

閃くソトアオの翼 悪役令嬢ですけど、戦争だから悪役やってる場合じゃない! 

ブラックウォーター
恋愛
気がつけば、異世界の悪役令嬢エスメロード予備役一等空尉に転生していた。 が、突然戦争が始まって、意地悪なんかやってる場合ではない。 貴族のお嬢様でありながら操縦幹を握り、敵を迎え撃つ。 また、テクノロジーはともかく、軍の組織や戦略が前時代的なところも改革していくべし。 え?あの、結婚してくれと言われても・・・。 大活躍のエスメロードに男が群がる群がる。 軍人である悪役令嬢が前世の記憶を取り戻し、パイロットとして活躍して、否応なしにモテフラグを立てまくるお話しです。 完結いたしました。 読んで頂いた皆様には、心からお礼申し上げます。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す

SO/N
ファンタジー
主人公、ウルスはあるどこにでもある小さな町で、両親や幼馴染と平和に過ごしていた。 だがある日、町は襲われ、命からがら逃げたウルスは突如、前世の記憶を思い出す。 前世の記憶を思い出したウルスは、自分を拾ってくれた人類最強の英雄・グラン=ローレスに業を教わり、妹弟子のミルとともに日々修行に明け暮れた。 そして数年後、ウルスとミルはある理由から魔導学院へ入学する。そこでは天真爛漫なローナ・能天気なニイダ・元幼馴染のライナ・謎多き少女フィーリィアなど、様々な人物と出会いと再会を果たす。 二度も全てを失ったウルスは、それでも何かを守るために戦う。 たとえそれが間違いでも、意味が無くても。 誰かを守る……そのために。 【???????????????】 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー *この小説は「小説家になろう」で投稿されている『二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す』とほぼ同じ物です。こちらは不定期投稿になりますが、基本的に「小説家になろう」で投稿された部分まで投稿する予定です。 また、現在カクヨム・ノベルアップ+でも活動しております。 各サイトによる、内容の差異はほとんどありません。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...