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とほほ……
しおりを挟むナックルをパンチする辺りに仕込んではみたけれど、困った事が分かった。
練習の成果で、重石なしでも威力のあるパンチを繰り出せるようになっていたというのに、このナックル自体が結構重いもんだから、パンチを繰り出すとそっちに重心が偏っちゃって、結果重石がなくっちゃ体自体がパンチに引っ張られちゃうんだ。
でも、重石もナックルも両方体の中に入れてたらすっごく重いし、なにより絶対薬草が潰れちゃう。だって両方とも結構な大きさなんだもの……。
あたしは重石とナックルの真ん前で、途方にくれてしまった。
「スラ吉、そんなお前にプレゼントだ」
声の方を見たら「どうだ!」と言わんばかりの得意げな顔で、仁王立ちのコーチが居た。
「言っとくけど俺の小遣いで買ったんだからな、感謝しろよ!」
そう言ってコーチがあたしの頭上から何かを落とす。
それは、あたしの真横にゴスッという、えげつない音を立てて着地した。
な、なんだろうコレ。あたしと同じ若草色の、半円形の物体。音は凄く重そうだったけど……。
おずおずとそれに近づいて、ちょっと押してみたけどビクともしない。見た目の大きさよりも随分と重たい物みたい。肌触りはつるっとしてるけど冷たくて、ちょっとナックルを触った時みたいにヒンヤリするから、金属なのかな?
「それは錘だ」
「スイって、武器の?」
アルマさんがそう聞いてくれて、あたしは初めてコレが武器なんだと知った。
「ああ、本来はその突起の部分に鎖とか通して振り回して使うもんなんだけどな。質量が高いからちっこくっても重いだろ?あの重石デカイからよ、ナックルもあるならジャマかと思って」
「すごーい!まさかトマがそんな気の利くことするなんて!」
リーナさん、酷い。
「だからさっき出かけてたのか、言ってくれれば買ってきたのに」
「ナイフ買うついでにな」
「うわ、自腹で買ったのか」
「アルマ買ってくれなかったじゃんか」
子供みたいに口を尖らせるコーチに、アルマさんが「ごめんごめん」と財布を開ける。どうやらこのパーティーのお財布は、アルマさんががっちりと握っているみたいだった。
「いーよ、今度すげー剣買ってもらうから」
「うわ、高くついた」
そんな風に笑っている二人の傍で、あたしはその錘をそっと体に入れてみた。
お……も……っ……!
重い!
見た目ちっちゃくって卵の半分くらいの大きさなのに、ナックルより重い!!!
もしかしたら重石よりも若干重いかも知れない……。
確かに大きさはコンパクトで、ナックルも一緒に装備してみたけどこれなら薬草は潰れないと思う。
そうなってくると気になるのは重さで、錘とナックル両方の重さを抱えたまま旅にでるのかと思うとさすがに憂鬱になってしまった。ぶっちゃけ、めっちゃ重い。動くのしんどい。
「あ、平べったくなった」
「重いんじゃない?」
「げ、重すぎたか?」
上から心配げな声が降ってくる。
ハッ!
いかん!不安がってる場合か!
ジョットさんもコーチも、あたしのために準備してくれたんだ! あたしが怖気づいてどうする!
「おお!立ち上がった!」
「頑張れ!スラ吉、お前なら出来る!」
やってやる!やってやるとも!
練習の成果で、重石なしでも威力のあるパンチを繰り出せるようになっていたというのに、このナックル自体が結構重いもんだから、パンチを繰り出すとそっちに重心が偏っちゃって、結果重石がなくっちゃ体自体がパンチに引っ張られちゃうんだ。
でも、重石もナックルも両方体の中に入れてたらすっごく重いし、なにより絶対薬草が潰れちゃう。だって両方とも結構な大きさなんだもの……。
あたしは重石とナックルの真ん前で、途方にくれてしまった。
「スラ吉、そんなお前にプレゼントだ」
声の方を見たら「どうだ!」と言わんばかりの得意げな顔で、仁王立ちのコーチが居た。
「言っとくけど俺の小遣いで買ったんだからな、感謝しろよ!」
そう言ってコーチがあたしの頭上から何かを落とす。
それは、あたしの真横にゴスッという、えげつない音を立てて着地した。
な、なんだろうコレ。あたしと同じ若草色の、半円形の物体。音は凄く重そうだったけど……。
おずおずとそれに近づいて、ちょっと押してみたけどビクともしない。見た目の大きさよりも随分と重たい物みたい。肌触りはつるっとしてるけど冷たくて、ちょっとナックルを触った時みたいにヒンヤリするから、金属なのかな?
「それは錘だ」
「スイって、武器の?」
アルマさんがそう聞いてくれて、あたしは初めてコレが武器なんだと知った。
「ああ、本来はその突起の部分に鎖とか通して振り回して使うもんなんだけどな。質量が高いからちっこくっても重いだろ?あの重石デカイからよ、ナックルもあるならジャマかと思って」
「すごーい!まさかトマがそんな気の利くことするなんて!」
リーナさん、酷い。
「だからさっき出かけてたのか、言ってくれれば買ってきたのに」
「ナイフ買うついでにな」
「うわ、自腹で買ったのか」
「アルマ買ってくれなかったじゃんか」
子供みたいに口を尖らせるコーチに、アルマさんが「ごめんごめん」と財布を開ける。どうやらこのパーティーのお財布は、アルマさんががっちりと握っているみたいだった。
「いーよ、今度すげー剣買ってもらうから」
「うわ、高くついた」
そんな風に笑っている二人の傍で、あたしはその錘をそっと体に入れてみた。
お……も……っ……!
重い!
見た目ちっちゃくって卵の半分くらいの大きさなのに、ナックルより重い!!!
もしかしたら重石よりも若干重いかも知れない……。
確かに大きさはコンパクトで、ナックルも一緒に装備してみたけどこれなら薬草は潰れないと思う。
そうなってくると気になるのは重さで、錘とナックル両方の重さを抱えたまま旅にでるのかと思うとさすがに憂鬱になってしまった。ぶっちゃけ、めっちゃ重い。動くのしんどい。
「あ、平べったくなった」
「重いんじゃない?」
「げ、重すぎたか?」
上から心配げな声が降ってくる。
ハッ!
いかん!不安がってる場合か!
ジョットさんもコーチも、あたしのために準備してくれたんだ! あたしが怖気づいてどうする!
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「頑張れ!スラ吉、お前なら出来る!」
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