31 / 33
私、分からないの
しおりを挟む
「私ね、分からないの」
前に葵ちゃんから「自分の意思で勇者をやる」って、「優香さんは日本に帰ったほうがいいんじゃないのか」って言われてから、本当はずっと考えてた。道中も、この街についてからも。
私は葵ちゃんみたいに、誰かを救いたいなんてこと正直に言うと思ってない。世界を救うなんて大きな事も出来そうにないし、そんな力もないってことは道中の戦闘でしっかりと痛感した。
ただ、一緒にいる人が笑えば嬉しいし、つらそうだと助けてあげたいのは私だって同じだと思う。
実際、この町が少しずつ良くなっていくのだって、すごく嬉しいし楽しい。それは本当の気持ちだ。街のおばちゃんたちだってこの頃は冗談も出るくらい気持ちが元気になってきたし、子どもなんかわーわー走り回ってるくせに、ちゃんと言いつけは真面目な顔で聞いたりするの、ほんとかわいい。
うん、人が幸せそうになる手伝いは、嫌いじゃないよね。
だからかな、私、迷っちゃうんだ。
日本に帰ればそりゃあ生活は全然楽だし、友達だっているし、一緒に暮らすおばさん達だって優しい。
私はきっと頑張ってそれなりにいい高校に行って、働いて、結婚して、子供が出来て、大変な事も幸せな事もたくさんある、平穏な人生をおくる可能性が高いと思う。
でも。
今、私が一番傍にいて、笑っていて欲しいのは葵ちゃんなんだ。
それがどういう感情なのか、まだ分からない。
3年間ずっと見守ってきたからゆえの習慣なのか、それとも……好きになりかけているのか。
葵ちゃんを見守るようになってからずっと、私、葵ちゃんを弟みたいに思っていたの。葵ちゃんが妹と同じ年だからなのかな。
事故で急にいなくなってしまった妹の春香。ひとつ年下の元気で生意気でお洒落が好きな子だった。そりゃあケンカもたくさんしたけど、でも一人ですっごく賑やかだったあの子がいない生活は火が消えたみたいだったよ。
葵ちゃんを見た時にさ、こんな無口な男の子、春香が一緒にいたらきっといっつも口でやり込められちゃうなあって想像したら楽しかった。葵ちゃんの旅に、春香が一緒だったらきっと楽しいのにって、何度か思ったりもしたんだよ?
葵ちゃんは勇敢ですごく強いけど、感情表現は下手でいっつも言いたいことも飲み込んじゃう感じだよね。春香とは真逆で、弟がいたらこんな感じかなあって、いっつも思ってた。
黙り込んだ私を心配そうに見つめる瞳はまっすぐで、なんでも受け止めてくれそうな気がして私はつい頭に浮かんだままを口にする。
前に葵ちゃんから「自分の意思で勇者をやる」って、「優香さんは日本に帰ったほうがいいんじゃないのか」って言われてから、本当はずっと考えてた。道中も、この街についてからも。
私は葵ちゃんみたいに、誰かを救いたいなんてこと正直に言うと思ってない。世界を救うなんて大きな事も出来そうにないし、そんな力もないってことは道中の戦闘でしっかりと痛感した。
ただ、一緒にいる人が笑えば嬉しいし、つらそうだと助けてあげたいのは私だって同じだと思う。
実際、この町が少しずつ良くなっていくのだって、すごく嬉しいし楽しい。それは本当の気持ちだ。街のおばちゃんたちだってこの頃は冗談も出るくらい気持ちが元気になってきたし、子どもなんかわーわー走り回ってるくせに、ちゃんと言いつけは真面目な顔で聞いたりするの、ほんとかわいい。
うん、人が幸せそうになる手伝いは、嫌いじゃないよね。
だからかな、私、迷っちゃうんだ。
日本に帰ればそりゃあ生活は全然楽だし、友達だっているし、一緒に暮らすおばさん達だって優しい。
私はきっと頑張ってそれなりにいい高校に行って、働いて、結婚して、子供が出来て、大変な事も幸せな事もたくさんある、平穏な人生をおくる可能性が高いと思う。
でも。
今、私が一番傍にいて、笑っていて欲しいのは葵ちゃんなんだ。
それがどういう感情なのか、まだ分からない。
3年間ずっと見守ってきたからゆえの習慣なのか、それとも……好きになりかけているのか。
葵ちゃんを見守るようになってからずっと、私、葵ちゃんを弟みたいに思っていたの。葵ちゃんが妹と同じ年だからなのかな。
事故で急にいなくなってしまった妹の春香。ひとつ年下の元気で生意気でお洒落が好きな子だった。そりゃあケンカもたくさんしたけど、でも一人ですっごく賑やかだったあの子がいない生活は火が消えたみたいだったよ。
葵ちゃんを見た時にさ、こんな無口な男の子、春香が一緒にいたらきっといっつも口でやり込められちゃうなあって想像したら楽しかった。葵ちゃんの旅に、春香が一緒だったらきっと楽しいのにって、何度か思ったりもしたんだよ?
葵ちゃんは勇敢ですごく強いけど、感情表現は下手でいっつも言いたいことも飲み込んじゃう感じだよね。春香とは真逆で、弟がいたらこんな感じかなあって、いっつも思ってた。
黙り込んだ私を心配そうに見つめる瞳はまっすぐで、なんでも受け止めてくれそうな気がして私はつい頭に浮かんだままを口にする。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
146
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる