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穴があったら入りたい
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ああもう、穴があったら入りたい。
つい昨日だって女らしさの欠片もなく共に剣を振るっていた私が、柄にもなく顔を赤くしてもじもじしているだなんて、そりゃあそういう顔にもなるだろう。
慌てて立ち上がって、逃げるように王宮の方へと向かおうとしたら、突然腕を掴まれた。
「!」
「待ってくれ、レニー!」
ダグラスの声がなんだか切羽詰まったように感じて思わず振り返ったら、やっぱりすごく苦しそうな顔をしている。
「ダグラス……?」
実は体調でも悪いのか? と思わずダグラスをまじまじと見つめたら、ダグラスは苦しそうな表情のまま小さく呟いた。
「ルシャと結婚なんてしないでくれ……!」
「えっ」
「俺だって! ……俺だってずっとレニーの事が好きだった。殿下との婚約が破棄になって今は気持ちが混乱してるだろうから、もう少しレニーが落ち着いたら打ち明けようと思ってたんだ。それなのに」
一瞬だけ間を置いて、ダグラスは絞り出すように言った。
「それなのに、こんな……!」
頭が真っ白になった。
ダグラスが? 私を? まさかそんな。
「ほ、本気か? だってそんな素振り……」
「殿下の婚約者だったんだぞ、口説けるわけないだろう。本当にずっとずっとレニーの事が好きだった。でも想いが叶う筈もないから、せめて騎士になって、レニーが国母になる国を一緒に守っていけたらって思ったんだ」
知らなかった。ダグラスがそんな事を考えてくれていただなんて。
「レニーと殿下の婚約が破棄になって、やっと俺にもチャンスが巡ってきたと思ってたのに」
「ちょっとー、人のプロポーズにかこつけて告白しないでよ」
「俺だってこんな! ついでみたいなタイミングで言うのは不本意だ!」
唇を尖らせるルシャにダグラスが噛みつく。けれどすぐにルシャから視線を外し、戸惑う私の両手をぎゅっと握りしめて私をまっすぐに見つめてきた。
これまで幾度も剣を交わしてきて、剣の向こうにダグラスの真剣な顔なんていくらも見てきたと思っていたのに、今のダグラスはまるで違う人みたいだ。
「レニー、こんな形で思いを告げることになってごめん。でも、本気だから……俺の事、真剣に考えてくれよな」
「わ、分かった」
「ありがとう」
ふ、とダグラスが微笑む。
見たことが無かったその安心したような優しい笑顔に、思わず言葉を失って見蕩れてしまった。
「はい、そこまで!」
「うわ」
ルシャにぐいっと胸を押されて、完全に油断していたらしいダグラスがちょっとだけよろめいていた。
「邪魔するなよ」
「むしろ言い終わるまで待ってやった僕の心の広さを褒め称えて欲しいくらいだけど」
二人の軽い言い合いを見ていたら、やっと肺に空気が入ってきた気がする。
尊敬している友人二人に立て続けに告白されるだなんて、天地がひっくり返ってもない筈だった出来事に、脳みそがまったくついていかない。
ようやくまともに息が吸えて酸素が身体に回ってきたと思ったところで、ルシャがタイミングを見計らったように腕を差し出してくれる。
「会場に戻るんでしょ。行こ」
「あ、ああ。ありがとう」
にこっと笑いかけられて、少しだけ気持ちがほぐれた。ルシャの笑顔はなんだかこう、安心する。
つい昨日だって女らしさの欠片もなく共に剣を振るっていた私が、柄にもなく顔を赤くしてもじもじしているだなんて、そりゃあそういう顔にもなるだろう。
慌てて立ち上がって、逃げるように王宮の方へと向かおうとしたら、突然腕を掴まれた。
「!」
「待ってくれ、レニー!」
ダグラスの声がなんだか切羽詰まったように感じて思わず振り返ったら、やっぱりすごく苦しそうな顔をしている。
「ダグラス……?」
実は体調でも悪いのか? と思わずダグラスをまじまじと見つめたら、ダグラスは苦しそうな表情のまま小さく呟いた。
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一瞬だけ間を置いて、ダグラスは絞り出すように言った。
「それなのに、こんな……!」
頭が真っ白になった。
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「ほ、本気か? だってそんな素振り……」
「殿下の婚約者だったんだぞ、口説けるわけないだろう。本当にずっとずっとレニーの事が好きだった。でも想いが叶う筈もないから、せめて騎士になって、レニーが国母になる国を一緒に守っていけたらって思ったんだ」
知らなかった。ダグラスがそんな事を考えてくれていただなんて。
「レニーと殿下の婚約が破棄になって、やっと俺にもチャンスが巡ってきたと思ってたのに」
「ちょっとー、人のプロポーズにかこつけて告白しないでよ」
「俺だってこんな! ついでみたいなタイミングで言うのは不本意だ!」
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これまで幾度も剣を交わしてきて、剣の向こうにダグラスの真剣な顔なんていくらも見てきたと思っていたのに、今のダグラスはまるで違う人みたいだ。
「レニー、こんな形で思いを告げることになってごめん。でも、本気だから……俺の事、真剣に考えてくれよな」
「わ、分かった」
「ありがとう」
ふ、とダグラスが微笑む。
見たことが無かったその安心したような優しい笑顔に、思わず言葉を失って見蕩れてしまった。
「はい、そこまで!」
「うわ」
ルシャにぐいっと胸を押されて、完全に油断していたらしいダグラスがちょっとだけよろめいていた。
「邪魔するなよ」
「むしろ言い終わるまで待ってやった僕の心の広さを褒め称えて欲しいくらいだけど」
二人の軽い言い合いを見ていたら、やっと肺に空気が入ってきた気がする。
尊敬している友人二人に立て続けに告白されるだなんて、天地がひっくり返ってもない筈だった出来事に、脳みそがまったくついていかない。
ようやくまともに息が吸えて酸素が身体に回ってきたと思ったところで、ルシャがタイミングを見計らったように腕を差し出してくれる。
「会場に戻るんでしょ。行こ」
「あ、ああ。ありがとう」
にこっと笑いかけられて、少しだけ気持ちがほぐれた。ルシャの笑顔はなんだかこう、安心する。
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