67 / 73
信じられない事が起こった
しおりを挟む
私がうまくアッサイ様や殿下を回避できなかったのが悪い。面倒な事になる前に、なんとかこの場を離れなくては。
「ルシャ……」
小さく声をかけて、ビクリとした。
ルシャが、笑ってるのに笑ってない。
「レオニー、ちょっとだけ待ってて」
「あ、ああ……」
謎の迫力に押されて頷けば、ルシャは殿下を見上げて言葉を返した。
「ロベール殿下、お気遣いありがとうございます」
にっこりと笑って礼を述べた後、ルシャは「けれど」と付け加える。
「僕にとってはレオニーこそ、この国で最も惹かれる女性ですので他の女性の紹介は不要です」
ぎょっとした。
私を庇うためだとしても、そんな風に言ってくれるのは嬉しい。
嬉しいけれど、殿下の前でそんな事を言ってしまったら。
怖々と殿下を見てみたら、案の定ものすごくバカにしたような表情でルシャを見下ろしていた。
「はぁ? この見上げる程デカい、男か女か分からないようなのが好みか。趣味が悪いな」
「優しくて、勇敢で、誠実で、皆に親切で偉ぶることもない……かっこいいのに笑うと可愛い、僕の理想の女性です」
そう言って私の手をとり、私を安心させるように微笑んでくれる。
「ルシャ……」
殿下にバカにされても一歩も引かない。思いがけないルシャの強さに、私の心臓は急にバクバクと跳ね始めた。
こんな……こんな気持ちは、初めてで……どうしたらいいのか分からない。
私の戸惑いを察したのか、ルシャは私の手を握る指に、そっと力を込めてくれる。そして、殿下を見上げてはっきりと言った。
「僕はレオニーがどれだけ大きくたって別にいいけど、殿下にとっては身長差はすっごく大事な事のようですね。ですがご心配なく」
にっこり笑って、ルシャは懐から取り出した小さな丸薬を飲み下す。
すると、信じられない事が起こった。
「ル、ルシャ……?」
「まだ成長期が来てないだけで、僕、三年後には確実にこれくらいにはなるんで」
ルシャがそう言う間にも、見る間にルシャの体がむくむくと大きくなっていく。
肩幅も広くなって、腕も首筋も太く強そうに変化した。喉仏がせりあがり、私の手を握ってくれているほっそりした指が骨張った男の手に変わり……身長がぐんぐんと伸びて、ついには私を追い越してしまった。
「えへへ、意外とおっきくなれるみたい、僕」
私にそう囁いて笑いかけてくれるその顔は、ルシャだけれど、ルシャじゃない。
少し面長になって、ふっくらした頬はシャープに、零れ落ちそうだった大きな目は大人の落ち着いた印象を醸し出すパーツに変貌していた。
「ルシャ……」
小さく声をかけて、ビクリとした。
ルシャが、笑ってるのに笑ってない。
「レオニー、ちょっとだけ待ってて」
「あ、ああ……」
謎の迫力に押されて頷けば、ルシャは殿下を見上げて言葉を返した。
「ロベール殿下、お気遣いありがとうございます」
にっこりと笑って礼を述べた後、ルシャは「けれど」と付け加える。
「僕にとってはレオニーこそ、この国で最も惹かれる女性ですので他の女性の紹介は不要です」
ぎょっとした。
私を庇うためだとしても、そんな風に言ってくれるのは嬉しい。
嬉しいけれど、殿下の前でそんな事を言ってしまったら。
怖々と殿下を見てみたら、案の定ものすごくバカにしたような表情でルシャを見下ろしていた。
「はぁ? この見上げる程デカい、男か女か分からないようなのが好みか。趣味が悪いな」
「優しくて、勇敢で、誠実で、皆に親切で偉ぶることもない……かっこいいのに笑うと可愛い、僕の理想の女性です」
そう言って私の手をとり、私を安心させるように微笑んでくれる。
「ルシャ……」
殿下にバカにされても一歩も引かない。思いがけないルシャの強さに、私の心臓は急にバクバクと跳ね始めた。
こんな……こんな気持ちは、初めてで……どうしたらいいのか分からない。
私の戸惑いを察したのか、ルシャは私の手を握る指に、そっと力を込めてくれる。そして、殿下を見上げてはっきりと言った。
「僕はレオニーがどれだけ大きくたって別にいいけど、殿下にとっては身長差はすっごく大事な事のようですね。ですがご心配なく」
にっこり笑って、ルシャは懐から取り出した小さな丸薬を飲み下す。
すると、信じられない事が起こった。
「ル、ルシャ……?」
「まだ成長期が来てないだけで、僕、三年後には確実にこれくらいにはなるんで」
ルシャがそう言う間にも、見る間にルシャの体がむくむくと大きくなっていく。
肩幅も広くなって、腕も首筋も太く強そうに変化した。喉仏がせりあがり、私の手を握ってくれているほっそりした指が骨張った男の手に変わり……身長がぐんぐんと伸びて、ついには私を追い越してしまった。
「えへへ、意外とおっきくなれるみたい、僕」
私にそう囁いて笑いかけてくれるその顔は、ルシャだけれど、ルシャじゃない。
少し面長になって、ふっくらした頬はシャープに、零れ落ちそうだった大きな目は大人の落ち着いた印象を醸し出すパーツに変貌していた。
5
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。

前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる