60 / 73
骨がありそうだ
しおりを挟む
「貴女は親の欲目を抜いても文句なしに美人よ。貴女なら可愛らしいドレスだろうが情熱的な真っ赤なドレスだろうが、シックな大人っぽいドレスだろうが着こなせる逸材だと思っているわ。母に任せなさい」
お母様はいつもこんな風になぐさめてくれるけど、似合わないのは残念ながら私が一番良く分かっている。
「ありがとう。けれどさすがにふわふわ可愛いのは似合わないよ……」
「ふふ、貴女が可愛らしいドレスを着ることに抵抗があるのは分かっているから無理強いする気は無いのよ。ルシャ様がシックな装いにしてくださるのであれば、レオニーもタイトなマーメイドラインでもいいと思うわ」
「えっ?」
「王家の習わしとしては初々しさと愛らしさを表す純白のプリンセスラインと相場が決まっているし、殿下の婚約者としてはその一択だけれど、他は皆、自分の魅力を最大限に引き立てるドレスを着るものよ」
「そうなんだ……」
「もちろん、可愛らしいドレスを着ることができるのは今のうちって考えで、愛らしいドレスを着る娘が多いようではあるわね。けれどプリンセスラインのドレスでも、色やデザインで凜とした印象に仕上げることも出来るし、選択肢は無限にあるわ」
お母様が頼もしくそう言ってくれた時、ちょうど扉が開いて、お父様と弟のジュールが部屋へと入ってきた。
「おっ、デビュタントのドレスの話か」
「ええ、レオニーがルシャ様のスーツを見てきたと言うから、レオニーのドレスを本格的に仕立てようと思って」
「姉さん、さすがに夜会は可愛くドレスで着飾ってよね」
ジュールにからかうように言われて、私も苦笑してしまった。
「いくらなんでも夜会くらいはドレスを着るよ。エスコートしてくれるルシャに悪いからな」
「それ! まさか姉さんのエスコートの相手があの『森の民』だとは思わなかったよ。どんなヤツなの?」
「凄腕の錬金術師なんだけど、人がよくて放っておけない感じかな。ルシャは優しいから、私らしければどんな装いでもいいと言ってくれてはいるんだけど、あまり恥はかかせたくないしね」
「へぇ……」
「私は何度か話したが、なかなか面白い青年だぞ。見た目は少女のようだが、錬金の腕は確かだし、あれはなかなか骨がありそうだ」
私は目を丸くした。お父様がルシャのことを『骨がありそうだ』なんて評するとは思っていなかったから。
「ああ、レオニー。これを夜会の時に身につける物に仕込んでおきなさい」
お父様が、何やら赤い色石を渡してくれた。
お母様はいつもこんな風になぐさめてくれるけど、似合わないのは残念ながら私が一番良く分かっている。
「ありがとう。けれどさすがにふわふわ可愛いのは似合わないよ……」
「ふふ、貴女が可愛らしいドレスを着ることに抵抗があるのは分かっているから無理強いする気は無いのよ。ルシャ様がシックな装いにしてくださるのであれば、レオニーもタイトなマーメイドラインでもいいと思うわ」
「えっ?」
「王家の習わしとしては初々しさと愛らしさを表す純白のプリンセスラインと相場が決まっているし、殿下の婚約者としてはその一択だけれど、他は皆、自分の魅力を最大限に引き立てるドレスを着るものよ」
「そうなんだ……」
「もちろん、可愛らしいドレスを着ることができるのは今のうちって考えで、愛らしいドレスを着る娘が多いようではあるわね。けれどプリンセスラインのドレスでも、色やデザインで凜とした印象に仕上げることも出来るし、選択肢は無限にあるわ」
お母様が頼もしくそう言ってくれた時、ちょうど扉が開いて、お父様と弟のジュールが部屋へと入ってきた。
「おっ、デビュタントのドレスの話か」
「ええ、レオニーがルシャ様のスーツを見てきたと言うから、レオニーのドレスを本格的に仕立てようと思って」
「姉さん、さすがに夜会は可愛くドレスで着飾ってよね」
ジュールにからかうように言われて、私も苦笑してしまった。
「いくらなんでも夜会くらいはドレスを着るよ。エスコートしてくれるルシャに悪いからな」
「それ! まさか姉さんのエスコートの相手があの『森の民』だとは思わなかったよ。どんなヤツなの?」
「凄腕の錬金術師なんだけど、人がよくて放っておけない感じかな。ルシャは優しいから、私らしければどんな装いでもいいと言ってくれてはいるんだけど、あまり恥はかかせたくないしね」
「へぇ……」
「私は何度か話したが、なかなか面白い青年だぞ。見た目は少女のようだが、錬金の腕は確かだし、あれはなかなか骨がありそうだ」
私は目を丸くした。お父様がルシャのことを『骨がありそうだ』なんて評するとは思っていなかったから。
「ああ、レオニー。これを夜会の時に身につける物に仕込んでおきなさい」
お父様が、何やら赤い色石を渡してくれた。
3
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。

前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる