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【ルシャ視点】僕は待たない

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「今は気持ちが落ち着いてないだろうから、急かさずに、もう少し気持ちの余裕が出てきた頃にって……そう思ってたんだ」

そこで言葉を切ったダグラスは、恨めしそうな目で俺を見る。

「なのに、何なんだよお前、急に出てきて勝手なことばっかり言って……もう少し、待ってやれないのかよ」

「僕はレオニーが落ち着くのを待ったりしない」

僕はキッパリとそう口にした。

「なんでだよ……! 可哀想だろ、あんまりじゃねぇか」

「今が大切な時期なんだよ。僕は、このタイミングを逃すようなバカな真似はしない」

「どういう意味だ」

「レオニーはさ、今まではあの王子様の嫁として、護衛として生きるんだって思ってたんだろ? あんな楽しくもなさそうな顔してさ」

「楽しくもなさそうな……ってのは置いといて、妃として護衛として生きるんだと思ってたのは間違いないだろうな」

「で、そんな生き方から思いがけず解放されて、戸惑ってる」

「そうだ。だから、そっとしておいてやりたいんだ」

「僕はそうは思わない」

「なんで……っ」

「何にも決まってない今だから、レオニーには無数の選択肢があるんだよ。それなら、楽しいこと、面白いこと、レオニーが興味を持てること、レオニーが想像もしてないこと、色んなことに触れてさ、たっくさんある選択肢の中からレオニーが選びたい道を掴めばいいんだ」

「……!」

ダグラスが驚いたような顔で僕を見る。

ダグラスだってレオニーの事、一生懸命に考えてたんだと思うけどさ。僕だってちゃんと考えてる。

「レオニーの手持ちの札の中で将来を考える方がよっぽどもったいなくて可哀想だ。レオニーの考えが固まっちゃってからじゃ遅いよ。今ならレオニーに、僕と一緒に笑ってる未来を選んでもらえるかも知れないんだもん。僕は、今しかないと思ってる」

なんならレオニーの周囲……家族や友人や、レオニーの事を狙ってるヤツらも含めて、まだ明確に考えが固まってない段階だからこそ有効な手、ってのはあるもんだ。

「あの王子様と一緒にいるよりは、ダグラスといた方がレオニーは楽しくいられるだろうけど、僕だって負けちゃいないと思うんだよね。レオニー、僕の顔も才能も気に入ってると思うしさ」

「くっ……ヌケヌケと……!」

「ダグラスだってそれなりに自信あるんでしょ? レオニーが落ち着くのを待つなんて言葉、むしろ余裕すら感じるし」

「付き合いも長いしな……対等に見てもらえているという自負はある」

「ダグラスはダグラスが考えるようにやりなよ。結局のところ何がいいのかなんてレオニーにしか分かんないし、選ぶのはレオニーなんだから」
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