44 / 73
夜会への誘い
しおりを挟む
「ん、そろそろ良さそうかな」
終始機嫌がいいルシャが小さく呟いて、笑みを深める。
「ではレオニー嬢、改めて」
「はい」
何が何だか分からないが、ようやくやる気になったらしい。
ポケットから小さな丸い玉を取り出すと、私の目の前で指先できゅっと押しつぶしてみせる。
途端。
ぽんっ! と軽い音がして、可愛らしいリボンかかけられた小箱が現れた。
「うわっ」
「ふふっ」
思わず驚いてしまったが、こんな時に可愛らしい声もでない自分に内心ちょっとがっかりした。笑ってるルシャの方がよっぽど可憐だ。
いや、そんな事を考えている場合じゃ無かった。
我が国のエスコートの申し込みは少し変わっていて、こんな風に女性に贈り物を持参するのが普通だ。そして女性はその贈り物を見定めて、気に入らなければ断るか新たに要望を伝え、気に入れば相手の手ずから身につけて貰うことで申し込みを了承するのだ。
そんなわけで、予算の都合もある男性陣の動きとしてはいきなり申し込むチャレンジャーは少なくて、正式に申し込む前にそれとなく打診して、相手好みの贈り物を準備するのが大半だ。今回ルシャからは特に好みなどは聞かれていないけれど、いったい何を用意してくれたんだろうか。
楽しみだ。
「……開けても?」
「もちろん!」
跪いたまま、両手で箱を捧げ持ってくれているルシャの手の上でリボンをほどき箱を開けると。
「うわぁ……可愛い」
箱の中にはレースを幾重にも重ねたような不思議な花びらを持つ大輪の花を束ねたような、華やかな髪飾りがあった。ルシャの髪色のような淡い若草色の花は瑞々しく、間に挟み込まれているチュールレースはふわりと薄いピンクで、全体的に優しく可愛らしい色合いだ。
私に似合うだろうか……と一瞬心配になったけれど、憧れる可憐さではある。
「もしかして、ルシャが作ったのか?」
小さな声で聞いてみたら、ルシャが嬉しそうに笑う。
「うん、もちろん。僕らの森に咲くファルハという花をあしらったんだよ。申し込む時には、自分の色を入れたアクセサリーをプレゼントするものだって聞いたから、これでもかってくらい入れてみたんだけど、どう? これでもかってくらい僕の色でしょ」
囁くようにそう言われて、笑ってしまった。確かにこれでもかと言うくらいにルシャ色だ。
「レオニー嬢!」
私の頬が緩んだのを満足そうに見て、ルシャが声のボリュームを大きくする。
「どうかこの贈り物を手に取って、僕の色を身につけて共に夜会に出て欲しい。そして、君の美しい髪色を身につける許しを貰えないだろうか」
終始機嫌がいいルシャが小さく呟いて、笑みを深める。
「ではレオニー嬢、改めて」
「はい」
何が何だか分からないが、ようやくやる気になったらしい。
ポケットから小さな丸い玉を取り出すと、私の目の前で指先できゅっと押しつぶしてみせる。
途端。
ぽんっ! と軽い音がして、可愛らしいリボンかかけられた小箱が現れた。
「うわっ」
「ふふっ」
思わず驚いてしまったが、こんな時に可愛らしい声もでない自分に内心ちょっとがっかりした。笑ってるルシャの方がよっぽど可憐だ。
いや、そんな事を考えている場合じゃ無かった。
我が国のエスコートの申し込みは少し変わっていて、こんな風に女性に贈り物を持参するのが普通だ。そして女性はその贈り物を見定めて、気に入らなければ断るか新たに要望を伝え、気に入れば相手の手ずから身につけて貰うことで申し込みを了承するのだ。
そんなわけで、予算の都合もある男性陣の動きとしてはいきなり申し込むチャレンジャーは少なくて、正式に申し込む前にそれとなく打診して、相手好みの贈り物を準備するのが大半だ。今回ルシャからは特に好みなどは聞かれていないけれど、いったい何を用意してくれたんだろうか。
楽しみだ。
「……開けても?」
「もちろん!」
跪いたまま、両手で箱を捧げ持ってくれているルシャの手の上でリボンをほどき箱を開けると。
「うわぁ……可愛い」
箱の中にはレースを幾重にも重ねたような不思議な花びらを持つ大輪の花を束ねたような、華やかな髪飾りがあった。ルシャの髪色のような淡い若草色の花は瑞々しく、間に挟み込まれているチュールレースはふわりと薄いピンクで、全体的に優しく可愛らしい色合いだ。
私に似合うだろうか……と一瞬心配になったけれど、憧れる可憐さではある。
「もしかして、ルシャが作ったのか?」
小さな声で聞いてみたら、ルシャが嬉しそうに笑う。
「うん、もちろん。僕らの森に咲くファルハという花をあしらったんだよ。申し込む時には、自分の色を入れたアクセサリーをプレゼントするものだって聞いたから、これでもかってくらい入れてみたんだけど、どう? これでもかってくらい僕の色でしょ」
囁くようにそう言われて、笑ってしまった。確かにこれでもかと言うくらいにルシャ色だ。
「レオニー嬢!」
私の頬が緩んだのを満足そうに見て、ルシャが声のボリュームを大きくする。
「どうかこの贈り物を手に取って、僕の色を身につけて共に夜会に出て欲しい。そして、君の美しい髪色を身につける許しを貰えないだろうか」
6
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。

前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる