42 / 73
三日後に
しおりを挟む
それから三日後。
ルシャが昼休みにアカデミーの中庭に来て欲しいと言うものだから、久しぶりに鍛錬場では無く中庭を訪れた私だったが……そこで待っていたルシャを見て驚いてしまった。
髪がバッサリと切られてしまっている。
ふわふわの猫っ毛で可愛らしかった若草色のポニーテールがキレイさっぱりなくなって、ベリーショートになってしまっていた。
ふわふわ揺れてるポニーテールがなくなって寂しい。
けれど逆に、今までは纏められていた部分がふわふわと浮いていて、とってもとっても手触りが良さそう。
「ふわふわ……可愛い……」
気がついたら魅惑のふわふわに手が伸びていた。
まるで柔らかな毛並みの猫を愛でているかのように幸せな手触り。指通りもよくて最高に気持ちいい。
「レオニー……」
「あっごめん」
ついついルシャの頭をなで回してしまった。
「あまりにも可愛くて」
「僕、かっこよくなったつもりだったんだけど」
ちょっと拗ねたような口調で言われて、それもまた最高に可愛らしかった。
「うん、ショートも似合うな。かっこいいよ。でも、ふわふわしてて可愛くもある」
出会った時はまるで愛らしい少女のようだと思ったけれど、髪をばっさりと切ったことで確かに印象は変わった。
神秘的な薄桃色の瞳、出会った時となんら変わらない透き通るような白い肌も相まって、少女と言うよりは羽化する前の少年の儚さを感じる神聖な美しさだ。尊い。
騎士科にもダグラスをはじめとした同い年の男どもは多いが、こんなに少年っぽさが残っているメンツはいない。なんせ皆ゴリゴリに鍛えているものだから、筋骨隆々としてるしゴツイし汗臭い。
豪快であけすけな物言いが荒く少々がさつなヤツが多いが、気兼ねなく付き合える彼らはもちろん良き友人で、それはそれで好ましい。
「騎士科のヤツらと比べられても……」
「ん?」
「なんでもない」
俯いたぽそっとルシャが何か言ったから聞き返してみたが、教えてくれなかった。残念だ。
「それで、今日はどうしたんだい?」
仕方が無いから話題を変えようとそう言ってみたら、ルシャはパッと顔を上げた。
「それだよ! そのために髪も切ってかっこよくしてきたのにさ」
「うん、かっこいいよ」
「……」
疑わしそうな目で見上げられてしまったけれど、かっこいいと可愛いが同居していると思っているのは本当だ。数年後にはきっと、こんな刹那的な美しさでは無く、男らしい風貌になってしまうのだろう。ちょっと寂しくもある。
ルシャが昼休みにアカデミーの中庭に来て欲しいと言うものだから、久しぶりに鍛錬場では無く中庭を訪れた私だったが……そこで待っていたルシャを見て驚いてしまった。
髪がバッサリと切られてしまっている。
ふわふわの猫っ毛で可愛らしかった若草色のポニーテールがキレイさっぱりなくなって、ベリーショートになってしまっていた。
ふわふわ揺れてるポニーテールがなくなって寂しい。
けれど逆に、今までは纏められていた部分がふわふわと浮いていて、とってもとっても手触りが良さそう。
「ふわふわ……可愛い……」
気がついたら魅惑のふわふわに手が伸びていた。
まるで柔らかな毛並みの猫を愛でているかのように幸せな手触り。指通りもよくて最高に気持ちいい。
「レオニー……」
「あっごめん」
ついついルシャの頭をなで回してしまった。
「あまりにも可愛くて」
「僕、かっこよくなったつもりだったんだけど」
ちょっと拗ねたような口調で言われて、それもまた最高に可愛らしかった。
「うん、ショートも似合うな。かっこいいよ。でも、ふわふわしてて可愛くもある」
出会った時はまるで愛らしい少女のようだと思ったけれど、髪をばっさりと切ったことで確かに印象は変わった。
神秘的な薄桃色の瞳、出会った時となんら変わらない透き通るような白い肌も相まって、少女と言うよりは羽化する前の少年の儚さを感じる神聖な美しさだ。尊い。
騎士科にもダグラスをはじめとした同い年の男どもは多いが、こんなに少年っぽさが残っているメンツはいない。なんせ皆ゴリゴリに鍛えているものだから、筋骨隆々としてるしゴツイし汗臭い。
豪快であけすけな物言いが荒く少々がさつなヤツが多いが、気兼ねなく付き合える彼らはもちろん良き友人で、それはそれで好ましい。
「騎士科のヤツらと比べられても……」
「ん?」
「なんでもない」
俯いたぽそっとルシャが何か言ったから聞き返してみたが、教えてくれなかった。残念だ。
「それで、今日はどうしたんだい?」
仕方が無いから話題を変えようとそう言ってみたら、ルシャはパッと顔を上げた。
「それだよ! そのために髪も切ってかっこよくしてきたのにさ」
「うん、かっこいいよ」
「……」
疑わしそうな目で見上げられてしまったけれど、かっこいいと可愛いが同居していると思っているのは本当だ。数年後にはきっと、こんな刹那的な美しさでは無く、男らしい風貌になってしまうのだろう。ちょっと寂しくもある。
6
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる