22 / 73
楽しい時間
しおりを挟む
素人考えだから、本当にそうなのかはルシャに判定して貰わないと意味がない。
お気に召すかな? とルシャの方を見てみれば、ルシャは森に足を踏み入れるなり歓声をあげていた。
「うっわ、すごい! めっちゃ素材だらけじゃん!」
ルシャは歩きながらあっちの草、こっちの木の実、キノコや蔦、苔や木の皮、果ては土だの何かの羽や抜け殻だのまでをじっくりと検分してはたまに採取してバッグの中に大事そうに収納している。
「いい素材はあるかい?」
「うん! 特に変わった素材ってのはないけど、やっぱり街で買うよりも状態がいい素材が多いから、きっといい薬ができると思うよ」
「それは良かった。管理小屋くらいまではまだ人の出入りも多いけど、もっと奥に行けばもっと状態がいいのがあるかも知れないな」
「ホント!? これホントに僕が採取し放題でいいの!?」
「もちろん。ルシャが使ったくらいで無くなったりしないよ。でもその様子なら、出来るだけ森の奥まで行ってどんな物があるのかを確かめておいた方がいいだろう」
「うん! ワクワクしてきた!」
「もうすぐ管理小屋に着く。簡単に中を見て貰って、食事をとったら森の奥に進もうか」
「飯なんか歩きながらでいいよ。歩きながら食べれるもの買ったじゃん。僕、少しでも奥まで行きたい」
「ふふ、了解。さぁ、管理小屋が見えて来た。これから君が住むかも知れない家だ」
明るい森の木々の向こうに、なんの変哲もない質素な丸太小屋が見え隠れする。
「うわ、思ったよりデカい」
「中は二部屋とトイレくらいしかないけどな。生活用水は家の前にある井戸、風呂なんて洒落たものはないから、井戸の水を浴びるくらいしかできない」
「充分! 森での生活もそんな感じだったよ。水は井戸じゃなくて泉だったけどね」
「ふうん、ではレイサルよりもタニルの森の方が環境が近いのかな」
「タニル?」
「ああ、父が言っていただろう? ほかにも幾つか候補があるって。ここよりも王都からは時間がかかるからあまり勧めないが、管理小屋の近くに泉があるんだ。あそこは遠いけれど地形が変化に富んでいるから、レイサルとは違う物も色々採取できるかもしれない」
「うわぁ……」
私はうっかり吹き出してしまいそうになった。
だってルシャときたら、まるで恋する乙女のようにうっとりとした表情を浮かべているんだから。
本当に錬金が好きで、色々な素材への興味や関心が高いんだろうな、と微笑ましい気持ちになった。お父様も採取して良いと言っていたことだし、ルシャが行きたいと言うなら他の森にもそのうち案内してやろう。
お気に召すかな? とルシャの方を見てみれば、ルシャは森に足を踏み入れるなり歓声をあげていた。
「うっわ、すごい! めっちゃ素材だらけじゃん!」
ルシャは歩きながらあっちの草、こっちの木の実、キノコや蔦、苔や木の皮、果ては土だの何かの羽や抜け殻だのまでをじっくりと検分してはたまに採取してバッグの中に大事そうに収納している。
「いい素材はあるかい?」
「うん! 特に変わった素材ってのはないけど、やっぱり街で買うよりも状態がいい素材が多いから、きっといい薬ができると思うよ」
「それは良かった。管理小屋くらいまではまだ人の出入りも多いけど、もっと奥に行けばもっと状態がいいのがあるかも知れないな」
「ホント!? これホントに僕が採取し放題でいいの!?」
「もちろん。ルシャが使ったくらいで無くなったりしないよ。でもその様子なら、出来るだけ森の奥まで行ってどんな物があるのかを確かめておいた方がいいだろう」
「うん! ワクワクしてきた!」
「もうすぐ管理小屋に着く。簡単に中を見て貰って、食事をとったら森の奥に進もうか」
「飯なんか歩きながらでいいよ。歩きながら食べれるもの買ったじゃん。僕、少しでも奥まで行きたい」
「ふふ、了解。さぁ、管理小屋が見えて来た。これから君が住むかも知れない家だ」
明るい森の木々の向こうに、なんの変哲もない質素な丸太小屋が見え隠れする。
「うわ、思ったよりデカい」
「中は二部屋とトイレくらいしかないけどな。生活用水は家の前にある井戸、風呂なんて洒落たものはないから、井戸の水を浴びるくらいしかできない」
「充分! 森での生活もそんな感じだったよ。水は井戸じゃなくて泉だったけどね」
「ふうん、ではレイサルよりもタニルの森の方が環境が近いのかな」
「タニル?」
「ああ、父が言っていただろう? ほかにも幾つか候補があるって。ここよりも王都からは時間がかかるからあまり勧めないが、管理小屋の近くに泉があるんだ。あそこは遠いけれど地形が変化に富んでいるから、レイサルとは違う物も色々採取できるかもしれない」
「うわぁ……」
私はうっかり吹き出してしまいそうになった。
だってルシャときたら、まるで恋する乙女のようにうっとりとした表情を浮かべているんだから。
本当に錬金が好きで、色々な素材への興味や関心が高いんだろうな、と微笑ましい気持ちになった。お父様も採取して良いと言っていたことだし、ルシャが行きたいと言うなら他の森にもそのうち案内してやろう。
5
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?

年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。

前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる