20 / 73
穏やかな話し合い
しおりを挟む
「無論だ。騎士団では今よりも質のいい薬を求めている。先日見せてもらったが、君の作る薬は非常に質がいい。ぜひ定期的に納入して欲しい」
「ちょっと時間貰えれば、もっと質のいいのも作れますけど」
質がいい薬を作れる事をあまり簡単に誰にでも吹聴しないように忠告したというのに、相変わらずルシャは平気で腕前をアピールする。お父様の目元が緩んでいるのは、私と同じように彼の正直さを好ましく思ってくれたのかも知れない。
「うむ、そうか。それは頼もしいな。して、どのような薬が作れる?」
「さすがに蘇生は無理ですけど、それ以外なら材料さえ揃えばなんでも」
「普通に手に入る材料ならどれくらいの物が出来る?」
「ええと、止血、解毒、痛み止め、麻痺止め、栄養剤や眠り薬、魔物避けや魔物寄せでもなんでも。疲労回復とか治癒薬も納入する物は中レベルの効果だけど、少し時間を貰えればMAXレベルまでは作れるから……」
お父様の目が僅かに大きくなった。これは相当驚いてると思う。
「……そうか。なるほど、レオニーが支援したいというのも頷ける」
「支援?」
「ああ、君は住まいを探していると聞いた。それも出来ることなら森の中がいいんだろう?」
「は、はい……」
「この王都に隣接するレイサルの森は我がシュヴァル侯爵家の領地でな。管理用の山小屋で良ければ使ってくれ。生活用品は揃っているが一新しても改造しても良い。費用はこちらが出そう。それが俺からの礼の気持ちだ。レオニー、ルシャ殿への案内と生活用品の手配は任せたぞ」
「はい!」
「ええっ、いや、僕そんな……」
「少し奥に入れば騎士団の鍛錬にも使う程度には強い魔物が生息しているが、入口付近は魔物も多くなく植生は豊富だ。良い材料が採取できるだろう。……だが、そうだな。君が気に入らないと意味がないな。レオニー、近々実際にレイサルの森を見て貰った方がいいかも知れないな」
「ええ!?」
「分かりました」
「ルシャ殿、直轄の森は他にも幾つかある。レイサルよりも気にいる森があればそこでもいいし、レオニーが一緒なら他の森も採取に使ってくれ」
「いいんですか……!」
いいの? と不安そうだったルシャの目が、ここにきてキラキラと輝き出した。新しい素材を求めて海を渡ってきたという彼のことだ、きっといろんな森で採取をできるという話に期待が上回ったんだろう。
「少しは喜んで貰えただろうか」
「はい! すごく嬉しいです!」
「良かった。それでは謝礼は君の住まいと森での採取権という事にしよう。それと……薬の件については、後ほど欲しいものをリストアップして渡すから、それを納入して欲しい」
「分かりました」
「君の錬金の能力は衝撃的過ぎる。穏やかに暮らしたいのであれば、気軽に話さない方がいいだろう。俺も効果の高いものは緊急の時のために密かに騎士団で保管しようと思う」
「そうして貰えると助かります。僕も、騎士団長とレオニーは信頼出来るから話してるだけなんで」
「……そうか、君に信頼して貰えるのは光栄だ。これからもよろしく頼む」
そうしてお父様とルシャの話し合いは、私が特に口を挟む隙もなくとても和やかに終わったのだった。
「ちょっと時間貰えれば、もっと質のいいのも作れますけど」
質がいい薬を作れる事をあまり簡単に誰にでも吹聴しないように忠告したというのに、相変わらずルシャは平気で腕前をアピールする。お父様の目元が緩んでいるのは、私と同じように彼の正直さを好ましく思ってくれたのかも知れない。
「うむ、そうか。それは頼もしいな。して、どのような薬が作れる?」
「さすがに蘇生は無理ですけど、それ以外なら材料さえ揃えばなんでも」
「普通に手に入る材料ならどれくらいの物が出来る?」
「ええと、止血、解毒、痛み止め、麻痺止め、栄養剤や眠り薬、魔物避けや魔物寄せでもなんでも。疲労回復とか治癒薬も納入する物は中レベルの効果だけど、少し時間を貰えればMAXレベルまでは作れるから……」
お父様の目が僅かに大きくなった。これは相当驚いてると思う。
「……そうか。なるほど、レオニーが支援したいというのも頷ける」
「支援?」
「ああ、君は住まいを探していると聞いた。それも出来ることなら森の中がいいんだろう?」
「は、はい……」
「この王都に隣接するレイサルの森は我がシュヴァル侯爵家の領地でな。管理用の山小屋で良ければ使ってくれ。生活用品は揃っているが一新しても改造しても良い。費用はこちらが出そう。それが俺からの礼の気持ちだ。レオニー、ルシャ殿への案内と生活用品の手配は任せたぞ」
「はい!」
「ええっ、いや、僕そんな……」
「少し奥に入れば騎士団の鍛錬にも使う程度には強い魔物が生息しているが、入口付近は魔物も多くなく植生は豊富だ。良い材料が採取できるだろう。……だが、そうだな。君が気に入らないと意味がないな。レオニー、近々実際にレイサルの森を見て貰った方がいいかも知れないな」
「ええ!?」
「分かりました」
「ルシャ殿、直轄の森は他にも幾つかある。レイサルよりも気にいる森があればそこでもいいし、レオニーが一緒なら他の森も採取に使ってくれ」
「いいんですか……!」
いいの? と不安そうだったルシャの目が、ここにきてキラキラと輝き出した。新しい素材を求めて海を渡ってきたという彼のことだ、きっといろんな森で採取をできるという話に期待が上回ったんだろう。
「少しは喜んで貰えただろうか」
「はい! すごく嬉しいです!」
「良かった。それでは謝礼は君の住まいと森での採取権という事にしよう。それと……薬の件については、後ほど欲しいものをリストアップして渡すから、それを納入して欲しい」
「分かりました」
「君の錬金の能力は衝撃的過ぎる。穏やかに暮らしたいのであれば、気軽に話さない方がいいだろう。俺も効果の高いものは緊急の時のために密かに騎士団で保管しようと思う」
「そうして貰えると助かります。僕も、騎士団長とレオニーは信頼出来るから話してるだけなんで」
「……そうか、君に信頼して貰えるのは光栄だ。これからもよろしく頼む」
そうしてお父様とルシャの話し合いは、私が特に口を挟む隙もなくとても和やかに終わったのだった。
5
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。

前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる