18 / 73
【ルシャ視点】借りてきた猫の気分だ。
しおりを挟む
レオニーとそんな話をして、たったの二日後。
僕はなぜかレオニーの家っていうか、シュヴァル侯爵家のデカい屋敷の中でひとり、ちんまりと座っていた。
思ってた貴族の邸と違う……。
さっき通った廊下の向こう側はめっちゃ広そうながらんとした部屋で、石造りの頑丈そうな部屋だった。多分あれ、室内の鍛錬場なんじゃないかな。
しかもこの部屋。多分応接室だけど、飾り気のない重々しい感じの革張りのソファと、僕じゃ引き摺ることすら出来ないだろう重量感半端ない大理石っぽいテーブルが威圧感たっぷりに据えられている。
滑って転んで頭でもぶつけようもんなら命を落としかねないんじゃないかって心配なくらいに硬そう。
全体的に鈍色で飾りっ気のない無骨な感じの邸。貴族の邸ってもっとこう、キラキラして無駄に装飾されてたり薔薇だの絵画だの飾られてるもんじゃないの?
この邸にある飾りモノなんて、剣だの槍だの盾だのばっかりで、しかも所々に気味が悪い魔獣の置物とか飾り物まであるんだけど!?
邸から押し寄せる圧迫感にひとりびびっていたら、応接室の馬鹿でかく重たい扉がギギギ……と鈍い音を立てて開いた。
「やあ! 待たせて悪かったね」
「レオニー!」
「? えらく緊張しているようだけど、大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ。ただでさえ強面の騎士団長に直接会って話すなんて緊張するのに、レオニーの家、なんかめっちゃ圧迫感すごいし」
「……そうか? 普通だと思うが」
僕の訴えに答えたのは、レオニーじゃないバリバリに渋い重低音のバリトンボイスだった。レオニーの後ろからのっそりと現れたのは、他でもない強面騎士団長その人だ。
「ひえっ……」
一緒に来てるなら言ってくれよ! 僕めっちゃ本心喋っちゃったじゃん! 強面騎士団長とか言っちゃったじゃん……。
恨みがましくレオニーを見たけれど、「?」な顔をした後にっこり笑顔を向けられただけだった。絶対に僕の心の叫びは通じてないと思う。
僕はバッと音がするくらい勢いよく立ち上がって礼をした。
「お久しぶりです!」
「君が渡航して陛下に謁見に来た時以来だな。元気にしているようで何よりだ。学園には慣れたか?」
「はい!」
元気良く返事をする。僕は基本的に長い物には巻かれる主義だ。
騎士団長は微笑みを浮かべて俺を見下ろす。一見怖そうだけど目元は優しい、どこかやっぱりレオニーと似た雰囲気があって、親子なんだなぁと感心する。
「そんなに畏まらなくていい。かけたまえ、互いに時間がもったいからな、早速本題に入ろう。……まぁ、俺の顔が怖いのは仕方がないから慣れてくれ」
フ……と右の唇の端だけ持ち上げて、騎士団長はニヒルに笑う。冗談を言ったつもりかも知れないが、正直愛想笑いしか出来ないからな?
僕はなぜかレオニーの家っていうか、シュヴァル侯爵家のデカい屋敷の中でひとり、ちんまりと座っていた。
思ってた貴族の邸と違う……。
さっき通った廊下の向こう側はめっちゃ広そうながらんとした部屋で、石造りの頑丈そうな部屋だった。多分あれ、室内の鍛錬場なんじゃないかな。
しかもこの部屋。多分応接室だけど、飾り気のない重々しい感じの革張りのソファと、僕じゃ引き摺ることすら出来ないだろう重量感半端ない大理石っぽいテーブルが威圧感たっぷりに据えられている。
滑って転んで頭でもぶつけようもんなら命を落としかねないんじゃないかって心配なくらいに硬そう。
全体的に鈍色で飾りっ気のない無骨な感じの邸。貴族の邸ってもっとこう、キラキラして無駄に装飾されてたり薔薇だの絵画だの飾られてるもんじゃないの?
この邸にある飾りモノなんて、剣だの槍だの盾だのばっかりで、しかも所々に気味が悪い魔獣の置物とか飾り物まであるんだけど!?
邸から押し寄せる圧迫感にひとりびびっていたら、応接室の馬鹿でかく重たい扉がギギギ……と鈍い音を立てて開いた。
「やあ! 待たせて悪かったね」
「レオニー!」
「? えらく緊張しているようだけど、大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ。ただでさえ強面の騎士団長に直接会って話すなんて緊張するのに、レオニーの家、なんかめっちゃ圧迫感すごいし」
「……そうか? 普通だと思うが」
僕の訴えに答えたのは、レオニーじゃないバリバリに渋い重低音のバリトンボイスだった。レオニーの後ろからのっそりと現れたのは、他でもない強面騎士団長その人だ。
「ひえっ……」
一緒に来てるなら言ってくれよ! 僕めっちゃ本心喋っちゃったじゃん! 強面騎士団長とか言っちゃったじゃん……。
恨みがましくレオニーを見たけれど、「?」な顔をした後にっこり笑顔を向けられただけだった。絶対に僕の心の叫びは通じてないと思う。
僕はバッと音がするくらい勢いよく立ち上がって礼をした。
「お久しぶりです!」
「君が渡航して陛下に謁見に来た時以来だな。元気にしているようで何よりだ。学園には慣れたか?」
「はい!」
元気良く返事をする。僕は基本的に長い物には巻かれる主義だ。
騎士団長は微笑みを浮かべて俺を見下ろす。一見怖そうだけど目元は優しい、どこかやっぱりレオニーと似た雰囲気があって、親子なんだなぁと感心する。
「そんなに畏まらなくていい。かけたまえ、互いに時間がもったいからな、早速本題に入ろう。……まぁ、俺の顔が怖いのは仕方がないから慣れてくれ」
フ……と右の唇の端だけ持ち上げて、騎士団長はニヒルに笑う。冗談を言ったつもりかも知れないが、正直愛想笑いしか出来ないからな?
5
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる