6 / 73
強引だけど
しおりを挟む
にょきにょきと縦に育ってしまった今となっては、可愛い女の子になるのは無理だから立派な騎士を目指している訳だけれど、ふわふわした可愛らしい子を見るたびに、羨ましい気持ちが湧き上がるのだけはどうしようもないんだよね……。
「ちょっと……僕、男なんだけど。背だって別に、これから伸びるし」
男の子はさらに憮然とした表情でそう言い放つ。
あれ? 私声に出してたっけ? と疑問に思った瞬間、男の子がポイッと何かを投げてきた。
パシっと片手で反射的に掴んで見てみれば、それは可愛らしいガラスの小瓶に入ったクリームのようなものだった。
「何?」
「傷薬だよ。その傷、ほっといたらグロい傷跡になっちゃうじゃんか」
驚いた。
優しい子だなぁ。人と関わるのは嫌いっぽいのに、私が酷いケガをしているのを見て放っておけなくなったんだろう。
「早く塗りなよ。止血効果も高いし治癒力MAXだから、その酷い傷だって跡も残らないと思う」
「治癒力MAXって……そんなに高価な薬、貰えないよ」
開けた小瓶を慎重に閉じた。治癒力MAXなんてそんなレアな薬、こんな街中でそうそう手に入る筈がない。けれどこの子はきっと森の民だ、彼らだけに伝わる秘薬を持っているのかも知れなかった。
高価な薬を投げて渡したくらいだ、近付いて欲しくないだろうと思ってぐっと腕を伸ばして薬を返す。
男の子は木の影から一瞬で出てきて私の手から薬を乱暴に取り上げると、さらに私の手首を掴みぐっと自分の方へ引き寄せた。
「わっ」
元々その子の方へ腕を伸ばして重心が傾いていた上に油断してたもんだから、私の体は呆気なくその子の方へと引き寄せられる。
意外にも力強く抱きとめられたかと思ったら、その子は乱暴に私の傷口にグリグリと薬を塗り込んだ。
「~~~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!!!!」
声も出ない。
ただでさえ沁みる系の薬をグリグリ塗り込むなんて鬼か!
あまりの痛さに涙目で睨んだら、思いっきり睨み返されてしまった。
「バカじゃないの!? アンタ女だろ! しかもお妃様になるんだろ? せっかく綺麗な顔してるのに、あんなエグい傷残していいわけないじゃん!」
「知ってたのか」
「さすがにそれくらいは知ってる。それにあんた、目立つし」
そっと視線を外してぽつりと呟く。俯いて、ちょっとだけ唇がとがっている姿はとても愛らしくて儚げだった。
本当は私に話しかける気もなかっただろうに、私が妃候補だから傷が残るのを心配して無理にでも手当てしてくれたんだろう。ありがたくて、申し訳なかった。
「ちょっと……僕、男なんだけど。背だって別に、これから伸びるし」
男の子はさらに憮然とした表情でそう言い放つ。
あれ? 私声に出してたっけ? と疑問に思った瞬間、男の子がポイッと何かを投げてきた。
パシっと片手で反射的に掴んで見てみれば、それは可愛らしいガラスの小瓶に入ったクリームのようなものだった。
「何?」
「傷薬だよ。その傷、ほっといたらグロい傷跡になっちゃうじゃんか」
驚いた。
優しい子だなぁ。人と関わるのは嫌いっぽいのに、私が酷いケガをしているのを見て放っておけなくなったんだろう。
「早く塗りなよ。止血効果も高いし治癒力MAXだから、その酷い傷だって跡も残らないと思う」
「治癒力MAXって……そんなに高価な薬、貰えないよ」
開けた小瓶を慎重に閉じた。治癒力MAXなんてそんなレアな薬、こんな街中でそうそう手に入る筈がない。けれどこの子はきっと森の民だ、彼らだけに伝わる秘薬を持っているのかも知れなかった。
高価な薬を投げて渡したくらいだ、近付いて欲しくないだろうと思ってぐっと腕を伸ばして薬を返す。
男の子は木の影から一瞬で出てきて私の手から薬を乱暴に取り上げると、さらに私の手首を掴みぐっと自分の方へ引き寄せた。
「わっ」
元々その子の方へ腕を伸ばして重心が傾いていた上に油断してたもんだから、私の体は呆気なくその子の方へと引き寄せられる。
意外にも力強く抱きとめられたかと思ったら、その子は乱暴に私の傷口にグリグリと薬を塗り込んだ。
「~~~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!!!!」
声も出ない。
ただでさえ沁みる系の薬をグリグリ塗り込むなんて鬼か!
あまりの痛さに涙目で睨んだら、思いっきり睨み返されてしまった。
「バカじゃないの!? アンタ女だろ! しかもお妃様になるんだろ? せっかく綺麗な顔してるのに、あんなエグい傷残していいわけないじゃん!」
「知ってたのか」
「さすがにそれくらいは知ってる。それにあんた、目立つし」
そっと視線を外してぽつりと呟く。俯いて、ちょっとだけ唇がとがっている姿はとても愛らしくて儚げだった。
本当は私に話しかける気もなかっただろうに、私が妃候補だから傷が残るのを心配して無理にでも手当てしてくれたんだろう。ありがたくて、申し訳なかった。
11
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる