麗しの男装騎士様は、婚約破棄でどう変わる?

真弓りの

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強引だけど

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にょきにょきと縦に育ってしまった今となっては、可愛い女の子になるのは無理だから立派な騎士を目指している訳だけれど、ふわふわした可愛らしい子を見るたびに、羨ましい気持ちが湧き上がるのだけはどうしようもないんだよね……。

「ちょっと……僕、男なんだけど。背だって別に、これから伸びるし」

男の子はさらに憮然とした表情でそう言い放つ。

あれ? 私声に出してたっけ? と疑問に思った瞬間、男の子がポイッと何かを投げてきた。

パシっと片手で反射的に掴んで見てみれば、それは可愛らしいガラスの小瓶に入ったクリームのようなものだった。

「何?」

「傷薬だよ。その傷、ほっといたらグロい傷跡になっちゃうじゃんか」

驚いた。

優しい子だなぁ。人と関わるのは嫌いっぽいのに、私が酷いケガをしているのを見て放っておけなくなったんだろう。

「早く塗りなよ。止血効果も高いし治癒力MAXだから、その酷い傷だって跡も残らないと思う」

「治癒力MAXって……そんなに高価な薬、貰えないよ」

開けた小瓶を慎重に閉じた。治癒力MAXなんてそんなレアな薬、こんな街中でそうそう手に入る筈がない。けれどこの子はきっと森の民だ、彼らだけに伝わる秘薬を持っているのかも知れなかった。

高価な薬を投げて渡したくらいだ、近付いて欲しくないだろうと思ってぐっと腕を伸ばして薬を返す。

男の子は木の影から一瞬で出てきて私の手から薬を乱暴に取り上げると、さらに私の手首を掴みぐっと自分の方へ引き寄せた。

「わっ」

元々その子の方へ腕を伸ばして重心が傾いていた上に油断してたもんだから、私の体は呆気なくその子の方へと引き寄せられる。

意外にも力強く抱きとめられたかと思ったら、その子は乱暴に私の傷口にグリグリと薬を塗り込んだ。

「~~~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!!!!」

声も出ない。

ただでさえ沁みる系の薬をグリグリ塗り込むなんて鬼か!

あまりの痛さに涙目で睨んだら、思いっきり睨み返されてしまった。

「バカじゃないの!? アンタ女だろ! しかもお妃様になるんだろ? せっかく綺麗な顔してるのに、あんなエグい傷残していいわけないじゃん!」

「知ってたのか」

「さすがにそれくらいは知ってる。それにあんた、目立つし」

そっと視線を外してぽつりと呟く。俯いて、ちょっとだけ唇がとがっている姿はとても愛らしくて儚げだった。

本当は私に話しかける気もなかっただろうに、私が妃候補だから傷が残るのを心配して無理にでも手当てしてくれたんだろう。ありがたくて、申し訳なかった。
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