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初めての来訪者

スラっち、進化!

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マーリンが落ち込んだ様子で錬金部屋に帰ろうとすると、ゼロが引き止めた。

「ちょっと爆発に巻き込まれた?ケガしてる」

ホントだ。カスリ傷だけどな。
ゼロは、うーん…と考えると、ルリにスラっちを連れてくるように告げた。

お前、まさか…

「スラっち、この子マーリン。こっちはブラウ。新しい仲間だよ。マーリンがケガしてるから、治してやって?」

やっぱりかぁ!
でも、7色にビカビカ光って、初の大仕事に大興奮のスラっちを、がっかりさせるのも偲びない。

俺達は祈った。
成功しますように!!!


スラっちは回復魔法を放った。
立派にやり遂げた。

そして、スラっちはなんだか目まぐるしく光り…

メタモルフォーゼ!!!

スライムメイジに、進化を遂げた…。


「しっ…進化っ…進化したぁ~!」
「スラっち、凄い~!!」

もちろん大騒ぎだ。

とはいえ、見た目は大きくは変わらない。ひと回りデカくなり、色が青から緑っぽくなっただけだ。

ただヤツは、レベルの上げ底と自らの努力によって、ただのスライムから、魔法が使えるスライムメイジに進化したのだ。

いや、マジで結構凄い。


マーリンとブラウは訳が分からずポカンとしている。

俺はスラっちに施されている壮大な実験が、今実を結んだ事を、簡単に説明してやった。

「…あんた達、バカな事してんな~…」

ブラウの一言。
…否定できない。


落ち着いた所で、スラっちのステータスを見てみる事になった。

どれどれ…

名前:スラっち
LV:1
種族:スライムメイジ
性別:不明
レア度:2

◆能力値
HP:485/485
MP:485/485
STR(筋力):485
VIT(耐久):485
INT(知力):485
MIN(精神):485
DEX(器用):485
AGI(敏捷):485
LUK(幸運):485

スキル:
・回復魔術
・不屈の闘志
・開眼
・スライム一斉攻撃

称号:
・臨界突破の実践者
・スライムの星

▽スキル詳細。
《回復魔術》。回復魔術を扱う事が出来る。

《不屈の闘志》。類い稀な精神力で即死攻撃を無効化する。

《開眼》。戦った相手のスキルを身につける事ができる。

《スライム一斉攻撃》。スライムを率いて敵に一斉攻撃をかける事ができる。敵にスライム数×発動者レベルのダメージを与える。


▽称号詳細。
《臨界突破の実践者》。自らの限界に挑み続け、臨界点を突破した者に贈られる幻の称号。奇蹟を誘発すると言われるが、定かではない。

《スライムの星》。スライムの信頼と尊敬を一身に集めた者にのみ許される称号。全てのスライムを統率できる。


ちょっと待て。
なんだ、このスペック…!

スライムにあるまじきだろう!

いや、今はスライムメイジか。
にしても…

そして、思いあたった。
そう、こいつは進化前…レベル32だった。

名前を貰ったダンジョンモンスターは、レベルアップ毎に各ステータスに+10の補正が貰える。

進化前の強さは保持したままレベルだけ1に戻ったんだな。

…なんて羨ましい!!

俺なんか元々レア度もまあまあ高いから、レベルアップに必要な経験値も高い。

レベル1に戻ったスラっちは、またサクサクとレベルが上がるだろう。

強さでスラっちに追い抜かれる日も近いかもな…。

もはやスラっちも充分に戦える。
しかも、スキル:開眼があるなら、実践に投入すべきだな。俺達は、スラっちを、新しいダンジョンのラスボスに任命した。

ついでと言っちゃなんだが、俺も高レベル向けダンジョンのラスボスをやらせて貰う事にした。やっぱり戦いたいし、さすがにスラっちには負けたくないしな!


ダンジョンのラスボスが決まったところで、経験値配分だ。昨日の残りと今日の分で、結構あるはずだ。

ゼロが配分してくれた結果、俺たちのレベルは…

ハク:レベル27
ルリ:レベル21
ユキ:レベル20
スラっち:レベル8
マーリン:レベル10
ブラウ: レベル8


…絶妙なバランスで配分してきた。気を使わせてしまったかも知れないと反省する。ラスボスとして、しっかり働いて返す事を誓う。

働くぜ!


俺がラスボスとしての決意を固めたその時だ。俺の隣にいたユキが、怪しく光り出した。ユキも唸り始め、苦しそうにしている。

「ユキ!」

ゼロが駆け寄る。
ひときわ明るい光が走ったかと思うと、そこにはユキの代わりに、ブラウよりも小さい子が立っていた。

「えへへ…変身出来た。これで…皆とお話できるね…」

えぇ~~っ!?
幻獣って、変身出来るのか!?

驚く俺達を満足そうに見て、そのままユキは気を失った。同時に姿も白いワンコに戻る。

俺達はしばし呆然としてしまった。

変身は気力なりを大量に消費するのかも知れない。しばらくはムリさせないようにしないとな…。


ユキをベッドに運び、寝かせた所で、いつものデカい声が響いた。

「よう!なんだぁ?まぁた何か増えてんじゃねぇかぁ?」

けたたましいブザーと警告アナウンスを引っさげて、カエン様の登場だ。

今日は王様や王子様との作戦会議が忙しいだろうから、来ないだろうとたかをくくっていたが…意外とマメな男だ。そうでないと、何百年も王家の守護龍なんか、務まらないのかも知れないが。

そして例のごとく、ブラウは怯えきって部屋の角にいる。

マーリンはビックリしているが、ブラウほど過剰には反応していない。やっぱり人間という種族は鈍いのかもな。


面倒なので紹介はゼロに任せ、案の定ブラウは気絶し…

なぜかマーリンは、目をキラキラさせて、「凄いですぅ~っ!火龍ですかぁ~、カッコいいですぅ~!」と感動している。鈍いって最強だな。

ブラウもベッドに運び、色々あり過ぎてすっかり遅くなってしまった晩メシを食いながら、お互いに王子様が帰ってからの事を共有する。

王子様と王様は、ユリウスと兵士長、騎士団長まで巻き込んで、どんな練兵場にするかを検討しているらしい。


俺達も、王子様が帰ってからの数時間で起こった、様々な出来事をカエンに共有する。

カエンがまず驚いたのは、ユニークチケットでゲットした、錬金釜だった。

「お前ら、とんでもないモン手に入れてるなぁ…」

呆れられた。
なんでもこの釜は、一般人は一生かかっても手に入れる事ができない、幻の逸品らしい。

普通は錬金釜と言っても、金属用、薬品用、生物用、植物用など、細かく用途が決まっていて、それ以外は入れられないし、反応しない。

でも、この釜は節操なく、何でも入れられる。なんなら、金属と薬品を合成する…という荒技までやってのける、超特級品らしい。

当たり前の話だが…失敗も多く、危険な合成、人道に反する合成が後を断たないため、今ではこの釜自体が作られておらず、幻と言われる釜なんだそうだ。

さすがに長生きしているだけあって、知識は豊富なんだな…。

しかし、その発行禁止釜、ゼロとマーリンに好きにさせとくのは、ヤバかったりしないだろうか…。

俺はついルリに目をやる。…ルリも渋い顔で首を横に振っている。

だよな。
俺とルリは、出来る限り錬金部屋を監視しようと頷きあった。

そしてもう一つ、カエンが食いついた話がある。

スラっちの進化と超ステータスだ。
もう、カエン大爆笑!

「お、お前達っ…最高…っ!何やってんだ…っ」

ひーひー言いつつ、腹を抱えて笑っている。うん、まぁ…そういう反応だろうとは、思ってたけどな。


しばらく笑っていたカエンは、涙を拭きながら立ち上がると、周りを見回す。

「そんで?そのカッチョいいスラっち君は、どこに居るんだぁ?」

あ、そういえば…。
探してみると、部屋の角で気絶していた。きっと、カエン登場に伴い気絶していたんだろう。

気付かずに可哀想な事をしてしまった。
ゴメンな、スラっち。

…と、後ろから手が伸び、スラっちを取り上げられた。

カエンは可哀想に、スラっちをボールの様に手の上で跳ねさせている。気絶中のスライムメイジに、酷い仕打ちだ。

さすがに気絶から覚めたスラっちに、カエンは一言。

「よう、スラっち。進化の褒美に、俺様が直々に火炎系魔法を教えてやるぜぇ!」

スラっちがビカビカ光る。
今夜の生徒はスラっちらしい。

その日俺は、久しぶりに気持ち良く安眠した。
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