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改良するけど、俺の安全性が第一かも知れない。

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「なに?どうしたの、黙りこんじゃって」

「おっ」


急にゆずに顔を覗き込まれて、ちょっとビビってしまった。


「いや、どう改良しようかって考えてた」

「改良してくれるの!?」

「ああ、動きは阻害してないみたいだし、絶対領域も完璧だ。あとは攻撃力つけられねーかと思ってさ」

「ちょっと待って、絶対領域? て何?」


真顔で聞き返してくるゆずに、俺も若干驚いた。ケンカに明け暮れてそんな言葉にも接しないできたのかコイツは。


「絶対領域っつーたらアレだろ。そのミニスカとハイソックスの間の生太ももの部分……」


全部言い終わる前に俺の体は思いっきりぶっ飛んでいた。ゆずの華麗な回し蹴りの餌食になったからだ。


「なあ、まだ怒ってんのか?」

「怒ってない!」


いやいや、そのプリプリっ加減は絶対に怒ってるじゃねえかよ。まったくこのくらいで怒るとは、いよいよゆずも女の子っぽくなったもんだ。

プリプリしたまま俺の前をズンズンと進んでは、その憤る気持ちをモンスターにぶつけているらしく、出て来るモンスターを必殺の回し蹴りで瞬殺していっている。

超つえええ。

だがしかし。困った事もあるのだ。


「なぁゆず、悪りいけど回し蹴り以外の技でも倒してくれねえか?」

「なんで」

「動きが多彩な方が問題点が見つけやすい」

「あ……そうか、ごめん」


俺がエロい視点で要請していたとでも思ってたらしいゆずは、合点がいった途端に素直に色んな技を披露してくれる。失礼なヤツだが、こういう所、根が素直なんだよなあ。

久しぶりにゆずとフィールドにでたけど、こうしてみると本当に技も多彩になったし思ってもいない動きをしている。前は結構俺にも腹パンくれてたから、パンチ主体かと思ってたんだけど、意外と全体的に足技が多いんだよな。

上段、下段蹴りやら膝蹴りやら横蹴りやらを敵に合わせて次々と繰り出した挙句、華麗な飛び蹴りまで見せてくれたけど、全体的にキックオンリーだ。ほとんどパンチ系を使っていない。


「え? だってキックの方が威力高いし、リーチも長いし。手加減しなくていい相手ならやっぱりキックでしょ」


当たり前でしょ? とばかりに小首を傾げるゆずに戦慄する。

お前の抉ってくるみたいなえげつない腹パンは、手加減の証なのか。そしてさっきの回し蹴りは本気の証……!

確かに、死ぬかと思った。


これだけ足技重視ならハイソックスだけじゃ心許ないから、足首の柔軟性を高めた上に靴底に金属仕込み、攻撃力まで付与した見た目愛らしい編み上げブーツを作ってやろうと思ったが、俺だけは攻撃できないセーフティを設けねばなるまい。
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