上 下
144 / 144

魔法屋さんへ

しおりを挟む
「まぁ、どうしてそんなことが分かりますの?」

「だっていきなりピアスくれるなんて不自然でしょ。いくら同族って言っても知らん顔だってできるわけだし」

「確かに……」

「しかも教えてくれる魔法が浮遊ときた。絶対にあの風の大精霊の面倒、押し付ける気だと思う」

「えっ!!!?」


そんないきなりピンポイントな!? って思ったけど、アイルゥ先生は自信ありげだ。


「さ、腹が減ってはなんとやら、だ。とりあえずさっさとご飯食べるよ!」


それだけ言うと、どんどんと先に歩いて行ってしまう。


「……ホントかねぇ」

「行けば分かる」


ジェードさんのボヤきに、リカルド様が何てことないみたいに答えた。リカルド様ってホント基本は落ち着き払ってるんだよね。

確かにリカルド様の言う通り、行ってみれば分かるんだろうけど……。

宿屋で美味しくご飯を食べて、早速エルフのおばあちゃんが営むという魔法屋さんに来たあたし達。

そのお店は街並みの中に紛れ込むみたいに普通な外観なのに、中に入ると木のウロみたいにまあるくて、ランプでもないぼんやりしたあかりがあっちこっちに灯ってるような、そんな不思議なお店だった。

あ、よく見たら天井が一面木の葉っぱで覆われてる。木漏れ日みたいに葉っぱの間から光が漏れて、店の中だなんて思えないくらい幻想的だ。いったいこれ、どうなってるの?


「いらっしゃい」


物珍しくてキョロキョロしていたら、奥の木の扉から白髪の小柄なおばあちゃんが現れた。このお方がエルフとは……まったくもって外見では分からない。おばあちゃんはあたし達をひとしきり見回してジェードさんの姿を認めると、柔和な顔に笑みを浮かべた。


「おや、こりゃあまた大勢で来たねぇ」

「すみません」

「初めまして。王立魔法学校で指導員を務めます、ステファン・アイルゥ・ザッカメントと申します」


申し訳なさそうに謝るジェードさんの前に、アイルゥ先生がずいっと進み出た。エルフ? のおばあちゃんは意外にもさほど驚いた様子も見せない。やっぱりお年を召すとちょっとしたことじゃ驚かなくなるのかな。


「おや、見た目通りのお人じゃないとは思ったが。先生さんかね」

「はい、うちの生徒に希少な浮遊の術を授けていただけると知りまして。ぜひ授かるところも目にしたく、彼に無理を言って同行させて貰ったのですよ」


アイルゥ先生が……! すごく真面目な先生っぽい会話を成立させている!!!


「随分と若いのを沢山連れてきたもんだねぇ」
しおりを挟む
感想 83

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(83件)

はなここ
2024.02.08 はなここ

再度一気読みしました。
やっぱり楽しかったです!
ユーリンがかわいいなぁと。読んでいて元気になるお話です😄
投票もさせていただきました⭐️

真弓りの
2024.02.08 真弓りの

ありがとうございます!
久しぶりにサイドストーリーをアップしてみました(^^)
もうしばらくお付き合いください…!

解除
Reika
2019.11.05 Reika

おいジェード、アリシアとくっつけよ(強制かよというのは気にしない( ˙꒳​˙ )w)
めっちゃ健気だろぉ!?( ゚д゚)クワッ

仲良い子に声かけようかな〜じゃないよ!(°Д°)クワワッ!!


ていうか惚気ありがとうございましたもうほんとこのコンビ好き_(:3 」∠)_

結婚後とか見てみたいです…いつか。

完結お疲れ様でした(*´ω`*)

解除
Reika
2019.11.05 Reika

ん〜、あれ?!これ完結しちまってる!??
とついさっきなりました。

今すぐ読んできます←

解除

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。