138 / 144
クアア、クルルッククカルゥ!
しおりを挟む
「なに、どうしたんですか?」
「クアア、クルルッククカルゥ!」
なんか言ってくれてるんだけどなー。ごめんなさい、分かんないよ。お母さんも通じないのが悔しいらしくってイライラとつばさをバタつかせている。
その時。
「大丈夫か!」
街の方から聞こえた声に振り返ったら、朝焼けの中に黒い点が見えた。……あれって、翼? と思ってじっと見れば、やがて人の姿に翼、というシルエットが海原の上を飛んでいる。その姿は徐々に近づいていた。
間違いない、絶対にユット君のお父さんだ。
「それ以上先に行っちゃいけない! 旋回して戻れ!」
遠くから、お父さんが叫ぶ声が聞こえる。きっとお母さんも同じような事を言ってくれてたんだろう。その緊迫した様子を見てあたしは思わずマッシュさんに声をかけた。
「マッシュさん! すみません、一旦船を止められますか!?」
「もうちょっとで転覆したポイントにつくんだぞ!?」
「現場につかないと意味がないんじゃありませんこと?」
マッシュさんはもちろん、アリシア様までが反論してくる。でも二人がこんなに必死に止めてくれてるんだもの。何か理由があってのことだと思うの。
「現場に突っ込むのは待ってくれませんか? 彼らの話を聞いてからでも遅くない」
「だよなー」
リカルド様とジェードさんがそう言ってくれて、全員の視線が自然とロマンスグレーなアイルゥ先生に注がれる。アイルゥ先生は、にっこりと笑って「船を止めよう」と判断をくだした。
「こちらに飛んできている彼は、昨日リカルド達の通訳をかって出てくれた人だろう?」
「そうです」
「マッシュさんを止めているのも、ユット君のお母さんだと思います」
「あー、なるほど」
そんな話をしているうちに、ユット君のお父さんがぐんぐん近づいてきて、足音さえ立てずに船へと着地する。そしてその肩に、ふわりとお母さんが舞い降りる。そして、「クアア……クルルッククカルゥ……」とお父さんになにか耳打ちした。
それに耳を傾けてから、お父さんがゆっくりとあたし達に歩み寄る。
「止まってくれてよかった。君たちがこの海域に入りかけた途端、気圧が嵐の前のように乱れ始めたと鳥たちから連絡があってね。昨日船が転覆した時と同じ現象だというものだから」
心配して止めにきてくれたのだという。昨日少し話しただけだというのに、優しい……!
「むしろそれは好都合だね。その原因を探りに来てるわけだし」
アイルゥ先生はニヤリとニヒルに笑う。大人アイルゥ先生は思いのほかダンディだ。
「クアア、クルルッククカルゥ!」
なんか言ってくれてるんだけどなー。ごめんなさい、分かんないよ。お母さんも通じないのが悔しいらしくってイライラとつばさをバタつかせている。
その時。
「大丈夫か!」
街の方から聞こえた声に振り返ったら、朝焼けの中に黒い点が見えた。……あれって、翼? と思ってじっと見れば、やがて人の姿に翼、というシルエットが海原の上を飛んでいる。その姿は徐々に近づいていた。
間違いない、絶対にユット君のお父さんだ。
「それ以上先に行っちゃいけない! 旋回して戻れ!」
遠くから、お父さんが叫ぶ声が聞こえる。きっとお母さんも同じような事を言ってくれてたんだろう。その緊迫した様子を見てあたしは思わずマッシュさんに声をかけた。
「マッシュさん! すみません、一旦船を止められますか!?」
「もうちょっとで転覆したポイントにつくんだぞ!?」
「現場につかないと意味がないんじゃありませんこと?」
マッシュさんはもちろん、アリシア様までが反論してくる。でも二人がこんなに必死に止めてくれてるんだもの。何か理由があってのことだと思うの。
「現場に突っ込むのは待ってくれませんか? 彼らの話を聞いてからでも遅くない」
「だよなー」
リカルド様とジェードさんがそう言ってくれて、全員の視線が自然とロマンスグレーなアイルゥ先生に注がれる。アイルゥ先生は、にっこりと笑って「船を止めよう」と判断をくだした。
「こちらに飛んできている彼は、昨日リカルド達の通訳をかって出てくれた人だろう?」
「そうです」
「マッシュさんを止めているのも、ユット君のお母さんだと思います」
「あー、なるほど」
そんな話をしているうちに、ユット君のお父さんがぐんぐん近づいてきて、足音さえ立てずに船へと着地する。そしてその肩に、ふわりとお母さんが舞い降りる。そして、「クアア……クルルッククカルゥ……」とお父さんになにか耳打ちした。
それに耳を傾けてから、お父さんがゆっくりとあたし達に歩み寄る。
「止まってくれてよかった。君たちがこの海域に入りかけた途端、気圧が嵐の前のように乱れ始めたと鳥たちから連絡があってね。昨日船が転覆した時と同じ現象だというものだから」
心配して止めにきてくれたのだという。昨日少し話しただけだというのに、優しい……!
「むしろそれは好都合だね。その原因を探りに来てるわけだし」
アイルゥ先生はニヤリとニヒルに笑う。大人アイルゥ先生は思いのほかダンディだ。
0
お気に入りに追加
1,450
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
盲目の公爵令嬢に転生しました
波湖 真
恋愛
2021年4月27日より青神香月先生によるコミカライズ版が始まりました。
とっても素敵な作品です!
是非コミカライズ版もご覧ください!
-------------
2020年10月第二巻で完結しました。
11月21日よりお礼番外編をアップいたします。
ーーーーーー
2020年3月に刊行いたしました。
書籍化あたり、該当部分を下げさせていただきました。
よろしくお願いします
書籍化のお礼にSSを追加しました。
本当にありがとうございました!
--------------
十八歳で病気で死ぬ直前に転生したいと願ったら出来ました。ただし盲目でした。少しずつ前世の常識とのギャップを感じる中アリシアの婚約者を狙う令嬢が現れてしまいました。そんな公爵令嬢の転生物語。
二日に一度の更新です。
宜しくお願いします。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる