魔法学校の無敵の首席騎士様は、ちょっとコミュ障、大型わんこ系でした

真弓りの

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なんだかデートみたい

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「みんな喜んでいたな」

「はい! 植物の成長促進なんて初歩の初歩の魔法であんなに喜んでもらえて嬉しいです」


たくさんの人から拍手喝さいを貰って、ちょっとウキウキした気分のまま、あたしとリカルド様は港沿いを歩いていた。あの食堂でたくさんの貴重な話が聞けたけど、宿屋に帰るにはまだ早いし、転覆した船にのっていた方への聞き取りは明日と決まっている。

なんせまだ気持ちも体も落ち着いていないだろうし、あたし達だって出来るならアイルゥ先生たちと合流してからの方がいいような気がしたから。


「それにしても、魚人さんたちもユットくんたちも、またいつでも協力するって言ってくれて良かったですね。すごく心強い!」

「獣人や店の人たちも好意的だった。ユーリンのおかげだな」


リカルド様に褒められて、嬉しさがじんわりとこみ上げてくる。リカルド様って言葉は多くないけど、本心で言ってくれてるっていうのがすごく伝わってきて、なんだかすごく幸せな気分になるんだよね……。


「しかしこの街は本当に歩いている人々も多種多彩だな」


ふと気がついたように、リカルド様が呟く。確かに道行く人は種族も様々、服装や装備から想像できる職業様々だった。船乗りばかりが多いわけでもなく、商人や冒険者風の人も多くて、この街に辿り着いた目的も様々なんだろうなぁと容易に想像できた。


「そうですね。船が出航できないから、みんなヒマを持て余して街を散策してるんでしょうか」

「そうかも知れないな。この街は店に並んでいる物も多彩だ」

「確かに! 色んな街から入ってきた物が売られてるんでしょうね」

「ああ、それに街を訪れる人々も一般の街とは違うだろうから、それに合わせている側面もあるのかも知れないな……おっと」


リカルド様の腕がさっと伸びて、あたしの体を引き寄せる。さっきまであたしがいた場所には、体中に傷の入ったゴツいリザードマンが我が物顔で歩いていた。やっぱりちょっと雰囲気が怖いなぁ。


「大丈夫か?」

「はい、リカルド様のおかげで」


見下ろしてくるリカルド様の表情が優しくて、なぜか照れる。


「良かった。ところでユーリン、あの店に入ってみないか。ユーリンが好きそうだ」

「はい……!」


気遣ってくれるのが嬉しくて、あたしの胸は勝手に鼓動が早くなっていく。なんでこんなにうきうきするのかって思ったけど、わかった、アレだ。

学園ではよく色々教えて貰ったり一緒に勉強したりしててよく一緒にはいたんだけど、こんな風に二人で街を歩くのって今までなくて……。

なんだか……なんだかデートみたいで、めっちゃ嬉しい……!
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