100 / 144
首席騎士様は、思いもかけない言葉をくれる
しおりを挟む
「ユーリン」
「……」
「ユーリン……!」
リカルド様があまりにも絞り出すみたいな声を出すから、心配になってしまう。返事した方がいいの? 顔を上げてもいい? リカルド様の顔が見たいよ。
「ユーリン、好きだ……!」
「!!!?」
信じられない言葉が聞こえた気がして、反射的に顔を上げた。
ゴッ……と鈍い音がして、頭頂部を痛みが襲う。
「ぐっ……」
「~~~~~~っっ」
痛ったぁ……リカルド様の顎に思いっきり頭突きしちゃったよ。リカルド様も地味に痛がってるみたいで申し訳ないけど、今はそれよりもどうしても気になることがある。
「ごめんなさい、リカルド様。でも、でも、今なんて言いました!?」
「う……ユーリンのことが、その、好きだと言ったのだが……迷惑、だろうか」
おずおずとリカルド様の腕が、鍛えられた体躯が、あたしの体から離れていく。もうあんなに激しく打っていたリカルド様の心臓の音も聞こえない。
「なんで、せっかく好きだって言ってくれたのに離れるんですか」
「いや、その」
「迷惑なわけないじゃないですか!」
逃げていこうとするリカルド様の体に、思いっきり飛びかかった。さほど揺らぐこともなく、リカルド様はしっかりと支えてくれる。驚いた顔のリカルド様に、あたしは満面の笑顔で叫んだ。
「あたしもリカルド様が好きです!」
こんなに早く、この言葉を口に出来るなんて思ってなかった。だって、数年がかりで告白しようと思ってたのに。
「……」
「聞こえました? リカルド様、大好きです」
ぽかんと口を開けた、リカルド様らしからぬ顔であたしを見下ろして固まってるから、重ねて伝える。この機を逃してなるものか。
「ほ、本当か。気を使っているわけでは」
「本当ですって。ていうか好きになったのはあたしの方が先です、多分。なんせさっきまで、魔法をめっちゃ勉強して強くなって、いつかリカルド様にかっこよく告白するんだって思ってましたもん」
「? 強くなるのが必要なのか?」
「だってあたし平民ですし。貴族のリカルド様に告白するなら、やっぱり国の魔法省とかからスカウトくるくらいの実力がないと」
考えたこともなかったのか「すごいな」と呟いたリカルド様は、やっとあたしの気持ちも本気なんだと分かってくれたらしくって、はにかんで「ありがとう」と言ってくれた。
テンパってた時は苦しいくらいぎゅうぎゅうに抱きしめてきたくせに、今はあたしに抱きつかれて手のやり場に困っているのが丸わかり。
やっぱりこういうところ、可愛いよね。リカルド様、大好きだなぁ。
リカルド様と一緒なら、どこにいたってきっとこんな風に幸せな気持ちでいられるんだろう。それこそ、リカルド様が言ったみたいに、二人で世界中を巡って魔物を倒す旅をしていたってきっと楽しいに違いない。
リカルド様を見上げて視線が合うと、ついつい笑顔がこぼれてしまう。
行きたくなくって「暴発とかで学校が吹っ飛ばないかな」なんて物騒なことを思ってスタートした『春の討伐演習』。
終わってみれば、こうして【Aランク討伐】【魔力覚醒】に加え、【大好きな恋人】までゲットするという未曾有の戦果をあげて終了したのだった。
終
***************************
100話ちょっきり、これにて完結です!
初めて最初から最後まで大まかなプロットを書いてスタートしたのはこの話が初めてで、色々楽しみながら書けました。
リカルド様とユーリンは、多分、これから伝説になるくらい強くなるんだろうなぁとか想像するとそれも楽しい二人でした。
強いのにヘタレなリカルド様を応援してくれた皆さま、ありがとうございました!少し間をおいてサイドストーリーをUPしますね。
ちなみに、今連載中の『大好きです、さようなら』も読んでみていただけると嬉しいです(^^)
「……」
「ユーリン……!」
リカルド様があまりにも絞り出すみたいな声を出すから、心配になってしまう。返事した方がいいの? 顔を上げてもいい? リカルド様の顔が見たいよ。
「ユーリン、好きだ……!」
「!!!?」
信じられない言葉が聞こえた気がして、反射的に顔を上げた。
ゴッ……と鈍い音がして、頭頂部を痛みが襲う。
「ぐっ……」
「~~~~~~っっ」
痛ったぁ……リカルド様の顎に思いっきり頭突きしちゃったよ。リカルド様も地味に痛がってるみたいで申し訳ないけど、今はそれよりもどうしても気になることがある。
「ごめんなさい、リカルド様。でも、でも、今なんて言いました!?」
「う……ユーリンのことが、その、好きだと言ったのだが……迷惑、だろうか」
おずおずとリカルド様の腕が、鍛えられた体躯が、あたしの体から離れていく。もうあんなに激しく打っていたリカルド様の心臓の音も聞こえない。
「なんで、せっかく好きだって言ってくれたのに離れるんですか」
「いや、その」
「迷惑なわけないじゃないですか!」
逃げていこうとするリカルド様の体に、思いっきり飛びかかった。さほど揺らぐこともなく、リカルド様はしっかりと支えてくれる。驚いた顔のリカルド様に、あたしは満面の笑顔で叫んだ。
「あたしもリカルド様が好きです!」
こんなに早く、この言葉を口に出来るなんて思ってなかった。だって、数年がかりで告白しようと思ってたのに。
「……」
「聞こえました? リカルド様、大好きです」
ぽかんと口を開けた、リカルド様らしからぬ顔であたしを見下ろして固まってるから、重ねて伝える。この機を逃してなるものか。
「ほ、本当か。気を使っているわけでは」
「本当ですって。ていうか好きになったのはあたしの方が先です、多分。なんせさっきまで、魔法をめっちゃ勉強して強くなって、いつかリカルド様にかっこよく告白するんだって思ってましたもん」
「? 強くなるのが必要なのか?」
「だってあたし平民ですし。貴族のリカルド様に告白するなら、やっぱり国の魔法省とかからスカウトくるくらいの実力がないと」
考えたこともなかったのか「すごいな」と呟いたリカルド様は、やっとあたしの気持ちも本気なんだと分かってくれたらしくって、はにかんで「ありがとう」と言ってくれた。
テンパってた時は苦しいくらいぎゅうぎゅうに抱きしめてきたくせに、今はあたしに抱きつかれて手のやり場に困っているのが丸わかり。
やっぱりこういうところ、可愛いよね。リカルド様、大好きだなぁ。
リカルド様と一緒なら、どこにいたってきっとこんな風に幸せな気持ちでいられるんだろう。それこそ、リカルド様が言ったみたいに、二人で世界中を巡って魔物を倒す旅をしていたってきっと楽しいに違いない。
リカルド様を見上げて視線が合うと、ついつい笑顔がこぼれてしまう。
行きたくなくって「暴発とかで学校が吹っ飛ばないかな」なんて物騒なことを思ってスタートした『春の討伐演習』。
終わってみれば、こうして【Aランク討伐】【魔力覚醒】に加え、【大好きな恋人】までゲットするという未曾有の戦果をあげて終了したのだった。
終
***************************
100話ちょっきり、これにて完結です!
初めて最初から最後まで大まかなプロットを書いてスタートしたのはこの話が初めてで、色々楽しみながら書けました。
リカルド様とユーリンは、多分、これから伝説になるくらい強くなるんだろうなぁとか想像するとそれも楽しい二人でした。
強いのにヘタレなリカルド様を応援してくれた皆さま、ありがとうございました!少し間をおいてサイドストーリーをUPしますね。
ちなみに、今連載中の『大好きです、さようなら』も読んでみていただけると嬉しいです(^^)
0
お気に入りに追加
1,446
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?
ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」
「はあ……なるほどね」
伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。
彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。
アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。
ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。
ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる