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【首席騎士:リカルド視点】全力を尽くすと誓う③

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「くっ……」


壁に背中をしたたかに打ち付けた兄が呻きながら立ち上がろうとする隙に、俺は自らに肉体強化とスピードアップの呪文を展開する。


「俺の一撃を防ぐとは、腕を上げたじゃないか!」


思いのほか早く体勢を立て直した兄が、一瞬で間を詰めて打ち掛かってくる。さすがに打たれ強い。

だが、俺も身体強化の恩恵を受けている身だ。先程よりもはるかに軽く受け止めることができた。兄の剣を跳ね上げこちらから積極的に幾度となく打ち込むが、驚くほど華麗に捌かれてしまう。

やはり、騎士団でトップをはるだけの実力はある。

このままでは埒があかないと判断した俺は、打ち込む剣に強力な重力魔法をかけた。


「くっ……! 急に重く……これも、魔法か?」


さすがに軽くはいなせなかったようで、兄が苦悶の表情を浮かべて俺の剣を受け止める。ギリギリと刃の擦れる向こうに見える兄の額には、ジワリと汗が滲んでいた。


「重力魔法です」

「いつものお前より、体捌きも剣筋も早い」

「肉体強化とスピードアップで身体能力を底上げしています」

「なるほど。……だが、その程度で俺に勝てると思うなよ?」


俺の重力魔法よりも、兄の筋力が優っていたらしい。渾身の力で押し戻され、俺は僅かに体勢を崩した。その隙を兄が見逃す筈もない。


「身の程を思い知るがいい!」


横から薙ぎ払うように繰り出された剣撃を強化した剣の腹でなんとか受け、俺は左手に魔力を集めた。身体強化などでこれほど補っても互角にしか持ち込めないとは、兄の素質がいかに素晴らしいか思い知らされる。

しかし、今日は俺も負ける気がしない。


「これも持ちこたえるか。なかなか楽しませてくれる」

「……負けません!」


ニヤリと笑う兄に、俺は人生初の啖呵を切った。


「珍しく、吠えるではないか!」


興が乗ったのか剣を一度引くと、兄は大きく振りかぶる。剣を持つ手に体中の気が凝縮していくのが見て取れた。この感じは見覚えがある。兄が鍛錬を重ねて開発した、大技に違いない。


「褒美に俺の技を見せてやろう!」

「!!!」


目に見えぬほどの速さで兄の剣先が空気を裂いた瞬間、凝縮された気が竜巻のような破壊力で俺に襲いかかる。とっさに防護壁を張ったが、それすら切り裂く。まるで強力な魔法を見た気分だ。


「終わりだ!」


衝撃波のような気が防護壁を打ち破ると同時に、目前に兄の剣先が迫る。技に溺れず追撃を欠かさない、確実に勝ちをつかみに来る……兄らしい貪欲さ。


「……!」

「リカルド様!」


ユーリンの叫び声が聞こえる。大丈夫だユーリン、心配は要らない。

俺は、一瞬で巨大な魔力を練り上げた。
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