25 / 144
首席騎士様は、教え導く
しおりを挟む
「美味そうだ」
「……!」
そう言って細められたリカルド様の目が思いのほか優しくて、なんだか急に恥ずかしくなってしまった。慌てて顔をそらしたあたしには気づかず、リカルド様は愛しそうに瑞々しい葉っぱを撫でている。
「え、えっと……じゃあ、今日はサラダにしますね!」
「やはりありがたいな。君のおかげでこんな荒れ地でも毎日新鮮な野菜が食べられる」
ああ、あたし、成長促進の魔法が得意で良かったなぁ。
嬉しくて、照れ臭くて、あたしは野菜をブチブチと大量に摘んでいく。成長促進のおかげで今や野菜は沢山あるし、今日は奮発しちゃうぞ!
「えへへ、このところ調子良くって。リカルド様に魔法を習ってるおかげかな」
「ユーリン、もしかして魔法を使うときに、これまでと何か違う感覚があるか?」
「え?」
急に真剣な表情になったリカルド様の様子に少し驚いたけれど、あたしはすぐに魔法を使っていたときの感覚を一生懸命に思い返してみた。
なんだか分からないけれど、生真面目なリカルド様が聞くんだもの、きっと重要なことなんだわ。
「ええと、そういえば今日は、成長促進の魔法をかけてるときに、なんだかお腹の中がじんわりあったかくなる感じがしたかも」
体がキンキンに冷えてるときにあったかい飲み物飲むと、お腹の中からあったかくなって、手足までジーンとするじゃない? そう、例えるならちょうどあんな感じだった。
「それだ」
「それって」
「それが、魔力だ。ユーリン、その暖かい感じを、意識して体に漲らせてみるんだ」
急にドキドキしてきた。一年間あんなに努力してきたのに、これっぽっちもお外に出てこようとしなかったあたしの魔力が、本当に顔を出そうとしているの?
「もう一度、成長促進の魔法をやってみるといい」
リカルド様に促され、あたしはラム豆の前に膝をつく。大きく息を吸って、呼吸を整える。ゆっくりと目を閉じて、成長促進の魔法を唱えた。
「……!」
お腹の中に、暖かい塊を感じる。
これを、意識して、体中に漲らせるイメージを持てばいいの?
熱の塊が夏の雲みたいにむくむくと膨らんで、お腹を中心に体中に染み渡っていく様をイメージしてみる。
あっ、すごい……!
指先まで力が漲っていく……!
「うわっ」
リカルド様の小さな声が聞こえたのとほぼ同時に、お腹のあたりにあった熱の塊が、急激に膨れ上がった。
「や……怖い……!」
熱の塊が大きな奔流となって体の中を暴れ回る。こんなの、とても制御できるような力じゃない……!
「……!」
そう言って細められたリカルド様の目が思いのほか優しくて、なんだか急に恥ずかしくなってしまった。慌てて顔をそらしたあたしには気づかず、リカルド様は愛しそうに瑞々しい葉っぱを撫でている。
「え、えっと……じゃあ、今日はサラダにしますね!」
「やはりありがたいな。君のおかげでこんな荒れ地でも毎日新鮮な野菜が食べられる」
ああ、あたし、成長促進の魔法が得意で良かったなぁ。
嬉しくて、照れ臭くて、あたしは野菜をブチブチと大量に摘んでいく。成長促進のおかげで今や野菜は沢山あるし、今日は奮発しちゃうぞ!
「えへへ、このところ調子良くって。リカルド様に魔法を習ってるおかげかな」
「ユーリン、もしかして魔法を使うときに、これまでと何か違う感覚があるか?」
「え?」
急に真剣な表情になったリカルド様の様子に少し驚いたけれど、あたしはすぐに魔法を使っていたときの感覚を一生懸命に思い返してみた。
なんだか分からないけれど、生真面目なリカルド様が聞くんだもの、きっと重要なことなんだわ。
「ええと、そういえば今日は、成長促進の魔法をかけてるときに、なんだかお腹の中がじんわりあったかくなる感じがしたかも」
体がキンキンに冷えてるときにあったかい飲み物飲むと、お腹の中からあったかくなって、手足までジーンとするじゃない? そう、例えるならちょうどあんな感じだった。
「それだ」
「それって」
「それが、魔力だ。ユーリン、その暖かい感じを、意識して体に漲らせてみるんだ」
急にドキドキしてきた。一年間あんなに努力してきたのに、これっぽっちもお外に出てこようとしなかったあたしの魔力が、本当に顔を出そうとしているの?
「もう一度、成長促進の魔法をやってみるといい」
リカルド様に促され、あたしはラム豆の前に膝をつく。大きく息を吸って、呼吸を整える。ゆっくりと目を閉じて、成長促進の魔法を唱えた。
「……!」
お腹の中に、暖かい塊を感じる。
これを、意識して、体中に漲らせるイメージを持てばいいの?
熱の塊が夏の雲みたいにむくむくと膨らんで、お腹を中心に体中に染み渡っていく様をイメージしてみる。
あっ、すごい……!
指先まで力が漲っていく……!
「うわっ」
リカルド様の小さな声が聞こえたのとほぼ同時に、お腹のあたりにあった熱の塊が、急激に膨れ上がった。
「や……怖い……!」
熱の塊が大きな奔流となって体の中を暴れ回る。こんなの、とても制御できるような力じゃない……!
0
お気に入りに追加
1,450
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
盲目の公爵令嬢に転生しました
波湖 真
恋愛
2021年4月27日より青神香月先生によるコミカライズ版が始まりました。
とっても素敵な作品です!
是非コミカライズ版もご覧ください!
-------------
2020年10月第二巻で完結しました。
11月21日よりお礼番外編をアップいたします。
ーーーーーー
2020年3月に刊行いたしました。
書籍化あたり、該当部分を下げさせていただきました。
よろしくお願いします
書籍化のお礼にSSを追加しました。
本当にありがとうございました!
--------------
十八歳で病気で死ぬ直前に転生したいと願ったら出来ました。ただし盲目でした。少しずつ前世の常識とのギャップを感じる中アリシアの婚約者を狙う令嬢が現れてしまいました。そんな公爵令嬢の転生物語。
二日に一度の更新です。
宜しくお願いします。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる