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あたしは、あたしの意思で
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許嫁ではなくなった、ただそれだけで一族からも追われるような里に愛着なんか持っていない。転生からそう経たずに寮暮らしに入ったからこの世界の父母にも数えるほどしか会っていないし、助けて欲しいとも思えない。
あたしには、この里で大切なものなんて、千尋様以外になにもないって、改めて思い知らされる。
なにより、妖気に弱いとわかりきっているあたしを無理矢理連れてきて、脅すように周り中から妖気を放ってみせる、その気持ちが嫌だった。
こんな里で、一族に虐げられながら生きていくなんてまっぴらだ。
今日、心底そう思った。
「真白……!」
あたしの大好きな顔で、そんな辛そうにしないで。千尋様の気持ちは嬉しいし、今では顔だけじゃなく、一生懸命に協力してくれたその気持ちだって大好きだ。
でもね。
「千尋様、あたしはもうこの里には戻らない。千尋様のことは大好きだけど、あたしは……あたしらしく生きていける、そんな場所を自分の力で見つけたい」
「真白!」
「足も立たぬくせに、言葉だけは頼もしいな、真白」
御屋形様が愉しげに笑う。その姿はあたしにとって、恐怖でしかない。それでも、あたしは縺れる舌で精一杯に吠えた。
「追い出されたあの時とは違う……! あたしは、あたしの意思で、ここから出て行く……!」
***
あれから三ヶ月。
真奈美さんもすっかり学園に馴染み、絢香さんは男の子へと姿を変えて、充実した学園生活を送っているらしい。名前とか、生徒がひとり増えるとか、諸々どうしたんだろって思ってたけど、雅様と千尋様が力尽くで何とかしてくれたっていうから流石だ。
まぁ確かに妖力がずば抜けて高い二人が協力すれば、学園の人々を惑わすことも可能なんだろう。
そう納得していたら、絢香さん改めワタルくんが「ちなみに学園の上層部は、雅が金で黙らせたらしい」と耳打ちしてくれて、あたしは金と妖力、二つの力が駆使されたことを悟った。
雅様のスパダリ感、半端ないよね。
そしてあたしは……。
「真白! 奥のお座敷に熱燗ふたつ、運んでおくれ」
「はーい!」
今も、淡雪さんの営む居酒屋でバイトをしつつ、『よろず仕事請負人』の仕事を続けている。
妖狐の里では泣いてばっかりでなんの役にも立てなかったあたしだけど、ここではやれることが沢山ある。今では看板娘と言ってくれる人も増えたし、顔を覚えて貰えたせいか、『よろず仕事請負人』として指名の仕事を請け負うことも増えてきた。
ただ……千尋様とは、もうあれからずっと、会っていない。
でも、いいんだ。
あたしは、そうなることも承知の上で、選んだんだから。
あたしには、この里で大切なものなんて、千尋様以外になにもないって、改めて思い知らされる。
なにより、妖気に弱いとわかりきっているあたしを無理矢理連れてきて、脅すように周り中から妖気を放ってみせる、その気持ちが嫌だった。
こんな里で、一族に虐げられながら生きていくなんてまっぴらだ。
今日、心底そう思った。
「真白……!」
あたしの大好きな顔で、そんな辛そうにしないで。千尋様の気持ちは嬉しいし、今では顔だけじゃなく、一生懸命に協力してくれたその気持ちだって大好きだ。
でもね。
「千尋様、あたしはもうこの里には戻らない。千尋様のことは大好きだけど、あたしは……あたしらしく生きていける、そんな場所を自分の力で見つけたい」
「真白!」
「足も立たぬくせに、言葉だけは頼もしいな、真白」
御屋形様が愉しげに笑う。その姿はあたしにとって、恐怖でしかない。それでも、あたしは縺れる舌で精一杯に吠えた。
「追い出されたあの時とは違う……! あたしは、あたしの意思で、ここから出て行く……!」
***
あれから三ヶ月。
真奈美さんもすっかり学園に馴染み、絢香さんは男の子へと姿を変えて、充実した学園生活を送っているらしい。名前とか、生徒がひとり増えるとか、諸々どうしたんだろって思ってたけど、雅様と千尋様が力尽くで何とかしてくれたっていうから流石だ。
まぁ確かに妖力がずば抜けて高い二人が協力すれば、学園の人々を惑わすことも可能なんだろう。
そう納得していたら、絢香さん改めワタルくんが「ちなみに学園の上層部は、雅が金で黙らせたらしい」と耳打ちしてくれて、あたしは金と妖力、二つの力が駆使されたことを悟った。
雅様のスパダリ感、半端ないよね。
そしてあたしは……。
「真白! 奥のお座敷に熱燗ふたつ、運んでおくれ」
「はーい!」
今も、淡雪さんの営む居酒屋でバイトをしつつ、『よろず仕事請負人』の仕事を続けている。
妖狐の里では泣いてばっかりでなんの役にも立てなかったあたしだけど、ここではやれることが沢山ある。今では看板娘と言ってくれる人も増えたし、顔を覚えて貰えたせいか、『よろず仕事請負人』として指名の仕事を請け負うことも増えてきた。
ただ……千尋様とは、もうあれからずっと、会っていない。
でも、いいんだ。
あたしは、そうなることも承知の上で、選んだんだから。
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