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参ったぜ、ホント

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絢香さんも手応えを感じているんだろう、雅様には見えないテーブルの下で、小さくガッツポースを作っている。


「貴方の奇行にそんな理由があったとは。あれは真奈美のことを思っての行動だったのですね」

「俺にできることなんて、それくらいしかないから」


そして伏し目がちだった絢香さんが、ついにまっすぐに雅様を見た。


「あいつが嫌がってるんなら、無理矢理連れて帰ったりしねえって誓う。だから、せめて会うだけでも許して欲しい……!」


大きな瞳に涙をためて言いつのる絢香さんのけなげな姿に、雅様はもう陥落寸前だ。少しの間の後、雅様はため息をついて目を閉じ、手元の鈴を軽く振った。


「仕方ないですね、ほんの少しだけ妥協してあげましょう」


雅様が柔和に微笑むと同時に、部屋の扉が開いて真奈美さんがおずおずと顔を出した。そしてその肩には、クダちゃんがちょこんと乗っかっている。

すごい!

ここにくるまであれだけウダウダ言ってたくせに、絢香さんったらほぼ一人で雅様を懐柔しちゃったじゃん! 

素直に感動して、そのあとちょっとした虚無に襲われた。なんだよもう、あたしと千尋様の覚悟を返して欲しい……。


***


真奈美さんも同席し、ようやく本題に入れたあたし達。

絢香さんと真奈美さんは、最初はぎこちなくお互いの近況を話したりしていたけれど、やがて絢香さんがあたしを雇ってまで真奈美さんの行方を捜していた、という話題になった。

そりゃあそうだ。その話題だけは避けては通れないもんね。

とはいえ、ここまでくるとあたしも千尋様ももはや空気だ。話の邪魔にならないように、クダちゃんのもふもふな体を撫でつつ、大人しくしているしかない。千尋様も手持ち無沙汰なのか、あたしをチラチラと見ている。

ごめんなさい、千尋様。あたしたち、別にここにいる必要なかったっぽいですね。

千尋様に悪くって、「ごめんなさい」の視線を千尋様に送っていたときだった。


「ごめんなさい」


その言葉が聞こえてドキッとする。うっかり口に出てしまったのかと思ったけれど、どうやらその言葉は、真奈美さんの口から出たものらしい。


「もう怒ってねーよ。お前……幸せに暮らしてたんだな」


思いのほかそう言った声が優しくて、思わず絢香さんに目を向けたら、絢香さんは困ったように笑っていた。


「ホントはさ、戻ってこいって……ちゃんと学園に通えって言おうと思ってたんだよ。でもさ、こんなに大事にされてんの見たら……参ったぜ、ホント」


ああ、絢香さんもあたしと同じように思ったんだね。二人を引き離すのは難しそうだって。諦めたような顔でうつむく絢香さんに、あたしはかける言葉が見つからなかった。
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