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あれが妹さん……?
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そうかー、くれぐれも変なスイッチを押さないようにしないとね。
そんなことを思いながら雅様を見ていたら、後ろから絢香さんにそっくりな女性が入ってきた。
あれが、妹さん……?
絢香さんに確かによく似ているけれど、雰囲気が全然違う。妹さんのほうがもっともっと儚げで、目を離すと消えてしまいそう。
顔も髪型もそっくりだというのに、立ち居振る舞いや表情、唇の開き方なんかで、こんなにも印象が変わるだなんて。
二人は穏やかな笑顔で二言三言、会話を交わす。まるで一枚の絵を見ているかのような美しい空間だ。
雅様は愛しそうに妹さんを見つめ、その白魚のような手をとって、手の甲にそっと唇を落とす。そのまま優しげに微笑んで、雅様は静かに部屋を出て行った。
あとに残された妹さんは、まるで夢を見ているような表情で、頬を染めたまま雅様が今までいた空間をぼんやりと見つめている。雅様が部屋を出て行ったことすら気がついていないんじゃないかしら。
なんというか、すごい甘い雰囲気……。
もしかしてこれって、妹さん、ものすごく幸せなんじゃないかなぁ。
だって推しに毎日会えて、話せて、しかもこれだけ甘々な空気出されたら、そりゃあ萌えるわ。
ようやく我にかえったのか、妹さんはまだ赤いほっぺたを両手でおさえ、目をきゅっと閉じてプルプルと頭を振っている。うんうん、分かるよその気持ち。
火照った顔を冷やしたいのか、妹さんが窓に歩み寄ってきた。思わぬチャンスに、私は一気に緊張する。窓をあけてくれさえすれば、一気に侵入が容易になるんだもの。
もちろんクダちゃんは窓や壁を通り抜けることができるけれど、結界を越えるのはそれなりに力をつかうものだから、できることなら開いた窓から中に入りたい。
ドキドキしながら、窓を開けてくれるのを待ったけれど、妹さんはまだどこかぽうっとした顔のまま、窓の外の景色を眺めるだけ。その悩ましげな表情は、ずっと見ていたくなるほど美しいけれど。
でも、このチャンスを無駄にするわけにはいかない。
私は、クダちゃんに窓に近づくようにお願いした。とにかく、まずは妹さんの視界に入らないと。
窓の外でくるくるっと円を描くようにクダちゃんが回転すると、ぼんやりと焦点があっていないようだった妹さんが、クダちゃんの細い体に目をとめた。
「か、可愛い~!」
おお、妹さんの目がキラッキラしてる! どうやらクダちゃんの長細いモフモフボディがお気に召したらしい。良かった。
そんなことを思いながら雅様を見ていたら、後ろから絢香さんにそっくりな女性が入ってきた。
あれが、妹さん……?
絢香さんに確かによく似ているけれど、雰囲気が全然違う。妹さんのほうがもっともっと儚げで、目を離すと消えてしまいそう。
顔も髪型もそっくりだというのに、立ち居振る舞いや表情、唇の開き方なんかで、こんなにも印象が変わるだなんて。
二人は穏やかな笑顔で二言三言、会話を交わす。まるで一枚の絵を見ているかのような美しい空間だ。
雅様は愛しそうに妹さんを見つめ、その白魚のような手をとって、手の甲にそっと唇を落とす。そのまま優しげに微笑んで、雅様は静かに部屋を出て行った。
あとに残された妹さんは、まるで夢を見ているような表情で、頬を染めたまま雅様が今までいた空間をぼんやりと見つめている。雅様が部屋を出て行ったことすら気がついていないんじゃないかしら。
なんというか、すごい甘い雰囲気……。
もしかしてこれって、妹さん、ものすごく幸せなんじゃないかなぁ。
だって推しに毎日会えて、話せて、しかもこれだけ甘々な空気出されたら、そりゃあ萌えるわ。
ようやく我にかえったのか、妹さんはまだ赤いほっぺたを両手でおさえ、目をきゅっと閉じてプルプルと頭を振っている。うんうん、分かるよその気持ち。
火照った顔を冷やしたいのか、妹さんが窓に歩み寄ってきた。思わぬチャンスに、私は一気に緊張する。窓をあけてくれさえすれば、一気に侵入が容易になるんだもの。
もちろんクダちゃんは窓や壁を通り抜けることができるけれど、結界を越えるのはそれなりに力をつかうものだから、できることなら開いた窓から中に入りたい。
ドキドキしながら、窓を開けてくれるのを待ったけれど、妹さんはまだどこかぽうっとした顔のまま、窓の外の景色を眺めるだけ。その悩ましげな表情は、ずっと見ていたくなるほど美しいけれど。
でも、このチャンスを無駄にするわけにはいかない。
私は、クダちゃんに窓に近づくようにお願いした。とにかく、まずは妹さんの視界に入らないと。
窓の外でくるくるっと円を描くようにクダちゃんが回転すると、ぼんやりと焦点があっていないようだった妹さんが、クダちゃんの細い体に目をとめた。
「か、可愛い~!」
おお、妹さんの目がキラッキラしてる! どうやらクダちゃんの長細いモフモフボディがお気に召したらしい。良かった。
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