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爆弾発言、いただきました。

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「いや、やっぱ俺の命が危ないっつうか」

「命?」


なんか急にぶっそうな話になった!


「え、なんなの。意味が分からない」


そういうと、絢香さんが渋々、唇を尖らせたままこんな話をしてくれた。


「いや前にさ、セカンドやった? って聞いたことあったろ?」

「あったね、そういえば」


あれはまだ、出会って間もないころの事だった。知らないと答えたら、「じゃあ知らない方がいい、面倒な事になる」って絢香さんに言われたんだっけ。


「俺ね、そのセカンドのラスボス的存在なわけよ」

「はあ!?」


爆弾発言、いただきました。

ちょっと待って、ちょっと待ってよ?


「乙女ゲームのラスボスっていったら……ライバル? え??? 絢香さんって男よね?」


おおお!? すごいなー、セカンドはそんな進化をしてたのか。昨今の乙女ゲームは凄い。

あ、だからもしかして今もあんな態度でも攻略対象者たちとラブラブな感じなのかな。

めっちゃ感心していたら、真っ赤になった絢香さんに渾身のチョップを貰ってしまった。見た目は愛らしくても腕力は男の子。地味に痛い。


「違うわ! セカンドはバトル要素もあったの!」

「バトル」

「そーだよ。実はヒロインの家って陰陽師の家系でさ、ヒロインはそのせいもあって妖の知識も深いし、理解や耐性があるんだよ」


知らなかった……! 確かに攻略対象者が妖だってことすぐに受け入れてたし、その妖ゆえの悩みや感覚の違いも聖母のように大らかな愛で包み込んでいた。

順応早いなーとは思っていたけれど、まさかそんな裏設定があっただなんて。


「セカンドではさ、陰陽師としての仕事は、兄……まあ、俺なんだけど。そっちが継いでて、ヒロインは妖が悪さをしないように学園で内偵してるって設定なんだ」

「えっ、じゃあ妖とは敵対関係なの?」

「いや、別に。いくら陰陽師でも、悪ささえしなけりゃ妖だからってだけで危害を加えようってんじゃねえさ」


すっかり女の子らしい仕草も板についてきた絢香さんが、鴉の濡れ羽色の美しい髪を指先でくるりと触る。小さな唇がちょっぴり尖っているのも無駄に可愛い。


「でも、じゃあラスボスって」

「ばーか、考えてもみろよ。妖と恋仲になったなんて、親兄弟から見たら『誑かされた』ってなるに決まってんだろ」

「あ、なるほど」

「しかもお前の『千尋サマ』みたいに許嫁が決まってる奴も多いからさ、妖サイドからの妨害とかもあるわけよ」

「意外にヘビーね」

「バトル要素ありだからな。許嫁本人だったり、親族だったりがちょっかいかけてくるから、ヒロインの絢香はそれなりに危ない目にもあうわけ」
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