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可愛いんだから!

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あらやだ、ニヤニヤが止まらない。

私のあからさまににやけた顔を見て、絢香さんは分かりやすく真っ赤になった。可愛いなあ、微笑ましくってこっちまでついつい顔が笑ってしまう。

攻略対象の殿方達には暴言はもちろん手足が出る事も往々にある乱暴者の絢香さんだけど、実は純情、奥手だったりするんだろうか。

それにしても、さおりちゃんに惚れちゃうとはお目が高い。いつだって全力でヒロインの幸せを願い、控えめに微笑む彼女だが、その実夢見がちでシンデレラストーリーに純粋に憧れたりするところもある可愛い一面も持っている人だ。

私はサポーター役の彼女がとっても好きだった。

この世界に来てからは、さすがに立場上近くに寄ることは出来なかったけれど、本来のゲームでのヒロインに比べたらかなりガサツな絢香さんの横でも、いつもニコニコと楽しそうに笑っている。彼女の笑顔には私だって癒されていた。

さおりちゃんからも嘘偽りなく絢香さんのことが大好き!というオーラが放出されまくってるんだから、絢香さんったらイケメン侍らせてないで、さおりちゃんと付き合っちゃえばいいのに。

……って、今は女の子の格好してるんだから、言いたくても言えないか。

さおりちゃんだって、今の状況じゃお友達として絢香さんのこと大好きなだけだろうしなあ。


よし、ここは私が一肌脱ぐしかない。絶対に妹さんを見つけなくっちゃ!


私の闘志に特大の炎が灯った。


「任せて、絢香さん! 私、頑張る!」

「ちょ、な、な、な、何を!? ち、違うから! いつもお世話になってるから可愛いのあげたいって思ってるだけで、その、ホント違うから!」


鬼寺様の手前、何を頑張ると明確に言えなかったばっかりに、絢香さんを慌てふためかせる羽目になってしまった。でも、絢香さんがとんでもなく可愛かったからよしとする。


「? 何がちがうんだ?」


あきらかに挙動不審な様子の絢香さんに、鬼寺様が素直にツッコミを入れる。武士の情けで、そこは聞き流してあげてください、鬼寺様。


「えっと、えっと、その……あーもう! 真白、早く!」

「分かった、分かった、お任せあれ」


もはや赤さも限界な様子の絢香さんがさすがに可哀想になってきたから、からかうのはこれくらいにしといてやろう。


「えーっと、携帯できる小物入れとアロマライトだよね」

「う、うん」

「どっちも可愛い、なかなかセンスいいじゃない」


そう褒めたら、絢香さんの顔がパアッと明るくなる。どうやらよっぽど自信がなかったらしい。

でも、本当にいいチョイス。たしかさおりちゃんは、ハーブティーとかアロマとか、香りがいい物が好きなんじゃなかったっけ? 『喜ばれるプレゼント』にそんな記述があった筈。

私は、アロマライトを手に取った。
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