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まさか、まさか、もしかして

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「真白ってば、なんでまたこんなとこに居んの?」


絢香さんが嬉しそうな笑顔で、屈託なく話しかけてくれるから、鬼寺様も穏やかな顔で見守ってくれている。鬼寺様は見た目が尋常じゃなくでっかくて怖いけど、気は優しくて力持ちって感じの方なのだ。

とはいえ、正直にここにいる理由を話してしまうわけにもいかない。私は絢香さんにだけ分かるように、オブラートに包んで話す事にした。


「蒲田の方で手がかりなしだったの。だから」

「蒲田……?」


意味ありげに視線を送れば、しばらく小首を傾げていた綾香さんは、急にハッとした顔で「あー、あー!なるほど、それでね!」と大きく頷いてくれた。どうやら通じたらしい。


「そんなわけで今忙しいの」


千尋様に見つかるリスクを負いながら、私は必死で雅様を探しているのだ。ここでおしゃべりしていて見逃したなんて、そんな悲しい事にはなりたくない。

そんな思いを込めて見つめたら、絢香さんは「そっかー……」となぜかちょっと残念そう。


「どうかした? なんか残念そうだけど」

「ん。たいした事ないんだけど……ちょっと、意見もらえると嬉しいっていうか」


なんか急にもじもじし始めた!


「えーと、コレとコレ、どっちが可愛いと思う?」


あさっての方向を向きながら、それでも目の前にずいっと出されたそれは、とっても可愛らしい小物だった。

ひとつはお花が浮き彫りになったまるでジェルネイルみたいな携帯小物入れ。本当にちっちゃくって、手のひらの中にすっぽりと納まるくらい。これってきっとバッグにつけて持ち歩いたりできるのね。

そしてもう一つは繊細な透かし彫りがとても綺麗なアロマライト。きっと部屋を暗くして灯りをともしたら、幻想的な光が広がるんだろう。香りも楽しめて。視覚的にも癒されるっていいよね。

どっちも可愛いけど……。


「え、なに。私の好みで選べばいいの?」

「い……いや、その。ええと」


なに、このかつてないモジモジっぷり。頬をほんのり紅らめて視線があっちへ行ったりこっちへ行ったりと忙しなく動いている。さすがの私もピンときた。


「もしかして、誰かにプレゼント?」

「う……うん」

「友人の新庄さおりに贈りたいんだそうだ」


はっきりしない絢香さんの様子に、見兼ねたように鬼寺様が助け船を出す。

新庄さおりって……超、聞き覚えがある。

たしか、親友ポジションのサポートキャラだ。ヒロインのためにたくさんの助言と攻略対象者の詳細な情報をくれるというのに、決して出しゃばってこない優しく頼りになる女の子。ちなみにノンフレームのメガネと安定のおさげが愛らしいじみっ娘である。


「俺ではなんの助言もできなかった。同性の目から助言が欲しいんだろう」


絢香さんに代わって淡々と用件を告げる鬼寺様の横で、絢香さんはしきりにモジモジしっぱなし。

これって……まさか、まさか、もしかして。
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