21 / 60
好みのタイプは?
しおりを挟む
「わかった、とりあえずこれでやってみる」
私がそう告げると絢香さんは心底ほっとしたように息をつき、嬉しそうに破顔した。
「よし! 頼んだぜ」
「うん、やれるだけやってみるから、また色々と思い出しといてね」
「だ~か~ら~、これで全部だって! あいつと一緒にいた時間なんてホント僅かなんだから」
うん、それは前にも聞いた。でも今回みたいに何かをきっかけに思い出す事もあるかも知れないじゃない。
「ちなみにさあ、妹さんの好みのタイプとかって分からない?」
「は?」
「だってここって乙女ゲームの世界じゃない。妹さんだってこのゲームやってたんでしょ?」
ちなみに私は完全に千尋様が好みだ。
「好きなキャラはさ、攻略するには敷居が高くても、陰ながら見たいなあって思うんじゃない?」
「なるほど……」
「逃げる前に、それっぽい事言ってなかった?千尋様とか八雲様とか風牙様とか」
「待て! ちょっと待て、思い出すから!」
おおお、脈あり!
そりゃそうだよね! なんせ私だって千尋様はあんなに怖くて仕方なかったのに、それでもあの麗しいお姿は遠くから見たかった。きっと妹さんだって見たかった筈だもの。
「なんか、言ってた気がする。何回その名前出すんだよって思ったんだ、確か」
「うんうん」
「ええと」
頑張れ!
「うぜえヤツ」
「はい?」
「名前、思い出せねえ。なんかいるだろ、こう纏わりついてくるみたいにジットリした視線の……白蛇?」
「白蛇。雅様?」
「そう、それ」
病的に白い肌、サラサラの真っ直ぐな銀髪が美しいお方だ。確かにいつも優しく見守って下さるけれど好感度が高まってから他の人に乗り換えたりするとそりゃあもう恐ろしいヤンデレっぷりを見せると評判だった。
ちなみに詳しくは知らない。ヤンデレは苦手だから、雅様のルートは試してなかった。今となってはそれが悔やまれるけど、さすがにこれは仕方ない。
「そういやアイツはあんまりベタベタして来ねえな。いつも遠くからジロジロ見てくるだけだ」
「雅様が?」
「ああ。なんかこう意味ありげにジトッとした目で見て来やがって、根暗で怖えーんだって」
酷い言われようですよ、雅様。ちょっと怒ってもいいかも知れません。
「ふうん、ちょっと気になるね。とりあえず蒲田の方あたってみて、それでもダメなら雅様周辺もあたってみようかな」
「よし、頼んだ!」
「頼まれた」
必要経費を気前よく置いて、絢香さんが去っていく。
店の暖簾を片手で上げて、ヒラヒラと手を振りながら見送っていたら、不意にジットリとした視線を感じて、ちょっぴり背中がぞくりと震えた。
さっき絢香さんが言ってたよね、ジットリした視線を感じるって……まさか、雅様?
私がそう告げると絢香さんは心底ほっとしたように息をつき、嬉しそうに破顔した。
「よし! 頼んだぜ」
「うん、やれるだけやってみるから、また色々と思い出しといてね」
「だ~か~ら~、これで全部だって! あいつと一緒にいた時間なんてホント僅かなんだから」
うん、それは前にも聞いた。でも今回みたいに何かをきっかけに思い出す事もあるかも知れないじゃない。
「ちなみにさあ、妹さんの好みのタイプとかって分からない?」
「は?」
「だってここって乙女ゲームの世界じゃない。妹さんだってこのゲームやってたんでしょ?」
ちなみに私は完全に千尋様が好みだ。
「好きなキャラはさ、攻略するには敷居が高くても、陰ながら見たいなあって思うんじゃない?」
「なるほど……」
「逃げる前に、それっぽい事言ってなかった?千尋様とか八雲様とか風牙様とか」
「待て! ちょっと待て、思い出すから!」
おおお、脈あり!
そりゃそうだよね! なんせ私だって千尋様はあんなに怖くて仕方なかったのに、それでもあの麗しいお姿は遠くから見たかった。きっと妹さんだって見たかった筈だもの。
「なんか、言ってた気がする。何回その名前出すんだよって思ったんだ、確か」
「うんうん」
「ええと」
頑張れ!
「うぜえヤツ」
「はい?」
「名前、思い出せねえ。なんかいるだろ、こう纏わりついてくるみたいにジットリした視線の……白蛇?」
「白蛇。雅様?」
「そう、それ」
病的に白い肌、サラサラの真っ直ぐな銀髪が美しいお方だ。確かにいつも優しく見守って下さるけれど好感度が高まってから他の人に乗り換えたりするとそりゃあもう恐ろしいヤンデレっぷりを見せると評判だった。
ちなみに詳しくは知らない。ヤンデレは苦手だから、雅様のルートは試してなかった。今となってはそれが悔やまれるけど、さすがにこれは仕方ない。
「そういやアイツはあんまりベタベタして来ねえな。いつも遠くからジロジロ見てくるだけだ」
「雅様が?」
「ああ。なんかこう意味ありげにジトッとした目で見て来やがって、根暗で怖えーんだって」
酷い言われようですよ、雅様。ちょっと怒ってもいいかも知れません。
「ふうん、ちょっと気になるね。とりあえず蒲田の方あたってみて、それでもダメなら雅様周辺もあたってみようかな」
「よし、頼んだ!」
「頼まれた」
必要経費を気前よく置いて、絢香さんが去っていく。
店の暖簾を片手で上げて、ヒラヒラと手を振りながら見送っていたら、不意にジットリとした視線を感じて、ちょっぴり背中がぞくりと震えた。
さっき絢香さんが言ってたよね、ジットリした視線を感じるって……まさか、雅様?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
64
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる