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今日は驚きの連続です。

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「そこまで、続きは応接でおやりなさいな」

混乱する私の肩になよやかな手が置かれる。振り返れば、淡雪さんが若干困った顔で立っていた。

「店の入口で大きな声を出されると困るからねえ、奥で話しなさいな」

「はい……」

なんだかもう、重ね重ねすみません。

淡雪さんに支えられてさっきの応接に戻ってきたあたしは、今度はようやくきちんと椅子に腰掛ける事ができた。

対面には千尋様がお怒りのご様子で鎮座していらして、あたしはもう、プルプルと震える他ない。

「店主、すまぬが席を外しては貰えぬか」

「こんなに怯えているこの子をほっとけるわけないだろう?」

自らも妖だと言っていた淡雪さん。千尋様の尋常ならざる妖気は痛いほど感じているだろうに、そうやってあたしを庇ってくれるのは、本当に本当にありがたい。

でも。

「淡雪さん……ありがとうございます。でも、千尋様は……とても紳士な、お方で……大丈夫、です」

「ボロ泣きで言われてもねえ」

「千尋様の、妖力の強さに反応して……勝手に、こうなっちゃうんですぅ」

「そうねえ、ちょっと凄いものねえ」

妖艶に口元に手を当てた淡雪さんは、口元をフッとあげると千尋様にこっちが見惚れるような流し目を送った。

「ボウヤ、そんなに威嚇するものじゃない。妖力なんてものはねえ、必要な時に必要なだけ見せればいいんだよ?」

そう言った淡雪さんの体から、一瞬だけ、千尋様を軽く凌駕する妖気が放たれた。

「……! ……!!!」

あまりの妖力の強さに、あたしは声も出せずに椅子から飛び上がり、気がついた時には部屋の片隅でガタガタガタガタ震えていた。毛穴まで全部開いたみたいに体中がぞわぞわして、冷や汗が止まらない。

今日だけで、一生分泣いたかも知れないくらい涙が出てる。鼻水も堰き止められなかった。

ああ良かった。ギリギリちびっちゃたりはしなかったらしい。

「お……お前、何者だ!」

「普通に居酒屋の主、別にそれでいいだろう? このご時世、妖として生きるよりどう人間達と共存するかの方が大事なのさ」

しゃなりしゃなりと優雅にこちらに歩んでくる淡雪さんの体からは、もはやあんな殺されそうな妖気なんか微塵も感じない。あんなに怖い妖気だったのに、姿からも妖気からも、淡雪さんがどんな妖だったのかすら分からなかった。

「悪かったねえ、怖がらせて。こんなに瞬間でも反応するなら、次はもっと絞るから許しておくれ」

そう言って涙と鼻水を拭いてくれる淡雪さんは、もういつもの優しくて綺麗な淡雪さんだ。
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