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お前に拒否権ねえから

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あたしが答えずに悩んでいると、絢香さんはさめざめと泣き始めた。

「だいたい何なんだよ、あのうぜえ男ども。好感度がっつり下げる筈の返ししかしてねえのに、何で俺に纏わりついてくるんだよぉ、怖えーんだよMかっつーの」

「え、そうなの?てっきりセカンドってそういう攻略方法なのかと」

「どんなゲームだよ、レア過ぎんだろ」

あ、やっぱりそうなのね。良かった、世界観が変わったわけじゃなかったんだ。大好きなゲームのセカンドが思わぬ変化を遂げてなくて一安心だ。

だけど……そうなると、別の疑問が出てくるんだけど。

「でもさ、千尋様とは付き合ってるんでしょ?」

「だから付き合ってねえって言ってんじゃねーか。あいつが勝手に俺を嫁にするって言ってるだけだ。本物の絢香が戻ってきたら熨斗つけて押し付けてやる。その他のM野郎共も全部な!」

「そうなんだ、ちょっと可哀想かも」

「ハア!?」

「だって今絢香さんの周りにいる人ってね、多分あんまり他の人から普通に接して貰えない人なんだよね、千尋様とか特に。だから歯に衣着せずズバズバ物を言ってくれるのが嬉しいんじゃないかな」

「そんなもんか?」

「うん。だからさ、もう割り切って千尋様と結婚しちゃえば? 逆玉に乗るんだって言ってたじゃん」

「だから俺は男だっつうの、何回言わせるんだ」

「知ってるけど……千尋様だってその上で妻にするって言ったと思うよ? あたしですら絢香さんが男の人だって簡単に分かるんだもん、千尋様に分からないわけないじゃない」

「怖い事言うな!」

「いざとなれば多分、千尋様なら性別変えられると思うよ? 半端ない妖力なんだもん。女の人になったらさあ、千尋様、多分めっちゃ美人だよ」

「ふざけんな、危うく想像するとこだったじゃねーか! 怖いわ!」

自分の体を自分でギュッと抱っこして、震え声を出す。

「ますます本物の絢香を早いとこ探し出さねーと、俺の心が折れる。マジ泣きそう」

そう言いつつ、人の尻尾もふもふするの止めてくれないかな。

「いいな、顔は俺とそっくり、でもコミュ症だって自分で言ってたから、あんま華やかな場所にはいねーと思う。礼金ははずむ、必要経費も出す、だから絶対、探し出せよ!」

おお、必要経費も出してくれるのか、嬉しいかも! ていうか必死だなあ、本当に嫌なんだ。

「言っとくけど、お前に拒否権ねえから」

ううむ、床に座り込んだ状態で涙目かつ上目遣いでそう言われても、可愛さしかない。変なところで女子力高いよねえ、と感心してたら「分かってんのか!?」と凄まれた。

うん、凄く可愛いって事は分かったよ。ヨシヨシと今度は逆に頭を撫でてやり、あたしは必要経費とやらをちゃっかり貰って笑顔で絢香さんを送り出した。

よっしゃ、と腕まくり。

早速調査に行こうと居酒屋の暖簾をくぐろうとした時だった。

「大丈夫か、真白!」

思わぬ人が、現れた。
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