1 / 6
あの交差点で
しおりを挟む
彼を初めて見たのは、真昼の交差点。
引っ越して来たばっかりの街で新生活には足りない物も割とあって、物珍しさも手伝って繁華街に買い物に来ただけだったのに。重い荷物に絶望しながら交差点を渡っていて、ふと、違和感を感じた。
あれ?交差点の真ん中でずっとつっ立ってる人がいる?
目をあげると、そこにいたのは血まみれで、目の焦点も合ってない……そんな、バリバリの地縛霊。
おお……何あれ、怖っ!ヤバいヤバい。
目が合ったりなんかして、変なちょっかいかけられたらたまったもんじゃない。
初めての一人暮らしだっていうのに、あんな血まみれ連れて帰って二人暮らしなんて、目も当てられない。
私は彼を見ないようにして足早にその場を立ち去った。
そこそこ見えるけど、別に霊能力とやらが高いわけでもない私にできる最大にして唯一の防御は『無視』なんだよね。
もちろんそれからも私は極力その交差点は渡らなかったし、渡る時にはとにかく無心を心がけた。
そのスタンスが変わったのは、彼を最初に見かけてから、二年は経っていたかと思う。
交差点の彼をちょうど見渡せる場所に私のお気に入りのカフェがなければ、そのスタンスはきっと一生変わらなかっただろう。
その日もお気に入りのカフェで、お気に入りのロシアンティーを飲みながら、何気なく外を見たんだ。
交差点に、彼が見えた。
彼はニ年経ってもその場所で、誰にも興味を示さずに、ただ立ち尽くしているように見えた。あの場所で事故にあったんだろうなあ。あんなに血まみれで、きっと酷い事故だったんだろう、可哀想に……おっと、いやいや、下手な同情はダメだったら。
あれ?
でも、なんか……最初に見た時よりも、若干、血まみれ感が減ってない?前は服の色なんて分からないくらいの血まみれっぷりだったよね?
なんて考えていたら。
突然、彼が、動いた。
ええっ??
動くとこなんて、初めて見たよ??
もしや単なる地縛霊から、悪霊にランクアップ??
混乱しながらも彼の動いた先を見たら、横断歩道の真ん中で転んだ女の子を助け起こすように動く彼の姿があった。しかも女の子の服をパタパタと叩いてあげているように見える。触れるわけもないのに。
女の子は、何か違和感を感じたのか周りをキョロキョロと見回した。首を傾げるその顔にもう涙はないみたい。自分が横断歩道の真ん中にいる事に気付いた彼女は、慌てて横断歩道を渡りきり、そのままかけていった。
そして私は見たんだ。
その跳ねるような可愛い後ろ姿を満足気に見送る彼の顔に、ほんの少し笑顔が浮かんだのを。
そして彼の姿が、ほんの少しだけ ……綺麗になるのを。
見間違いかと思った。
だって今までたくさんの霊を見てきたけれど、こんな光景を見たのは初めてで、とても信じられなかったから。それでもその光景は私の脳裏に焼き付いて、私はふと気づくと彼のことを考えていた。
引っ越して来たばっかりの街で新生活には足りない物も割とあって、物珍しさも手伝って繁華街に買い物に来ただけだったのに。重い荷物に絶望しながら交差点を渡っていて、ふと、違和感を感じた。
あれ?交差点の真ん中でずっとつっ立ってる人がいる?
目をあげると、そこにいたのは血まみれで、目の焦点も合ってない……そんな、バリバリの地縛霊。
おお……何あれ、怖っ!ヤバいヤバい。
目が合ったりなんかして、変なちょっかいかけられたらたまったもんじゃない。
初めての一人暮らしだっていうのに、あんな血まみれ連れて帰って二人暮らしなんて、目も当てられない。
私は彼を見ないようにして足早にその場を立ち去った。
そこそこ見えるけど、別に霊能力とやらが高いわけでもない私にできる最大にして唯一の防御は『無視』なんだよね。
もちろんそれからも私は極力その交差点は渡らなかったし、渡る時にはとにかく無心を心がけた。
そのスタンスが変わったのは、彼を最初に見かけてから、二年は経っていたかと思う。
交差点の彼をちょうど見渡せる場所に私のお気に入りのカフェがなければ、そのスタンスはきっと一生変わらなかっただろう。
その日もお気に入りのカフェで、お気に入りのロシアンティーを飲みながら、何気なく外を見たんだ。
交差点に、彼が見えた。
彼はニ年経ってもその場所で、誰にも興味を示さずに、ただ立ち尽くしているように見えた。あの場所で事故にあったんだろうなあ。あんなに血まみれで、きっと酷い事故だったんだろう、可哀想に……おっと、いやいや、下手な同情はダメだったら。
あれ?
でも、なんか……最初に見た時よりも、若干、血まみれ感が減ってない?前は服の色なんて分からないくらいの血まみれっぷりだったよね?
なんて考えていたら。
突然、彼が、動いた。
ええっ??
動くとこなんて、初めて見たよ??
もしや単なる地縛霊から、悪霊にランクアップ??
混乱しながらも彼の動いた先を見たら、横断歩道の真ん中で転んだ女の子を助け起こすように動く彼の姿があった。しかも女の子の服をパタパタと叩いてあげているように見える。触れるわけもないのに。
女の子は、何か違和感を感じたのか周りをキョロキョロと見回した。首を傾げるその顔にもう涙はないみたい。自分が横断歩道の真ん中にいる事に気付いた彼女は、慌てて横断歩道を渡りきり、そのままかけていった。
そして私は見たんだ。
その跳ねるような可愛い後ろ姿を満足気に見送る彼の顔に、ほんの少し笑顔が浮かんだのを。
そして彼の姿が、ほんの少しだけ ……綺麗になるのを。
見間違いかと思った。
だって今までたくさんの霊を見てきたけれど、こんな光景を見たのは初めてで、とても信じられなかったから。それでもその光景は私の脳裏に焼き付いて、私はふと気づくと彼のことを考えていた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
【完結】瓶詰めの悪夢
玉響なつめ
ホラー
とある男が行方不明になった。
その状況があまりに奇妙で、幽霊の仕業ではないかとそう依頼された心霊研究所所長の高杉は張り切って現場に行くことにした。
八割方、依頼主の気のせいだろうと思いながら気楽に調査を進めると、そこで彼は不可思議な現象に見舞われる。
【シャケフレークがない】
一体それはなんなのか。
※小説家になろう でも連載
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
意味が分かると怖い話(自作)
雅内
ホラー
2ch大好きの根暗なわたくしが、下手の横好きで書き連ねていくだけの”意味が分かると怖い話”でございます。
コピペではなくオリジナルとなりますので、あまり難しくなく且つ、不快な内容になるかもしれませんが、何卒ご了承くださいませ。
追記:感想ありがとうございます。
追加で順次解説を記述していきたいと思います。解釈の一つとしてお読みいただけますと幸いです。
瞳の奥の漁火~女をいたぶる狂気の女~
黒野拓海
ホラー
【第1部 ナミが来る!】
美菜の前に、突如現れた狂気の女〝ナミ〝。
なぜ私のところに?
ひたすら私に苦痛を与え続ける理由は何?
激しい痛みと恐怖。
果たしてナミは何処から来たのか。。
恐ろしくも哀しい心理ホラー開幕。
【第2部 瞳の奥の漁火】
本能のまま美しい女を次々虐待する摩耶。
日本のダークサイドで暗躍するNaturalFaceとは。
【第3部 NaturalFace】
セクション96で繰り広げられる凄惨な地獄絵図。
【第4部 番外:美女のシリアルナンバー事件編】
横浜で、下校中の女子高校生が襲われ、数字らしきものが入った焼き印を、
右足の太股に押される事件が発生。そして、この日を境に次々と日本全国
で同様の事件が起きる。
日増しに増えていく犠牲者。狙われるのは美しい女性ばかり。一体誰が?
何の目的でこんな事を?
やがて世間ではこの焼き印が゛美女のシリアルナンバー゛と呼ばれる様に
なり、美しい女の証として、ブランド扱いされる様になっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる