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神官長様……?
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喫茶店の一番奥の四人掛けの席。そこを丁寧に拭いていた時だった。
脳裏に突然、なにかが閃いた。
そう、それは異世界からの旅人が来る合図。
いつもなら、慌てず騒がずお導きのアイテムをいそいそと作りお迎えの準備をするけれど、今日だけはおろおろするしかない。
だって脳裏に浮かんだのは、見慣れた聖杖だったのだから。
あれっていつも、神官長様が熱心に見つめてるアレじゃない? どうやったら準備できるの。いやいや、あれが見えたってことはもしかして。いやいやまさか、夢見すぎでしょ。
忙しく気持ちが揺れ動き、どうしたらいいか分からなくてただただその辺をうろうろした。
ハッと思い出して、とにかく準備中の札を出す。
えっと、えっと。
あとは何をすればいいんだっけ。
もしかして。
もしかして、本当に神官長様が来る合図だとしたら。
慌てて鏡を見てお化粧を直し、髪を整え、口紅を引き直す。でも、手が震えて紅筆が揺れて仕方ない。口も勝手にはくはくと空気を求めて揺れ動いた。
ああ、息が浅い。
空気がなくなったみたい。
何度も何度も深呼吸する。そして、あたしの頭にはふと疑問が浮かんだ。
もし、今日の訪れが神官長様だとして。どうして、ここに現れるの?
ここは女神さまのお導きが必要な人が、何かに惹かれるようにやってくる場所。……やっぱり懸念していたとおりなにかがあの国に、あの世界に起こっているのかも知れない。
女神様にどんなに祈っても、女神様からお言葉が返ってくることはなかった。不安なまま時を過ごしてきたけれど……やっぱり。
そう思ったら、あたしの浮き立つような気持ちは急になりをひそめ、代わりにドキドキとは違う鼓動が打ち始めた。
あたしに何ができるというの。
皆は無事なんだろうか。ユーリーン姫は? 聖騎士のコールマンさんは? そして神官長様は……? どうか、無事で。女神様、お願い。皆を守って……! 胸の前で指を組み合わせ、あたしは強く強く祈った。
「ここは……」
祈るあたしの耳に、小さな呟きが聞こえてくる。瞬間、あたしの足は走り出していた。
だってあの声……!
カウンターを飛び出していつもの一番奥の四人がけの席へ一目散に走る。いつもの奥の席、眩く光る床の上に立つスラリとした長身が見えた。向こうを向いているけれど、間違いない。
長い白金の艶めかしい髪。ゆるやかな白いローブ。立っているだけで麗しい、あの後ろ姿は。
「神官長様……?」
振り向いた瞬間に溢れる笑顔まではしっかりと見えた。
でも、涙が邪魔をしてせっかくの麗しいお顔がもう見えない。金縛りにあったみたいに動けなくなってしまったあたしに手を差し伸べて、神官長様はゆっくりとこちらへ歩を進める。
「アカリ……!」
脳裏に突然、なにかが閃いた。
そう、それは異世界からの旅人が来る合図。
いつもなら、慌てず騒がずお導きのアイテムをいそいそと作りお迎えの準備をするけれど、今日だけはおろおろするしかない。
だって脳裏に浮かんだのは、見慣れた聖杖だったのだから。
あれっていつも、神官長様が熱心に見つめてるアレじゃない? どうやったら準備できるの。いやいや、あれが見えたってことはもしかして。いやいやまさか、夢見すぎでしょ。
忙しく気持ちが揺れ動き、どうしたらいいか分からなくてただただその辺をうろうろした。
ハッと思い出して、とにかく準備中の札を出す。
えっと、えっと。
あとは何をすればいいんだっけ。
もしかして。
もしかして、本当に神官長様が来る合図だとしたら。
慌てて鏡を見てお化粧を直し、髪を整え、口紅を引き直す。でも、手が震えて紅筆が揺れて仕方ない。口も勝手にはくはくと空気を求めて揺れ動いた。
ああ、息が浅い。
空気がなくなったみたい。
何度も何度も深呼吸する。そして、あたしの頭にはふと疑問が浮かんだ。
もし、今日の訪れが神官長様だとして。どうして、ここに現れるの?
ここは女神さまのお導きが必要な人が、何かに惹かれるようにやってくる場所。……やっぱり懸念していたとおりなにかがあの国に、あの世界に起こっているのかも知れない。
女神様にどんなに祈っても、女神様からお言葉が返ってくることはなかった。不安なまま時を過ごしてきたけれど……やっぱり。
そう思ったら、あたしの浮き立つような気持ちは急になりをひそめ、代わりにドキドキとは違う鼓動が打ち始めた。
あたしに何ができるというの。
皆は無事なんだろうか。ユーリーン姫は? 聖騎士のコールマンさんは? そして神官長様は……? どうか、無事で。女神様、お願い。皆を守って……! 胸の前で指を組み合わせ、あたしは強く強く祈った。
「ここは……」
祈るあたしの耳に、小さな呟きが聞こえてくる。瞬間、あたしの足は走り出していた。
だってあの声……!
カウンターを飛び出していつもの一番奥の四人がけの席へ一目散に走る。いつもの奥の席、眩く光る床の上に立つスラリとした長身が見えた。向こうを向いているけれど、間違いない。
長い白金の艶めかしい髪。ゆるやかな白いローブ。立っているだけで麗しい、あの後ろ姿は。
「神官長様……?」
振り向いた瞬間に溢れる笑顔まではしっかりと見えた。
でも、涙が邪魔をしてせっかくの麗しいお顔がもう見えない。金縛りにあったみたいに動けなくなってしまったあたしに手を差し伸べて、神官長様はゆっくりとこちらへ歩を進める。
「アカリ……!」
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