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なんと……いうことでしょう

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見た目貧弱な私が馬を駆り一人で旅をするものですから、野盗の挑戦は避けられません。

しかし私も伊達に聖女の旅に同行したわけでもありません。魔物と戦うのはコールマンとユーリーン姫が主ではありましたが、当然私も腕に覚えがあります。

魔物に比べれば人である野盗の動きは緩慢ですから、束になってかかってこられても恐れるほどではありません。野盗をなんなく撃退し、軽い食事もしっかりとって星空を眺めながら眠りに落ちようとした時、目の前にふわりと白い鳥が舞い降りました。


「おや、こんなところまで……あなたも大変ですね」


手を出すと体をすり寄せてくれる愛らしい鳥に、ついねぎらいの言葉をかけていました。ユーリーン姫が放ったのであろうその鳥に、乾物で申し訳ないのですが小さな果物を与えます。水と果物を美味しそうについばんでいる姿は、私に安らぎを与えてくれました。


「私も今日はもう寝ますから、今夜はあなたもゆっくり休んでください」


そっと撫でると、私の言葉を理解してくれたのか、嬉しそうにピイ♪ と鳴いて、羽に顔を埋めます。ずっと飛びっぱなしだったのでしょう、疲れた羽を少しでも休めて欲しいものです。

鳥が眠りに落ちる可愛らしい様子を見ながら、私は姫に書をしたためました。

きっと心配しているであろう姫に伝えるべく、元気で旅をしていること、次に向かうアンズポトについて入手している情報などを書き連ねます。

まだ現状を目にしてはいませんが、川が氾濫したのであれば、街の方々の被害は甚大でしょう。国の支援も受けられた方がいいに違いありません。

北の街とは行き来もできないという噂についても触れておきます。すでに王家のもつ情報網にものっているかも知れませんが、知りうる限りを書き込んで、小さく書を折りたたみます。

この書を運ぶこの白い鳥の負担が少しでも軽くなるように。


翌朝私の書を携えて、白い鳥は飛び立っていきました。その小さな姿を見送って、私もまた馬を駆って走りだしました。

一刻も早く街に辿り着いて、復旧にあたりたい。

災害が起こってからもう数日が経っています。水は引いたでしょうが、水に濡れた家財道具の処分や家の掃除など、普通に暮らせるようにするだけでも大きな負担だろうと想像できます。水害のあとには疫病が蔓延することも多い筈です。

むしろ奇跡の力よりも、私の神聖魔法の方が活躍するかも知れません。

野盗を撃退しつつ進み、夜は馬を休め聖杖を眺めアカリの笑顔を思いながら眠りに落ちる。そんな日々を繰り返しているうちに、やがて目指す街が見えてきました。


「なんと……いうことでしょう」


それきり、私は言葉を失いました。
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