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可愛いお客さま

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あら可愛い。
随分と小さなお客さまが来たもんだなあ。

五~六歳くらいかしら、一丁前に二人がけの席に陣取って呼び鈴を鳴らしている。ツンとすまして、お行儀よく座っている様子は麗しの小さなレディ。これはママゴトっぽくとも、こちらも一人のお客様として相対せねばなるまい。

満面の笑顔で丁寧に頭を下げる。


「いらっしゃいませ、ご注文は何になさいますか?」


パッと顔を上げた女の子は目をキラキラと輝かせて「えっと、えっと、ケーキください!」と言ってくれた。

年齢の割にしっかりしてるなあ。

ツインテールがポワボワ跳ねるのもとっても可愛らしい。微笑ましくってついサービスで甘いアップルティーまでつけてしまったのは仕方ないと思う。


思いの他上手にフォークを使ってくれて良かった。子供用の先の丸いフォークを渡してはあるけれど、この時期の子供って何するかわからないとこあるからなぁ。

て言うか、この子の御家族はどうしてるんだろう。もしかして迷子? 探してたりしないだろうか。

そう思ったのもつかの間、店の前を猛ダッシュで走り過ぎようとした美人なおねーさんが、窓ガラス越しにギッとこちらを凝視した。

目ヂカラが凄い。睨まれてるのかと思ったけど、よく見れば彼女が凝視してるのはこの小さなレディで。

一生懸命フォークを動かしている小さなレディを数秒見つめた後、おねーさんは糸が切れたようにへなへなと座り込んだ。

随分と心配して探し回ったんだろう、せっかく美人なおねーさんなのに、汗だくで若干お化粧も崩れている。でも、私にはむしろそれが好ましかった。


カラン、コロン、と可愛い音でお客様をお迎えするベルのついた扉を開けて、私はおねーさんに声をかけた。


「お連れ様ですか? どうぞ」


にこやかに話しかければ、気が抜けたように曖昧に頷き、おねーさんはヨロヨロと店内に入ってきた。


「あー! ママー!」

「ママ、じゃないわよ……もう、心配したんだから」


やっぱりママでしたか。キンキンに冷えたお水を出してあげると、それをクイっと飲み干して胸元をパタパタと仰ぐ。


「あのねえ、はぐれちゃったから、ここで待ってたの」


その答えに、ママさんはテーブルに突っ伏した。


「ママ、さっきこのお店可愛いって言ってたから、ここで待ってればママに会えると思って」


なんと、小さなレディはとってもおしゃまだ。迷子になったのがわかっていて、それでも泣き叫ぶでもなくカフェで優雅にティータイムだなんて。私が五歳の時はギャン泣きしてたと思うけど。
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