10 / 100
後悔という言葉では軽すぎる
しおりを挟む
それでも、私は彼女への態度を変えませんでした。
自分の想いが変化するまでの間、すでに「敬愛の全ては全て女神エリュンヒルダ様に捧げしもの、慈愛の全ては困窮の徒に捧げしもの」と彼女に言い続け、恋愛感情がない事を伝え続けています。
今さらどんな顔で彼女へ愛を告げればいいと言うのでしょう。
そして、私にはどうしても彼女に愛をささやけない理由がありました。
そもそも彼女を召喚したのは、この世界を救うためです。
今一番重要視すべきなのは、世界を救うことであり、私個人の感情などどうでもいい事でした。祈りの力を最大限に発揮するには、善行を積んで蓄えた力を祈りで方向づけして発揮するものです。
アカリに常に言っていた言葉は、自分の感情の変化に気づいてからは自身への戒めの言葉に変わりました。
今は少しでも力を蓄え、その力を魔を祓うことに使うべきです。そこに感情のブレがあってはなりません。いつか全ての魔を祓い、それでもアカリを愛しく思う気持ちが変わらなければ、今度は私からアカリに想いを伝えようと、そう思っていました。
旅を続ける間にも、その思いは縮むどころか日に日に大きくなる一方で。あの日、凱旋披露が終わったら、彼女に告げようと思っていたのです。
私と共に、生きてほしいと。
彼女が目の前から消えるだなんて、あの瞬間まで思ってもみなかった私は、結局彼女に気持ちを伝えることさえできませんでした。
なぜ、もっと早く彼女に気持ちを伝えなかったのか……後悔してもし足りません。そう、後悔という言葉では軽すぎる。
彼女からはあんなに毎日、彼女が消える瞬間まで、気持ちを言葉にしてもらっていたというのに。
元の世界に帰ったのでしょうか。
あの時アカリは、確かに「さようなら」と言っていました。彼女が自分の意思で去ったという事だけは事実です。
自分の意思で去った彼女を追いかけることが正しいのか、正直に申し上げれば私にもわかりません。
それでも、私はもう一度彼女に会いたかった。
教会でのお勤めをしている時も、魔に苦しめられた方々への慰問の旅をしている時も、日々の食事をする時ですら、彼女が思い出されて仕方がない。
次第に夜も眠れない日が増えていきました。
彼女に、会いたい。
時に彼女の夢を見てしまう程に、その思いは高じていく一方でした。
夢の中の彼女は元気そうで、あの懐かしい笑顔を振りまいていました。会いたくて会いたくて、必死で手を伸ばすのに手が届かない。
いつもそのもどかしさの中で目が覚めてしまいます。
会いたい。
……会いたい。
自分の中にそんな歯止めが効かないような感情があった事に、私自身が一番驚きましたが、その思いは最早止めようがないところまで成長していて……。
生まれて初めて、私は自分の欲のために祈りの力を使おうと決意しました。
自分の想いが変化するまでの間、すでに「敬愛の全ては全て女神エリュンヒルダ様に捧げしもの、慈愛の全ては困窮の徒に捧げしもの」と彼女に言い続け、恋愛感情がない事を伝え続けています。
今さらどんな顔で彼女へ愛を告げればいいと言うのでしょう。
そして、私にはどうしても彼女に愛をささやけない理由がありました。
そもそも彼女を召喚したのは、この世界を救うためです。
今一番重要視すべきなのは、世界を救うことであり、私個人の感情などどうでもいい事でした。祈りの力を最大限に発揮するには、善行を積んで蓄えた力を祈りで方向づけして発揮するものです。
アカリに常に言っていた言葉は、自分の感情の変化に気づいてからは自身への戒めの言葉に変わりました。
今は少しでも力を蓄え、その力を魔を祓うことに使うべきです。そこに感情のブレがあってはなりません。いつか全ての魔を祓い、それでもアカリを愛しく思う気持ちが変わらなければ、今度は私からアカリに想いを伝えようと、そう思っていました。
旅を続ける間にも、その思いは縮むどころか日に日に大きくなる一方で。あの日、凱旋披露が終わったら、彼女に告げようと思っていたのです。
私と共に、生きてほしいと。
彼女が目の前から消えるだなんて、あの瞬間まで思ってもみなかった私は、結局彼女に気持ちを伝えることさえできませんでした。
なぜ、もっと早く彼女に気持ちを伝えなかったのか……後悔してもし足りません。そう、後悔という言葉では軽すぎる。
彼女からはあんなに毎日、彼女が消える瞬間まで、気持ちを言葉にしてもらっていたというのに。
元の世界に帰ったのでしょうか。
あの時アカリは、確かに「さようなら」と言っていました。彼女が自分の意思で去ったという事だけは事実です。
自分の意思で去った彼女を追いかけることが正しいのか、正直に申し上げれば私にもわかりません。
それでも、私はもう一度彼女に会いたかった。
教会でのお勤めをしている時も、魔に苦しめられた方々への慰問の旅をしている時も、日々の食事をする時ですら、彼女が思い出されて仕方がない。
次第に夜も眠れない日が増えていきました。
彼女に、会いたい。
時に彼女の夢を見てしまう程に、その思いは高じていく一方でした。
夢の中の彼女は元気そうで、あの懐かしい笑顔を振りまいていました。会いたくて会いたくて、必死で手を伸ばすのに手が届かない。
いつもそのもどかしさの中で目が覚めてしまいます。
会いたい。
……会いたい。
自分の中にそんな歯止めが効かないような感情があった事に、私自身が一番驚きましたが、その思いは最早止めようがないところまで成長していて……。
生まれて初めて、私は自分の欲のために祈りの力を使おうと決意しました。
23
お気に入りに追加
2,747
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている
五色ひわ
恋愛
ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。
初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。
二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。
安らかにお眠りください
くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。
※突然残酷な描写が入ります。
※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。
※小説家になろう様へも投稿しています。
愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
身に覚えがないのに断罪されるつもりはありません
おこめ
恋愛
シャーロット・ノックスは卒業記念パーティーで婚約者のエリオットに婚約破棄を言い渡される。
ゲームの世界に転生した悪役令嬢が婚約破棄後の断罪を回避するお話です。
さらっとハッピーエンド。
ぬるい設定なので生温かい目でお願いします。
好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】
須木 水夏
恋愛
大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。
メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。
(そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。)
※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。
※ヒーローは変わってます。
※主人公は無意識でざまぁする系です。
※誤字脱字すみません。
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる