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後悔という言葉では軽すぎる

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それでも、私は彼女への態度を変えませんでした。

自分の想いが変化するまでの間、すでに「敬愛の全ては全て女神エリュンヒルダ様に捧げしもの、慈愛の全ては困窮の徒に捧げしもの」と彼女に言い続け、恋愛感情がない事を伝え続けています。

今さらどんな顔で彼女へ愛を告げればいいと言うのでしょう。


そして、私にはどうしても彼女に愛をささやけない理由がありました。


そもそも彼女を召喚したのは、この世界を救うためです。

今一番重要視すべきなのは、世界を救うことであり、私個人の感情などどうでもいい事でした。祈りの力を最大限に発揮するには、善行を積んで蓄えた力を祈りで方向づけして発揮するものです。

アカリに常に言っていた言葉は、自分の感情の変化に気づいてからは自身への戒めの言葉に変わりました。

今は少しでも力を蓄え、その力を魔を祓うことに使うべきです。そこに感情のブレがあってはなりません。いつか全ての魔を祓い、それでもアカリを愛しく思う気持ちが変わらなければ、今度は私からアカリに想いを伝えようと、そう思っていました。

旅を続ける間にも、その思いは縮むどころか日に日に大きくなる一方で。あの日、凱旋披露が終わったら、彼女に告げようと思っていたのです。


私と共に、生きてほしいと。


彼女が目の前から消えるだなんて、あの瞬間まで思ってもみなかった私は、結局彼女に気持ちを伝えることさえできませんでした。

なぜ、もっと早く彼女に気持ちを伝えなかったのか……後悔してもし足りません。そう、後悔という言葉では軽すぎる。

彼女からはあんなに毎日、彼女が消える瞬間まで、気持ちを言葉にしてもらっていたというのに。

元の世界に帰ったのでしょうか。

あの時アカリは、確かに「さようなら」と言っていました。彼女が自分の意思で去ったという事だけは事実です。


自分の意思で去った彼女を追いかけることが正しいのか、正直に申し上げれば私にもわかりません。

それでも、私はもう一度彼女に会いたかった。



教会でのお勤めをしている時も、魔に苦しめられた方々への慰問の旅をしている時も、日々の食事をする時ですら、彼女が思い出されて仕方がない。

次第に夜も眠れない日が増えていきました。


彼女に、会いたい。


時に彼女の夢を見てしまう程に、その思いは高じていく一方でした。

夢の中の彼女は元気そうで、あの懐かしい笑顔を振りまいていました。会いたくて会いたくて、必死で手を伸ばすのに手が届かない。

いつもそのもどかしさの中で目が覚めてしまいます。


会いたい。

……会いたい。


自分の中にそんな歯止めが効かないような感情があった事に、私自身が一番驚きましたが、その思いは最早止めようがないところまで成長していて……。


生まれて初めて、私は自分の欲のために祈りの力を使おうと決意しました。
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